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急展開二様

さて、本日に予定されていた新生銀行の買収防衛策の発動の賛否を諮る臨時株主総会だが、直前に突如としてこれを中止するという突然の幕切れとなった。およそ2割を保有する政府が発動に賛成しない方針と伝わっていたのが背景にある模様だが、銀行初の敵対的TOBは幕切れという事になりSBI傘下入りの公算が大きくなった。

TOBといえばもう一つの注目案件、H2O傘下の食品スーパー2社との経営統合を巡る関西スーパーマーケットの方は、一度はTOB提案を取り下げたもののこれに疑義ありとし食品スーパーのオーケーが差し止め請求していた件で神戸地裁は今週はじめにこの訴えを認める仮処分決定をしている。前回取り上げた際に司法に委ねられる事になると先行きは混沌と書いたが、一先ず司法が待ったをかける事態となった。

司法が介入し仮処分決定となったケースは過去にも三菱UFJ等のメガバンクやライブドアとフジテレビの戦いでも記憶に新しいところだが、ともあれこれを受けて昨日の株価の方は差し止め請求と伝わった翌日に続く2度目のストップ高を演じ、今後はこの状況下でホワイトナイト探しに走るのかはたまたH2O側もTOBに切り替えるのかどうかというところか。

しかし新生銀行も複数の議決権行使助言会社からお墨付き?をもらい、一点の曇りも無く全く問題無いと主張してきた関西スーパーマーケット共々絶対の自信を表明していただけに当事者としてはとんだ誤算の展開だろうが、何れにしろ公的資金が絡む前者も今後いかに企業価値を上げられるか、また後者も如何に株主の承認を得られるかが焦点となって来るか。


FridayからMondayへ

さて、今週金曜日に本番を迎える大型商戦「ブラックフライデー」を前にネット系大手など先週からいち早くこれをスタートさせていたが、イトーヨーカドーやイオン等の大手も新聞の折り込みチラシなどでこのブラックフライデーを全面にPRしている。セール内容として特にこれといった目新しさは無いものの、米国のシーズンセールに倣って名前だけでも乗ろうかというこの商戦も今年は出足から好調な模様だ。

上記のイトーヨーカドーなど去年の2倍となるセール商品をラインナップし、発祥といわれる玩具のトイザらスのアクセス待ちは一時45000人にも達しスタートから1時間の売れ行きは去年の数倍以上にも達するなど購買意欲の高まりを感じるものとなっている。背景にはコロナ禍の緊急事態宣言でこれまで叶わなかった消費熱が、ブラックフライデー等の大々的セールを機に購買意欲が刺激されている事など所謂リベンジ消費に因るところが大きいか。

このブラックフライデーの本場、全米小売業協会の年末商戦の予想では過去5年平均の約2倍以上の伸びが見込まれている模様だが、このブラックフライデーが終れば今度は12月のサイバーマンデーが控える。これらホリデー商戦の行方を占う試金石となるだけに先ずはその動向に注目というところか。


二つのレガシー

さて、先週末の日経紙地方経済面では「五輪閉幕後も広がる輪」と題し、東京五輪・パラリンピックで活躍したボランティアが大会後も活躍の場を広げ、ホストタウンだった自治体も独自の登録制度を続けるなど五輪で生まれたボランティアの輪をレガシー(遺産)にしようとしている旨の記事があった。

ところで東京五輪・パラリンピックのボランティアに絡んでは、一方で道案内を担うはずだった都市ボランティアのユニホーム約2万8千人分が余っていた事も同じ日の日経紙が報じている。大会の延期やコロナ禍での事態が相次いだ事が背景になっているが、税金で購入されたその調達額は全体で17億円超となっており各所でこの活用法に苦慮している模様だ。

さて宴の後のナントカではないが更に大きな問題としては、世界にお披露目を果たした総額約1600億円もの公金を投じて新設された国立競技場もこれから年間24億円もの維持費が現実問題として重くのしかかる。これ以外にも各選手が大活躍した東京アクアティクスや有明アリーナなど、東京都が約1400億円もの巨費を投じて新設した計6か所の恒久施設も辛うじて黒字が見込める有明アリーナを除いては赤字運営の見通しという。

一般に五輪の開催国負担は重大災害に匹敵するといわれているが、今回の東京五輪もコンパクトを謳った割には誘致当初の見積もりから実に3倍近い増額という結果になった。華々しい選手の活躍を改めて思い出す頃、冒頭の通り五輪で生まれたボランティアの輪をレガシーにしようという動きの裏で斯様な負のレガシーともいえる問題も現実化してくる。


商戦に波紋

毎年この時期になると彼方此方の旅館から届くDMにはカニを謳ったプランが増えて来るが、今年のそれは昨年の同等モノから比較するに総じて値上げが目立つ。それもそのはずここから正月に向けてカニは最需要期を迎えるワケだが、世界的に資源量が不安定になっているところへ今年はコロナ禍のステイホームから世界的な需要増加で輸入価格の高騰が続いている模様だ。

上記の通り日本は北米やロシアからズワイガニやタラバガニを輸入しているが、主力のロシア産ズワイなど某卸業者では昨年11月から今年の価格は1.7倍に高騰しているといい、また日本海のズワイガニも漁獲枠の減少と共に値上がり傾向にあり国内でも石川県のカニは約10年で漁獲量が半減しその単価は2倍に跳ね上がっているのが現状という。

ところでカニと並んで年末年始に需要の高まるウニやイクラだが、今年は北海道で水温上昇やかつてない赤潮発生の影響でウニや鮭が大量死しその仕入れ値は約2倍にも跳ね上がっている。カニ、ウニ、イクラと高い原価率で提供している大手回転寿司などさすがに一部5割の大幅な値上げに踏み切っているが、暑さの残る時期から既にネット等で予約を開始している百貨店のおせちやお歳暮など価格転嫁は不可能でドル箱の物産展なども含め波紋の広がりは想像に難くない。


地銀の選択その2

昨日迄で上場地方銀行の2021年4~9月期の連結決算が出揃っているが、日経紙では集計が可能な76行・グループのうち65行の純利益がコロナ禍で急増したゼロゼロ融資の利息収入や歴史的低水準の倒産件数等も背景に前年同期比で増加、合計の純利益は39%増の5079億円となり2期ぶりに増益基調に戻ったと報じられている。

ところで地銀といえば先月に当欄では「地銀の選択」と題し、東証再編における地銀のプライム市場の選択の是非について触れた事があったが、本日の同紙金融経済面では「東商再編 地銀、割れる判断」と題しこの東証の新設市場移行を巡って地銀のなかでも判断が割れている旨の記事があった。

大半は最上位のプライムを選択している模様だが、身の丈に合ったマーケットという事で早々にスタンダートを選択する向きあり、12月末の選択申請期限を前に様子見を決め込んでいる向きもある。前回は末尾で地域の中核企業としての看板の意義がこの選択を巡って改めて問われるかと書いたが、ハードルのクリヤを視野に再編促進を指摘する向きもあるなか各行の動向には引き続き注目しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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