堕ちゆく?円

本日の日経紙投資面には「最弱通貨予想、円が4割」と題し、QUICKが金融機関や事業会社の外為市場関係者に行った1月の外国為替市場の月次調査結果によれば主要8通貨(円、米ドル、ユーロ、スイスフラン、豪ドル、英ポンド、人民元、カナダドル)のうち2026年最も弱い通貨の予想として「円」を挙げる回答が4割にのぼった旨の記事があった。

ちなみに次点は36%で利下げの継続や政治の不確実性を背景にした米ドルということだが、関税政策ショック以降の名目実行為替レートでもダラダラと水準を切り下げていたこの米ドル、そんな中においても円は買われることなく米ドルに歩調を合わせて売られる始末であった。下落が顕著だった対ユーロ圏通貨はもとよりアジア通貨に対してもシンガポールドルや元などに対し数十年ぶりの円安示現となっている。

昨年は主要先進国が総じて利下げに向かうなか日本のみ利上げをしたわけだが、とはいうものの年末に0.25%程度の上げで0.75%になったとはいえインフレ率は約3%、実質ベースの政策金利としてはマイナス2%以上と大幅にマイナスな状況下では強含むのは無理があるか。今週の日銀金融政策決定会合では政策金利を据え置く公算が大きいが、今後もこの日銀のノンビリ?と構えた利上げで円安が止まるのか疑問符だ。

日本の金利が上がり金利差縮小で円が買われるというのは教科書通りの理屈だが、主要海外中銀の利下げサイクルが一巡しつつあるなか、今後も更に下がるか若しくは現状維持のままという保証は無くそこへ上記の日銀の牛歩?利上げで構図は変わるとは思えない。異例ずくめの解散・総選挙が間近に迫るが、本日の債券市場でも長期金利の急騰は止まらず99年2月以来、約27年ぶり水準を付けている。最弱の烙印から解放される日はおとずれるのか、今後の推移を注視しておきたい。


高付加価値財の格差

昨日の日経紙投資面には「安全通貨 独走」と題し、スイスフランが株価調整リスクや経済への不透明感がくすぶる中、下落する円を尻目に唯一の安全通貨としてユーロなどの主要通貨に対しても連日で過去最高値を付けている旨の記事があった。スイスフランに関しては今からちょうど2年前に当欄では「堕ちた円?」として取り上げた事があったが、これを書いた時のスイスフランが168円台でそこから現在は更に30円近くも水準を切り上げている。

この時には一昔前にチューリッヒ国際空港で買い物をした時のフラン相場が80円台であった旨も書いていたが、日経紙にも書いてあったように2000年ごろに比べ円に対するフランの価値は3倍強になっている。各国の経済力を図るための指数でよく使われるところのマックのビッグマックはスイスで現在は日本の約2.9倍、スタバのアイスコーヒーも日本の約3.2倍であるが賃金の差がそれ以上で割高感は全くない。

労働生産性の高い企業が集まる中心地ジュネーブあたりの最低賃金は4000円台に乗っており、日本は最低賃金引上げが騒がれてなお全国加重平均で1100円台とそれでもなおスイスには3~4倍の差がある。ちなみに上記のフラン80円台の時の2004年の平均年収は日本が466万円、米が450万円と日本が米を上回っており、スイスは698万円と日本の1.5倍であったが、この20年で米にもスイスにも倍以上の差をつけられてしまった格好だ。

近年の円安がこの格差に貢献?している部分もあるが、スイスの生産性の高さを背景にした恒常的な貿易黒字国の構図はやはり大きな違いか。日経紙でも主要輸出品は医薬品と精密機器と書いてあったが、薬品ではノバルティスにロシュ、時計ではいわずもがなロレックスからオーデマ・ピゲ等々高付加価値のブランドが挙がり、このフラン高でも稼げる強みがある価格転嫁が容易な財での差別化戦略を改めて思い知らされる。


ステーブルコイン解禁

さて先月は米でステーブルコインの普及を目指すところの「GENIUS法」が成立した旨を書いていたが、日本でも金融庁が今秋にも法定通貨に価値が連動する円建てステーブルコインの発行を国内で初めて認める旨を本日の日経紙が1面で報じている。名称は「JPYC」となり、1JPYC=1円に価値が保たれるように預金や国債といった流動性の高い資産を価値の裏付けとして保有し、

ステーブルコインで先行しているドル建てモノはテザーが発行するUSDTとサークルインターネットGが発行するUSDCが2強となっているが、将来性を買ってこうした暗号資産関連株はトランプ大統領当選後に大化けしてきており、上記のサークルインターネットG株価の6倍超をはじめ、ロビンフッド・マーケッツの株価は4倍超、コインベースのそれも2倍超とどれもその恩恵が期待され物色対象にされている。

関連株の方はそれとして現在は上記のドル建て中心にその市場規模は2500億ドルに拡大中、大手外銀の一部ではこの市場が2030年までに最大で4兆ドル近くと足元の10倍以上の規模になるとの予測がある。上記のコインベースはECサイト運営者向けに同コイン対応の決済サービスを立ち上げておりカード系の独占市場に風穴を開ける格好になる。

このJPYCも今後3年間で1兆円分の発行を目標とするようだが、斯様にステーブルコインは決済手段として伝統的な金融システムに取って代わる可能性をも秘めている他、送金や資産運用サービスへの活用など今後決済業者以外でも銀行から小売りまで各々で動きが出てくるかどうかこの辺にも注目しておきたいところだ。


法案成立

先週も当欄で少し触れていたが、米ドルに価値を連動させる暗号資産の一つであるステーブルコインの普及を目指すところの「GENIUS法」が先週末にトランプ大統領の署名で成立している。ドルの世界の基軸通貨としての地位を次世代にわたり確保することになると語った通りやはり米ドルの覇権維持の想いは強いと感じたが、国際送金などにおいては既存のネットワーク「SWIFT」を介した銀行間送金などと比較するに決済の高速化やコストも安く済むメリットが光る。

現在ステーブルコイン全体の時価総額は約38兆円、米では既に暗号資産交換業者のコインベースがECサイトの支払いにこのステーブルコイン対応の決済サービスを発表しているが、これが普及することになると手数料が障壁となり逡巡していた加盟店が挙ってこれを導入することも考えられ決済市場を独占してきた大手カード会社も今後は競争に巻き込まれることになるか。

競争といえばもう一つ、これらの動きで預金からの資金移動の増加を懸念する銀行業界も自前のコイン発行を検討する向きも出始めるなどざわつき始めている。一方でBIS(国際決済銀行)はステーブルコインについてさまざまなリスクを挙げ報告書で通貨として機能するには不十分と評価しているが、此処はCBDC(中銀デジタル通貨)が次世代の中心になると明示している。トランプ政権は大統領令でCBDC発行を禁止しているが、今後CBDCも発行が見えてくるにつれこちらの覇権を争う鬩ぎ合いも一層激化してくるか。


覇権維持

今週はビットコインが12万ドルを突破しまたも史上最高値を更新している。この暗号資産といえば時を同じくして米下院議会は、ステーブルコインの信頼性を高める法案や暗号資産の包括的な規制枠組みを明確にする所謂ジーニアス法案など一連の法案の審議をはじめているが、この辺の動きが暗号資産業界にとっては追い風となることでビットコインの大台突破に一役買った格好か。

こうした普及を急ぐ?背景にはブロックチェーンの技術を用いた次世代資金決済網を世界の金融等におけるプラットフォームにし、米ドル通貨覇権を維持する狙いとの見方もある。現状世界で流通している米ドル連動のステーブルコインは約2400億ドルともいわれているが、数年後には約2兆ドルにも達するとの見方も出ている。ブロックチェーンも技術が成熟し規制も整備されつつあるので、金融業界のインフラも再設計されるとの指摘もある。

そういった事で既に暗号資産大手のコインベースなどはトークン化した株式の提供に向けてSEC(米証券取引委員会)に認可を申請している。上記のステーブルコインもそうだが、金融資産のトークン化も年間で5割のペースで増加してゆくとの試算もあるだけにそのポテンシャルへの期待は大きく、今後もこの手の分野へ海千山千が挙って参入してくることが予測される。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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