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需要と倫理

さて、現在スイスのジュネーブで開催されている絶滅の恐れがある野生生物の国際取引を規制するワシントン条約締結国会議の委員会は、その行方が注目されていた日本など象牙の国内市場を維持する国に早期の閉鎖を求める決議案の採択を見送る事を昨日決定したと報じられている。

象牙といえば春先に当欄で取り上げた際に国内での象牙取引厳格化の旨を書いたが、その一つである登録制度を盾に国内市場の維持を訴えたのが一先ず奏功した感じか。この登録制度を前に昨年から登録量が急増している旨が報じられているが、これらから明らかに駆け込みの用が窺える。

しかしこうした駆け込み登録の中にも違法取引されたモノを含んでいる可能性もあり、日本から違法に輸出された象牙が中国で押収されるケースが既に昨年1年間の件数を上回っており、禁止が先行している国への新たな供給源に化けている可能性も指摘されているだけに今回の決定に一部で批判も出そうだ。

ここ近年は象牙に限らず鰻や鮪から鯨まで世界中から厳しい視線が向けられているが、日本のマーケットはマニアックな需要からペット用に冒頭のような絶滅危惧種等の流入が度々事件にもなる。倫理より欲望が遙かに勝る一部の富裕層マニア等が存在する限り闇マーケットは存在し続けることは想像に難くないだけに今後も厳しい指摘は続きそうだ。


脱プラ機運

昨日の朝方のTVニュースでは今年春にタイの海辺で保護され人気となっていたジュゴンの赤ちゃんが残念ながら亡くなってしまった件が報じられていたが、その体内から大量のプラスチックが見つかった事でこれが原因となった可能性が高いとの事が波紋を広げている。

上記のような動物たちがプラスチックを飲み込んで傷ついてしまっている事が問題視されている件についてはこのTV放映があった日の日経夕刊ニュースぷらすでも「なぜ今、脱プラ運動?」と題し触れられており、遅れていた日本の規制も漸く30年までに使い捨てプラスチックの排出を累積で25%削減する事が決められた旨が載っていた。

脱プラスチックについては当欄でも数度触れているが、こうした機運を背景に日経産業紙纏めの今年上半期のスタートアップ企業の調達額ランキングにはプラスチック代替の新素材を開発する企業もベスト10にランクインしている。斯様に官から民も波が発生し消費者側もまた問題意識を持つ切っ掛けとなってくるか。


キャッサバ熱再燃

ちょうど一週間前から原宿では期間限定で「東京タピオカランド」がオープンしているが、今朝のTVでは複数の局であの富士そばが「タピオカ漬け丼」なるオリジナルメニューを売り出した事を取り上げており、もともとTwitterで注目を集めていただけあって限定メニューの同品は仕込みが追い付かずに売り切れとなっている旨が放映されていた。

ところで原宿といえば近所では同じく9月までの期間限定でリプトンの「Fruits in Tea」期間限定店も表参道にオープンしているが、今年はメインとなる様々なフルーツと共にカラータピオカがスペシャルアクセントとして底に沈んでいるなどまさに今がタピオカブームのピークの様相という感もある。

そんなワケで今年上半期の全国タピオカ輸入量は前年同期比で4.3倍、輸入額は約5.7倍といずれも過去最高となったという。しかし私などが覚えているタピオカブームといえばまだバブルが燻る90年代のティラミスの後くらいだったと記憶しているが、この手は時として繰り返しブームが再来するモノが本当に多い。利益率も比較的高くビジネス的にも障壁は低いものの何れまた訪れる終焉期はバブルの最中には誰にもわからぬものである。


次世代議決権行使

さて、先週末の日経紙総合面では「株主総会、ネットで出席」と題し、業の株主が議論の視聴だけでなく質問や議決権の行使も法律的に問題なく出来るようにするなど、インターネット経由で株主総会に出席出来るよう株主の利便性を高め形骸化しがちな株主総会の活性化を狙うべく経産省等が企業向け指針を作る旨が出ていた。

総会シーズンともなると彼方此方の企業から丁寧な会場案内図が記された招集通知が送付されてくるが、一寸遠隔地ともなるとなかなか躊躇われ更に昨今のお土産自粛機運から招集通知には赤文字でお土産のご用意はございません等ときっぱり謳っている通知もあり、これらが更に腰を重くしている部分もあるか。

これまで株主総会に出席できない場合は郵送で議決権行使というパターンであったが、もともと個人株主の行使比率は3割程度が相場、つまり個人株主の3分の2が議決権を行使していない状況であった。そんなワケで議決権を行使してもらいたい企業のニーズを背景に昨年から議決権行使をスマホで行えるサービス等が開始されているが、これらに枝葉を持たせることで行使率のアップなど総会の活性化に繋がるかどうか今後の進化にも注目したい。


コード9665

さて、一部では漸く収束の兆しもチラホラ見えてきた吉本興業のゴタゴタ劇だが、先週末の日経紙・真相深層では「芸能人は例外 変わるか」と題し、お笑い芸人の闇営業問題を機に始まった騒動が事務所と芸人との契約の在り方に飛び火しその見直しから経営の変革まで迫られはじめた旨が書かれていた。

ところで吉本興業といえば10年前まで曲がりなりにも東証一部に上場していた企業。現会長が社長就任後に元ソニー会長率いるクオンタムリープのTOBに賛同しMBO実施で非公開化に踏み切ったワケだが、各メディアなどを主要株主にしこれが渦中の芸人が強行した記者会見でテレビ局が株主云々との発言の背景になっている。

仮に上場していたらけっこう株価にとってはダメージを与えた事件?もMBO後にあったが今回の件もまたしかりでガバナンスが機能していたとは言い難い。とはいえMBOで反社勢力には一定の抑止力効果はあったものの、いろいろな意味で一強の権力集中を招く副作用も応分にあったか。働き方改革など世が変革しつつある時に旧態依然を踏襲する組織は自己変革出来るか否か、まだまだ今後が注目される。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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