2ページ目   外国為替

景気浮揚力の変化

さて、円安止まらずというところで外為市場では一時1ドル142円台と1998年8月以来、約24年ぶりの円安水準を記録した。日米の真逆のオペを背景にここ1ヵ月一寸でも約9円の急落を見せているが、今年の円の下落率は先週段階で約18%とかれこれ25円も円安が進み下落率の大きさは1979年の19%以来、43年ぶりのことで73年の変動相場制移行の後では2番目を記録する。

日本はエネルギーや食料を輸入に頼っており、この140円台の円安が続いた場合の今年度の家計負担は政府の物価高対策のよる軽減効果を含めたとしても前年より8万円近く増加するとの試算も明らかになっているが、余談ながら英国はハンバーガーセットが3000円を超え、来月からは標準世帯の光熱費が現在から実に8割も上がり年57万円になるというから我々はまだまだマシな方かと錯覚しそうになる。

しかし日本はエネルギー自給率が1割と主要国での低さは否めないところで、上記の現状等を見るに先の「サハリン2」の継続が承認されたとしてもロシアの一存で供給が左右される構図には危機感を覚える。ともあれこの24年ぶりの円安現象に生産や調達において国内回帰の動きも出て来たが、今後各企業も円安とどう向き合うかが問われることになるか。


再度のパリティ割れ

今週の外為市場は再度ドル高が勢いを増し22日にはユーロドルが7月中旬以来となるパリティ割れを示現、以降は本日こそ等価水準を回復する動きがあったが弱保ち合いが継続している。予てより再度のパリティ割れの可能性が指摘されていたが、FRB高官によるタカ派的な発言を背景にドルが堅調持続する一方でエネルギー供給不安や欧州景気減速懸念を背景にユーロは軟調地合いを強いられている構図だ。

余談ながら今週ワールドカレンシーショップでドルとユーロを同一単位でそれぞれ円価に替えた際、ドルの手取りがユーロの手取りより多かったのを見て久し振りに今から数十年前を思い出した。モノ自体が全く違うので比較するものでは無いが、彷彿とさせるケースとしてゴールドとプラチナも長年にわたるプラチナ上鞘時代の憶えから逆鞘に転じた際も早晩の修正論が出ていたがもう長らくプラチナの下鞘が定着している。

というワケでこんなパリティ割れが一時的な現象に終わるのか否かだが、ここ強いタカ派のメッセージを先取りしドル買いの動きも勢いを増して来たものの、仮に市場が期待していたほどのタカ派的な発言がなければ一旦の調整が入る可能性がある。何れにしろ目先は週末のジャクソンホール経済シンポジウムが最大の焦点となるだけに、FRB議長はじめ関係者のメッセージに注目としたい。


悪い円安

本日の外国為替市場では米長期金利の上昇を受け円相場が一時、約20年ぶりに1ドル129円台まで急落した。気になる日銀の動向だが長期金利の上昇を抑え込む為に指し値オペを21日から26日まで連続で実施すると発表、既に本日の午前中に指し値オペの実施を通知しており異例の5営業日連続の指し値オペとなる。

周知の通り、米・英は物価の上昇を背景に利上げに動き、同様の理由でお隣韓国も先週には今年2回目の利上げを実施しており、ECBも先週の理事会で量的緩和策を夏までに終わらせ、年内にも利上げを実施する可能性が高まっている。斯様に世界中で利上げに走るなか、景気下支えの大義名分のもと超低金利政策を維持する姿勢を示している日銀は特異に映る。

斯様な金融政策の方向性の違いから日米金利差が拡大するとの思惑で冒頭の通りの円急落となっているワケだが、インフレ下で実質量的緩和を実施している強化している格好だ。ここ9年間にわたって歴史的な金融緩和を継続したにもかかわらず求めているような内需主導型の2%の安定的物価目標はいまだ達成されず、バランスシートも各国比で膨張し負のループに陥っている日銀にはたして各国の出口戦略はどう映っているのだろうか。


スイス・ショック

さて、先週末に起こった寝耳に水の出来事と言えばやはりスイス中央銀行が打ち出した無制限の為替介入政策の終了決定だろうか。突如の決定に当のスイスフランは対ユーロで約3割近くも急騰したが、想定外の決定からの急変動が他へも余波を広げた。

スイスフランの急騰に伴い先ず株価指数のSIMは前日比で約8.7%とここ25年で最も大きな下落となり、個別では腕時計世界最大手のスウォッチグループが前日比16%の急落、他リシュモン等も同様に急落となり、本邦株式市場も対ユーロの円相場が昨年ハロウィーンに日銀が追加金融緩和策を決定する前の水準まで上昇した事で、週末は欧州関連株が軒並み売られ、コモディティでは金がリスク資産代替で4ヶ月ぶりの高値まで買われた。

マーケットはそんな感じだが決定直後に直ぐに話題に上がったのはやはりFX関係、もともとスイスフランのような低金利通貨はキャリーでショートの対象になり易い素地を持っていたところへ、中央銀行のお墨付き?介入政策が為されていた事で個人投資家にとっては上限は限られるという安心感につながっていたからこれで一瞬のうちにパンクしたショート勢が続出となった。

これですぐさま思い出したのが、あの東日本大震災の時にクズ同然のプレミアムが大化けしたオプション事件だろうか。セルボラでほったらかしにしていた向きが一晩で一斉にパンクし、また業者もその顧客勘定損失をカバーし切れず破綻懸念が彼方此方で起こったが、今回も業者の中には破綻したところや金融支援を仰ぐところが出てきている。

それでも業者の中には昨年秋頃にカウンターパーティーよりスイス中銀が介入中断または放棄の可能性があるという事からの必要証拠金引き上げ要請を告知していたところもあった模様だが、改めて国家による為替介入には限界がある事を実感させられた事例だ。昨今は業者も投資家も以前にも増して想定外に備えたリスク管理の必要性を切に感じる。


ダミー

さて週末の日経紙では「外為予想商品トラブル増」と題して、超短期の外国為替相場の上げ下げを予想する金融商品を巡っての消費者トラブルが急増している旨が載っていた。特に今年6月以降に急増したのはバイナリーオプションの類で、金融商品取引業の登録が無い海外事業者のサービスが共通しているという。

しかし「何故騙される?」として海外FX詐欺を取り上げたのがつい先月、この時は4〜6月の相談件数が1〜3月期で約4倍になった旨を挙げたが、この直後から今後はバイナリーが急増したという事になる。あまりにベタな手口とはいえとはいえ、FXの時もそうであったようにこれと全く同じ光景が懲りない面々で繰り広げられているということになる。

FXといい、バイナリーといい規制モノに商機?とばかりに悪い輩が群がる構図だが、海外事業者とはいえヤッツケ仕事のHP等見てみると、国内で展開する如何わし系と同様にこれを隠れ蓑にし実質的には日本人が絡んでいる場合も多い可能性が見受けられる。相談者の8割が20〜30代というが、以前も書いたように鼻が利きそうな若手がいとも簡単に釣られてしまうあたりが非常に残念である。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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