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再編と課題

さて、東京証券取引所による市場区分の再編を前に各社が自らの市場を選択して申請する期限が今月末に迫っているが、日経が実施したアンケートでは現在の一部に上場する約86%がプライム市場を希望という結果になっている模様で、この最上位のプライム市場を目指す向きは各社共にその基準を満たす為に各々いろいろな行動が見てとれる。

例えば現段階東証一部でダントツの配当利回りを誇る明和産業など既存株主に保有株を売却してもらい冒頭の通り2022年3月期の大幅増配を決定、これを受け当然ながらその株価も年初来安値から3倍以上に大化けを果たしその時価総額はプライム上場維持基準の100億円を割り込んでいた当初から同基準をクリヤする水準にまで達した。

他にもギリいけるのでは?という企業が数多プライム市場を選択する意向を示している模様だが、其々に義務付けられているESGへの対応でも情報開示へのノウハウ、マンパワーや予算の確保等々課題は多そうだ。今後強まるであろうこれらに関する情報発信への要請など企業価値に係わって来るだけに各々の舵取りがより重要になってくるか。


踏み絵?

北京オリンピックの開催まで2ヵ月を切るなか、周知の通り米政府は中国での人権問題を理由に北京オリンピックとパラリンピックに外交団を派遣しない「外交的ボイコット」を行う事を発表している。これに対し中国側はもしアメリカが独断専行するなら必ず断固対抗措置を取ると同調する他国への牽制も含め反発必至な様子だ。

平和の祭典とよばれるオリンピックだが今回のように幾度となく国際的な対立に晒されてきており、1980年にはソ連のアフガニスタン侵攻ではそれに抗議した日米含む西側諸国がモスクワ夏季五輪を選手団さえ派遣しない全面的なボイコットに発展、その報復として4年後の1984年のロサンゼルス大会ではソ連や東欧諸国が米国への報復としてロス五輪をボイコットした経緯がある。

これを巡り首相は総合的に勘案し国益の観点から自ら判断してゆきたいと述べているが、板挟みの我が国は実に微妙なところに位置する。この外交的ボイコットで来る28年のロス五輪も同じ事が繰り返されるか否かだが、スポーツは政治的な問題とは切り離して考えるべきとの大義名分があるものの政治的な対立を映す鏡にもなってきたオリンピック、いずれにせよ国際社会が何所まで追随するのかが今後の焦点となるか。


顔ぶれの変化

さて、先週は火曜日にマザーズ市場へボードルアが新規上場し、木曜日にはジャスダック市場にのむら産業が新規上場をはたした。注目の初値はボードルアが公開価格を37.5%上回る初値形成となりその後はストップ安に沈み、のむら産業は公開価格を8.0%下回る初値形成となった後に安値引けとなるなど共に換金売りが優勢の展開となっていた。

今月一発目となったのむら産業だが、この後も今週末にはフレクト、来週以降もネットプロテクションズHD、TrueData、ブロードエンタープライズ等々マザーズ市場中心に大納会ギリギリまでIPOの見込みは前年比7社増の実に33社と目白押しとなっており、単月としては1991年11月以来、約30年ぶりの高水準になる見通しという。

このコロナ禍で社会のデジタル化が加速するなか、その顔ぶれとしては上記のフレクトやハイブリッドテクノロジーズ、エフ・コード、アジアクエストなどのDXの支援・戦略設計・コンサル、またJDSCやエクサウィーズ、Institution for a Global Societyなどの高度なAI技術を活用する新興勢が特に目立つところとなっている。

斯様に構造変化を捉えた企業のIPOラッシュとなる今月だが、これで今年の新規上場は前年比3割増の120社超の見通しで前回のIPOブームに沸いた06年の188社以来の高水準になる見通し。しかし冒頭の91年の顔ぶれといえば自動車部品や電子機器など製造業が中心であったが、昨今は全体の4割が情報・通信となっておりこの30年での顔ぶれの変化が印象深いところだ。


甘くない今年のケーキ

早いもので師走入りとなったが、昨年のこの時期は風物詩でもある街のイルミネーションもメジャーなところが中止になったり飲食店の時短に合せ早めに終了と寂しいモノとなったが、今年は新型コロナウイルス対策の時短要請解除もあってか表参道で2年ぶりにイルミネーションが復活し、丸の内から日比谷ミッドタウンにかけてもそれはもう煌びやかなイルミネーションが復活している。

斯様な光景を見るに月末のクリスマスに向けての各所も諸々の商戦期待が高まるというものだが、今年は原油価格の約7年ぶりの高騰に伴う燃料高が長期化しガソリンはもとよりクリスマスに大活躍する冬の味覚イチゴにまで影響が及んでいる。身近なところでイチゴ農家を営んでいる者が居るが、この時期ハウスに用いる燃料費が爆上げなうえにハウス周りの資材費もこれまた原油高で頭が痛いところとか。

イチゴだけでも斯様な状況のところに、周知の通り小麦粉や乳製品も値上げされそれ以上にグラニュー糖など糖類も値上がり著しくこれらから成る最もポピュラーなクリスマスケーキも今年は甘い香りも吹き飛ぶ思いという。もう一つ、クリスマスといえばチキンだがこちらもコロナの影響による人手不足などで輸入物が絶望的となりクリスマスに向け業者間で争奪戦になっているという。

斯様に各種製品の相次ぐ値上げで民間消費もこの書入れ時に冷え込んでしまう恐れがあるが、先月発表になった企業物価指数も上記の通りの原油高や世界的な供給制約を背景にして約40年ぶりの伸び率となっており、消費財への波及が焦点となるなか企業収益への影響もまた懸念されるこの師走である。


金の卵?

さて、昨年のオンライン中心から店舗販売が本格的に復活した今年の米ブラックフライデーだったが、今年の売れ筋商品はマイクロソフトのXboxなど主力商品と並んでメタのVRヘッドセット「オキュラクエスト2」が新たな注目商品となった。今後様々な分野で成長が期待されるメタバースだが、これを体験するには必須アイテムであるこれらが今後も注目されそうという。

慣れ親しんだフェイスブックという社名をメタと言えるようになるまでまだ少し時間がかかりそうだが、デジタル世界と現実世界の境界線を打ち壊すこの分野に注力する同社の意気込みは想像に難くなく、マーケットの方もこれを受けてまだ手探りで焦点が絞られないままに拡大解釈から幅広い銘柄に物色の矛先が向いている感がある。

それもそのはず、教育、医療分野、遠隔会議からエンターテインメントやゲーム、また最近取り上げたNFTアート等々今後何れが金の卵となるのか現段階では誰も確かめる術がないところ。直近でも凸版印刷がメタバース上でサービスを運用する企業向けに1枚の写真からリアルな3Dアバター、メタクローンTMアバターを自動生成出来るサービスを発表しているが、何れにせよ世界のIT大手が本腰を入れるこの日進月歩の市場で今後日本の企業がどうやって存在感を示してゆけるのかが課題になりそうだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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