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「蜜」な年末IPO

さて、先に米IPO市場の調達総額が今年は過去最高記録を更新するなど活況を呈している旨を書いたが、日本でも先週から12月のIPOラッシュがスタートしている。先週木曜には5社が同時上場とマザーズなどはまさに「蜜」状態を呈しているが、既に知名度の高い新興家電の「バルミューダ」などは上場日から本日で4日連日のストップ高の離れ業で上場日の寄りで買ってもたった4営業日で実に株価2倍と大化けしている。

他にも上記のラッシュの17日にマザーズに新規上場した「ビートレンド」や「プレイド」、「かっこ」はいずれも買い気配のまま初日を終え、翌18日に同じくマザーズに新規上場した「ココペリ」も買い気配のまま初日を終えその後いずれも公開価格の約2倍から4倍で初値を形成、また本日マザーズに上場した「いつも」も公開価格の2.3倍にあたる3545円まで気配値を切り上げ買い気配のまま取引を終えるなど猛ダッシュのスタートを切っている。

今年は国内で新規上場する企業は前年から7社増え93社と2007年の121社以来、13年ぶりの高水準となるが特にここからは営業日を考慮するに1日平均で2社以上のハイペース公開が続く。中には公開後に急反落と息切れしているモノも散見されるが、先に上場延期となったキオクシアの上場延期も需給面で一役買っている素地もありこのラッシュが新興ポストにとって追い風となるか否か月末まで注目したい。


冬商戦2020

さて、先に日本百貨店協会がまとめた10月の全国百貨店売上高は既存店ベースで前年同期比1.7%減少となり、これでかれこれ13ヵ月連続マイナスとなっている。そんな百貨店各社が売上げの回復に向けて力を入れているのがクリスマスケーキより早くスタートしたおせち商戦だが、今年はネット注文が一部大手では前年比で約150%、大手通販サイトでは9月段階で昨シーズン比約3倍に伸びているという。

今年の場合、コロナ禍で帰省出来ない人がオンライン上で同じ物を食べる想定の2セットの1人用のおせちを実家用と自宅用とで複数買いするケースや、巣ごもり消費が定着するなか取り分けの要らない一人一段で完結する個食需要を見込んだ商品も目立つが、高額な商品に財布を緩める動きもあってか10万円以上のおせち予約も好調で昨年完売しなかった高価格帯の完売も散見されるという。

またおせち料理と並ぶこの時期の風物詩の福袋も今年の場合は巣ごもりを主眼に置いた物が多く、元日からの販売を待たず三越伊勢丹は早くも10月末から先行販売をスタートさせ、松屋は年内と年明けの2回に分散、西武も年内から販売し約6割をネットで販売するなどして例年並みの売り上げを確保しようとする動きもあるが、この福袋商戦もまた百貨店にとっての試金石だけに各社の戦略が試されるところ。


使途明確化

さて、この時期になるとふるさと納税も枠を使い切ろうと年末に向けて各自治体の誘致合戦も喧しく駆け込みの動きも強まって来るというものだが、仲介サイト大手のトラストバンクによれば今年のガバメントクラウドファンディングの活用数ランキングで事業数首位は東京の27件であった。

今年は何といっても新型コロナウイルスの対策費をふるさと納税の仕組みを使って調達する動きが広がり、同ランキングで3位にランクされた北海道など医療従事者らへの支援などで実施したGCFが総額として最も多かったが、斯様に全体の約4割程度は新型コロナウイルス対策で寄付を集めていた動きが明らかになっている。

GCFに関しては当欄では昨年のちょうど今頃もあの沖縄の首里城再建目的で募ったふるさと納税を挙げて触れていたが、この時にマザーズへ上場したクラウドファンディング事業のマクアケはその初値2,710円から先月の上場来高値13,770円まで1年足らずで株価は5倍と大化けするなどその将来性を買う動きが続いているがプロジェクト数など実態が伴っているだけに今後も各所の活動が注目される。


物言う株主と言わぬ株主

本日の日経紙金融経済面には「生保「物言う株主」に一歩」と題し、今年の4〜6月の株主総会で第一生命保険の会社議案に対する反対票が前年同期比4ポイント増の17%に達するなど、これまで企業に忖度し会社側の議案に反対する事の少ない「物言わぬ株主」といわれた大手生保の企業との対話が変りはじめた旨が出ていた。

上記の第一生命保険以外でも住友生命保険や明治安田生命等々これまで反対票の公表など行ってきているが、斯様に大手生保各社は今やどこも自社のHPに「スチュワードシップ活動の取組方針」としてその対応ならびに報告書を掲げ、その対話数など大きく伸びている生保も出てきた。

ところでこうなるとETFの吸い上げで同じく多くの上場企業の大株主に名を連ねる日銀の存在にも自ずとスポットが当てられるというものだが、その議決権を持たない上場企業の隠れ安定大株主的存在?でガバナンス後退論まで一部指摘されているもののスチュワードシップコードの再改定絡め今後も対話を通じた企業側の変化に注目したいところ。


思惑の乱高下

昨日の日経紙総合面には先週末に上場したユニコーンの民泊仲介エアビーアンドビーの時価総額が10兆円に達し話題な旨の記事があったが、米IPO市場の活況は今がまさに旬?でこれ以外にもこの前日の9日に上場した米料理宅配大手ドアダッシュも初日は公開価格を9割近く上回る水準で引け好スタートを切っている。

ところでこのドアダッシュに傘下ファンドが出資している事でその含み益思惑から翌日のソフトバンクG株は急騰し年初来高値を更新、この日の日経平均の上げ幅の実に4分の1は同社が寄与するという格好になった。もう一つ、この急騰の背景にはドアダッシュ以上に材料視されているものに依然として燻るMBOの思惑もある。

創業者の持ち分が他株主の締め出し可能になるまで少しずつ発行済み株式を買い戻すという所謂スローモーションMBOなるもので、自身の買い増しでなく他株主が買戻しに応じる事によって保有比率が上昇、ゆくゆくは他株主から未保有株を買い取る権利が発生しプレミアムを支払わずに済むとブルームバーグは具体的なスキームを報じている。

直近でも先週末にロボット開発の米子会社を600億円で売却合意との発表が為されるなど粛々と資産売却を進める同社と沈黙を続ける創業者に様々な思惑が募るが、何れにせよ10日の年初来高値更新で3月の安値からは実に3.4倍にも化けた同社株、上記の通り日経平均への寄与度が高いガリバー的存在になっているだけに今後も同社の動向からは目が離せない。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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