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Valentin’s2025

さて明日は恒例のバレンタインデー、昨年の今頃は日経紙で「足りぬカカオ豆争奪戦」などと題し、原材料の高騰でバレンタインチョコが一昨年比較で平均4.5%の値上げとなった旨などを書いていたが、今年もこの“カカオショック”の状況は変わらずこの2年でカカオのNY先物価格は約4倍に急騰しバレンタインチョコの平均価格は更に5.8%上昇している。

とはいえ銀座松屋調べでは本命、義理、そして自分へのご褒美共にその予算は昨年より大幅な伸びを示し、特に自分へのご褒美は昨年の約2.4倍となり価格も1万円の大台を指呼の間に捉えている。そんなわけで今や一大イベントに成長した「サロン・デュ・ショコラ」や、今がたけなわの「アムール・デュ・ショコラ」などで並ぶ人気のブランドモノは数粒で5桁の値札が付く商品でも飛ぶように売れ、今年も過去最高の売り上げを更新してきているという。

確かに最近はその味もさることながらパッケージでも魅せる商品が多くなってきた。今年の商品で個人的に目を惹いたのが「ジャン=ポール・エヴァン」で、その箱や袋は私の好きな「アンリ・ルソー」が描いた絵画をモチーフにしこれだけでも欲しくなる魅力的な物であった。またこうした場では近年エシカルも意識され、前回は見た目が原因で廃棄寸前のバナナを使った商品を著名シェフとコラボして販売していたが、今年も各名店が干し芋を作る過程で出る端材を活用した新商品を展開していた。

上記のように高額商品にどんどん注ぎ込む向き以外にも幅広く消費者を取り込むべくカカオの含有量が少ない焼き菓子やイートインの強化も百貨店で見られたが、高島屋など車両を貸し切りアムール・デュ・ショコラの催事に合わせた企画として「ショコラトレイン」を展開するなどしており、今後もカカオ豆の高騰と対峙しながらも“トキ消費”の特別感などどう演出してゆくか各社一層の工夫が求められようか。


取引所騒動彼是

昨日の日経紙グローバル市場面では「LME、信頼回復半ば」と題して、LME(ロンドン金属取引所)がロシアによるウクライナ侵攻により供給懸念からニッケル価格が暴騰したのを背景にしてニッケル先物の取引を一時停止して話題になった、所謂「ニッケル騒動」から3年が経過し売買が復調傾向となっている旨の記事があった。

当時の相場は記憶に新しいが、週明けから前週末比で2倍に急騰した相場は翌日も更に2倍以上に暴騰し遂に1トンあたり10万ドルの大台を突破するに至った。結局この時の10万ドル超の最高値での約定を無効扱いにまでしたことが後々まで関係者の物議を醸し出したわけだが、当時は彼方此方でマージンコールの嵐のなか某中国大手メーカーの看過できない額のショートポジションが市場全体に多大な影響を及ぼすとの懸念から発動された措置であったと推測されている。

東証でもこのニッケル暴騰劇を受けて“別子”こと住友金属鉱山が急騰したが、この22年の3月と4月で月足は見事に教科書的な「毛抜き天井」を6600円台で形成しいまだこれを抜けていない。またETFでも「WisdomTreeニッケル上場投信」はこれと同時期にたった2営業日でその価格がほぼ2倍に暴騰しその時に付けた6152円の上場来高値が大天井となっている。

そういえばもう四半世紀も前になるが、当時のTOCOMでも一部訴訟問題にまでなった「パラジウム先物強制解け合い事件」があったものだが、これもしばらくトラウマとなり以降取引は低調を強いられ、現在では極端な流動性低下を背景に各社は新規建玉の停止もしくは制限を設け殆ど休止状態に陥っている。今後もマーケット間の競争は激しくなると思われるが、結局は競合の有無や流動性確保が帰趨を決することになるか。


消えたコメの行方はいずこ

本日の日経紙には「餃子の王将」の価格改定の全面広告が出ていたが、値上げの理由として一行目に書かれていたのは「コメの価格高騰」であった。週明けの当欄でも「天丼てんや」や「崎陽軒」の今月からの値上げを取り上げたが、これらの背景も総じてコメ価格の高止まりによるところが大きい。一向に鎮静化のみられないこうした状況を鑑み、先週には農水省がコメの流通が滞っていると判断された場合、条件付きで政府備蓄米を販売出来るよう運用を見直すことを決めている。

この“令和の米騒動”、昨年の8月に当欄では新米が出回り暑さの落ち着きに歩調を合せ価格も落ち着きを見せるのか否か注視しておきたいと書いていたが、暑さが落ち着く頃どころか結局年が明けても末端の価格は高止まりしたままだ。コメが店頭からすっかり消えたあたりから備蓄米放出の提案が彼方此方から出たものだったが、ここまで慎重姿勢を貫いていた政府も上記のように漸く重い腰を上げたかっこうか。

そんな背中を押された背景には日経紙等でも“消えた”、“行方不明”などと報じられている通り、市場に出回らずコメが消えている?ことに農水側が懸念を示したのもある。公表されているところでコメの生産量は前年比で約18万トンほど増えている筈だが、囁かれているところでは食糧管理制度廃止で自由に販売出来るようになっている農家に異業種の参入業者などが挙って群がり、JAなど集荷業者より高値で買い漁り貯め込んでいるのも一因といわれる。

まるで転売ヤーの如きなんとも目敏い連中だが、この備蓄米放出の実行がいよいよ現実味を帯びてくるとなるとこうした連中が“投げ”に動くことも想定される。この辺はコロナが始まった頃の魑魅魍魎な連中のマスク買い占めが災いし一転暴落から各所で投げ売りが多発した光景が記憶に新しいが、政府としては相場に与える影響を考慮し市場が混乱しないタイミングと放出量をどの程度にするのかこの辺も思案所となるか。


高級酒バブル一服

昨日の日経夕刊の値札の経済学では「国産高級ウイスキー、2割下落」と題し、中国の景気低迷を背景に長らく高騰が続いていた国産ウイスキーの流通価格が昨年の半ばから下落が始まり最盛期から2割近く下がるなど落ち着いてきた旨の記事があった。国産高級ウイスキーはベースに世界的な評価の高まりから原酒不足も加わり、メーカー側の大幅な価格改定も相俟って投機対象に乗り易かった経緯もあった。

ところで高級酒といえば同じく中国の景気低迷を背景に、当の中国を代表する高級白酒を手掛ける「貴州茅台酒」の時価総額も先月末で1兆8000億元と1割強にあたる約2700億元が減少し、同じく白酒を手掛ける老舗の「瀘州老窖」の時価総額も約600億元減少しているという。かつて貴州茅台酒は国内で時価総額トップを誇るトヨタ自動車をも凌ぐ時価総額を誇りその高いROEで海外の機関投資家からも人気だったものだがすっかり色褪せている。

上記の高級酒以外でも同じ投機のテーブルに乗せられていたロレックスも一部人気モデルが大幅な値崩れを起こしている模様だが、考えてみれば本来は身に着けたり飲んでそれらを愛で楽しむものが、違う目的で値を付け投機対象になるのを異常な光景と見て来た向きも多かっただろう。顧客需要に支障をきたす場面も少なくなかった事でメーカー側も希望小売価格から大きく乖離した価格で流通する実態に困惑してきたものだが、図らずも中国の不動産不況がもたらした景気低迷がこれの是正の一助となることになる。


タリフマン砲

本日の日経平均は一転して急反発、トランプ米大統領がカナダとメキシコからの輸入品に対する関税強化策適用を1か月延期すると発表した事を好感してのものだったが、昨日はこの政策発動で世界経済の先行きに対する懸念からザラバで下げ幅が1100円を超える場面があり引けも1052円安と急反落の週明けとなった。日経平均に限らずアジア圏では春節で中国が休場となるなか韓国KOSPIや台湾加権指数なども同様に下落の憂き目に遭っていた。

為替市場も前週まで比較的底堅く推移していたカナダドルやメキシコペソが対米ドルで急落、今後は欧州も対象となり得るとしていたことでユーロまで下落が波及した。東証の個別では関税の影響が大きいとされる特に自動車セクターが直撃され、メキシコに生産工場のあるホンダやマツダが揃って7%を超える急落を演じ、もう一つのトヨタ自動車も5%安となり部品関連でもデンソーが8%を超える急落となっていた。

この政策で関連する国全体のGDPの目減りは年90兆円規模にのぼるといい、米の全輸入額トップのメキシコの実質GDPは関税実施の場合、2032年までに従来の想定から2%押し下げ要因になるとの試算がある一方で、JETROのアジア経済研究所では日本は対象国から米国への輸出が落ち込むなか、これらの国に代って日本から米への自動車関連の輸出が伸び2027年にはGDPが0.2%押し上げられると試算している。いずれにせよ楽観に傾きかけていた局面でもいつ冷や水を浴びせられるかわからなくなってきた事で暫くは身構える動きとなろうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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