ステーブルコイン解禁

さて先月は米でステーブルコインの普及を目指すところの「GENIUS法」が成立した旨を書いていたが、日本でも金融庁が今秋にも法定通貨に価値が連動する円建てステーブルコインの発行を国内で初めて認める旨を本日の日経紙が1面で報じている。名称は「JPYC」となり、1JPYC=1円に価値が保たれるように預金や国債といった流動性の高い資産を価値の裏付けとして保有し、

ステーブルコインで先行しているドル建てモノはテザーが発行するUSDTとサークルインターネットGが発行するUSDCが2強となっているが、将来性を買ってこうした暗号資産関連株はトランプ大統領当選後に大化けしてきており、上記のサークルインターネットG株価の6倍超をはじめ、ロビンフッド・マーケッツの株価は4倍超、コインベースのそれも2倍超とどれもその恩恵が期待され物色対象にされている。

関連株の方はそれとして現在は上記のドル建て中心にその市場規模は2500億ドルに拡大中、大手外銀の一部ではこの市場が2030年までに最大で4兆ドル近くと足元の10倍以上の規模になるとの予測がある。上記のコインベースはECサイト運営者向けに同コイン対応の決済サービスを立ち上げておりカード系の独占市場に風穴を開ける格好になる。

このJPYCも今後3年間で1兆円分の発行を目標とするようだが、斯様にステーブルコインは決済手段として伝統的な金融システムに取って代わる可能性をも秘めている他、送金や資産運用サービスへの活用など今後決済業者以外でも銀行から小売りまで各々で動きが出てくるかどうかこの辺にも注目しておきたいところだ。


法案成立

先週も当欄で少し触れていたが、米ドルに価値を連動させる暗号資産の一つであるステーブルコインの普及を目指すところの「GENIUS法」が先週末にトランプ大統領の署名で成立している。ドルの世界の基軸通貨としての地位を次世代にわたり確保することになると語った通りやはり米ドルの覇権維持の想いは強いと感じたが、国際送金などにおいては既存のネットワーク「SWIFT」を介した銀行間送金などと比較するに決済の高速化やコストも安く済むメリットが光る。

現在ステーブルコイン全体の時価総額は約38兆円、米では既に暗号資産交換業者のコインベースがECサイトの支払いにこのステーブルコイン対応の決済サービスを発表しているが、これが普及することになると手数料が障壁となり逡巡していた加盟店が挙ってこれを導入することも考えられ決済市場を独占してきた大手カード会社も今後は競争に巻き込まれることになるか。

競争といえばもう一つ、これらの動きで預金からの資金移動の増加を懸念する銀行業界も自前のコイン発行を検討する向きも出始めるなどざわつき始めている。一方でBIS(国際決済銀行)はステーブルコインについてさまざまなリスクを挙げ報告書で通貨として機能するには不十分と評価しているが、此処はCBDC(中銀デジタル通貨)が次世代の中心になると明示している。トランプ政権は大統領令でCBDC発行を禁止しているが、今後CBDCも発行が見えてくるにつれこちらの覇権を争う鬩ぎ合いも一層激化してくるか。


覇権維持

今週はビットコインが12万ドルを突破しまたも史上最高値を更新している。この暗号資産といえば時を同じくして米下院議会は、ステーブルコインの信頼性を高める法案や暗号資産の包括的な規制枠組みを明確にする所謂ジーニアス法案など一連の法案の審議をはじめているが、この辺の動きが暗号資産業界にとっては追い風となることでビットコインの大台突破に一役買った格好か。

こうした普及を急ぐ?背景にはブロックチェーンの技術を用いた次世代資金決済網を世界の金融等におけるプラットフォームにし、米ドル通貨覇権を維持する狙いとの見方もある。現状世界で流通している米ドル連動のステーブルコインは約2400億ドルともいわれているが、数年後には約2兆ドルにも達するとの見方も出ている。ブロックチェーンも技術が成熟し規制も整備されつつあるので、金融業界のインフラも再設計されるとの指摘もある。

そういった事で既に暗号資産大手のコインベースなどはトークン化した株式の提供に向けてSEC(米証券取引委員会)に認可を申請している。上記のステーブルコインもそうだが、金融資産のトークン化も年間で5割のペースで増加してゆくとの試算もあるだけにそのポテンシャルへの期待は大きく、今後もこの手の分野へ海千山千が挙って参入してくることが予測される。


介入乱舞

さてGWも終わったが、そんな連休中でも先週の為替を巡る動きはなかなかボラタイルなものであった。先ず昭和の日は対ドルでの円相場が1時1ドル160円台まで急落していたが、あと午後に入って突如として154円台まで急騰、次に月替りの1日NY市場でFOMC後に再度対ドルで円相場が急騰、1時間程度で4円超の円急騰を演じた。

財務省側は介入の有無についてはコメントせずを貫いてはいるが、月末公表の当座預金残高での財政等要因による減少額が事前予想をはるかに超える額で約5兆円規模の円買い介入が実施されたとの観測が強い。いずれにせよこの一連の介入により先週の週間値幅は8円強にのぼるなどここ数年で最も大きな動きで投機筋等との激しい攻防の跡がうかがえた。

22年の大規模介入から今回の介入水準まで次第に防衛ラインが切り下がってきているがさてこの160円水準、某生保系シンクタンクの試算では160円でも実質賃金は下期にプラスになる見込みというが、別の外資系証券の試算では春闘の賃上げ率3.69%を打ち消してしまう水準は24年平均ベースで157円との試算もあり、これ以上の円安は物価上昇で企業努力が帳消しになってしまうとの見方もある。

現状日米の金利差は4.5%前後で依然として開きがあるために円売り素地は十分ともいえ、現在のドル高主導の円安トレンドの転換には米国のインフレ抑制と利下げを待つほかないのは否めないところ。22年の大規模介入では約1年の時間稼ぎが出来たがはたして今回は如何に?いずれにせよ今週はミシガン大学消費者信頼感指数、来週には米PPIやCPIなど物価指標の公表があり、これに合わせまたぞろ円が振れる場面も予測されるだけにしばらくは介入に神経を尖らせる場面が続きそうだ。


円下落どこまで

いやはや円の下落が一向に止まる気配を見せず、本日の東京外国為替市場で円相場は一時、約34年ぶりの円安ドル高水準となる1ドル154円台半ばまで値下がりした。昨晩に発表された先月の米小売売上高が市場予想を上回り、米経済は堅調だという受け止めが広がったことでFRBの早期利下げ観測が後退し改めて日米の金利差が意識されたことなどが背景となっている。

加えて現在の円安には投機筋の存在も大きいとされている。本日の日経紙マーケット面でもCFTC(米商品先物取引委員会)の直近データではヘッジファンドなど投機筋の売買動向を示す「非商業部門」の米ドルに対する円の売り越し額が2007年6月以来およそ17年ぶりの高水準となり、円売り建玉も同時期以来の高水準となっている旨の記事があった。

金利差や経済指標を使って測った円の実力は10円以上高いとも一部で報じられていたが、ここに投機筋の参戦などでそう理論通りに相場は動かないのは世の常。ともあれ政府・日銀の介入を試すかのような円安だが、日銀が早急に金利を引き上げるなどかなうべくもなく米利下げの助け舟が出るまで為替介入或いは牽制ポーズで時間稼ぎをするしか方策が無いようにも見える。取り敢えず目先は明日未明のFRB議長発言で利下げについてどこまで触れるのかこの辺に注目か。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2025

9

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30