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根強い短期嗜好

さて昨日は貴金属系ETFなどコモディティモノが中長期目線で人気がある旨を書いたが、株式モノとでは一寸事情を異にすると思ったのが一昨日の日経紙市場点描にあった日本株運用のETF大手ウィダムツリー・ジャパンを提供しているナスダック上場の大手ウィダムツリーが、3年前に都内に構えた拠点を来月末までに手じまうというスピード撤退の記事か。

理由としては長期保有を促したい同社の戦略に対し、国内ではレバレッジ型など長期投資には不向きとされるETFに人気が集まるなど同社の戦略と相いれない事が背景にあったようだ。この辺に関し当欄では2年前の今頃に「本来ETFは長期向けなものの、レバ系への傾斜が鮮明な日本は投資家の短期嗜好が顕著に表れているか。」と書いていたが、果たしてという感じだ。

ETFといえばこれまで200銘柄以上が上場しているにもかかわらずレバレッジ型の一部を除けば売買高が極端に少なかった事で、リクイディティーを高めるために先月から東証ではマーケットメイク制度が導入されたばかり。見切り千両で撤退する外資と進行中の改革、何れも粛々と為されているがNISA等とも併せ今後どう啓蒙してゆくのかにも懸かっている。


安定の貴金属ETF

さて昨日触れたトルコリラ急落だがその余波はコモディティーにも及び、この急落を受けユーロ安・ドル高が加速、ドル相場と逆相関の金からの資金流出でニューヨーク先物の週初終値が前週末比約20ドルほど安い1トロイオンス1190ドル台とほぼ1年半ぶりに1トロイオンス1200ドルの大台を下回った旨が本日の日経紙商品面に出ていた。

1年半ぶりの安値示現という一方で、この金などを中心とし東証に上場されている金の果実シリーズを筆頭としたETFなどの貴金属投資が、実物資産という観点から不測の事態に資産全体の目減りを防ぐ「守り」の役割なども期待されじわりと浸透している旨が週明けの時事にも出ていた。

このシリーズ、主力の金が上場した8年前には当欄で「売買代金は1億3千万越えとなかなか。この手では首位を誇る「SPDRゴールド・シェア」の同日の売買代金が約7億7千万、大証に上場している「金価格連動型上場投資信託」は約3億8千万、同じ大証の「国内金先物価格連動型上場投信」が約1,600万、そして「ETFS金上場投信」が約6百万であった事を考えると今後にも期待が持てよう。」と書いていた。

あれから8年、その純資産残高は588億円となり実に上場時の30倍近くに膨らんでおり、これを含め銀、プラチナ、パラジウム4商品のそれも今月アタマの時点で736億円と上場時から20倍を超えるなど軌道に乗った感がある。市況に左右されない安定感が要だが、世界規模で見ても金ETF残高はこの2年半で5割強増加しており今後も要注目といえる。


きれいな花には棘が

周知の通り米国とトルコの政治的対立を背景にトルコリラが急落、他の新興国通貨にも影響が出始める等世界の金融市場が揺れている。対外債務問題等大きなところ以外でも末端の個人もFX取引はじめ、投信ではトルコ株やリラ建てで運用するモノが10日時点で50本以上、純資産残高は合計で約2500億円あるという。

リラなど新興国通貨建て商品の魅力としては先ず高金利というのが挙げられるが、インカムを貰ってキャピタルでそれ以上に取られるというリスクとは常に隣り合わせ。しかし高金利投信といえば構造上違うといえボラが一定の範囲に収まっていれば享受出来るというモノも多数発行されているが、今回のような事態になれば裏返しのリスクをいっぺんに被る事になる。

残高の多い欧州ハイ・イールド債券ファンドのリラ建てのモノなどここ3ヵ月で基準価格が23%低下していると日経紙に出ていたが、こうした時に独特の選好性というものが表面化するもの。手数料含めこうした時にこそ改めて欧米諸国の投信事情と比較するにその特異性がよく見えるものである。


ビールも虫も

さて例年この時期には所謂シーズンストックとしてビールやアイスクリーム、家電など猛暑なると需要が拡大するとの思惑から関連モノの株価上昇が風物詩なのだが、先週末の日経紙には「夏銘柄 下落の異変」と題し今年は災害レベルの猛暑が続いた為に夏商戦への恩恵が薄まりこれらの銘柄が逆に軟調を強いられている旨が出ていた。

本日のマーケットでも大幅に4日続落という悪地合いの要因もあるものの、清涼飲料ポストからはコカ・コーラBJHが年初来安値を更新、またエアコン関連ポストではビックカメラも年初来安値を更新となっている。代表格のビール株もアサヒやキリンHDの主力が6月末比で10%以上の値下がりの憂き目に遭うなど今年は確かに一寸異例の光景だ。

これらビール株は気温が35度を超えると消費が伸びなくなるという事だが、同紙では他にアイスから氷菓への需要移行から乳業ポスト、外出の手控え警戒感から東京都競馬等も弱いとしている。また一覧には防虫関連もあげられていたが、これらはビール消費ではないが35度を超えると蚊は飛ばなくなり死亡率上昇で減少するというというデータがあるらしい。

これらフマキラーやアースなど先喰いした分、猛暑になってからの失望売りも五月雨的に出ているが書き入れ時の思惑外れで各社も穏やかでない。今年はペットの熱中症まで注意喚起が出て近年はセミが鳴く時間帯まで変化しているというが、シーズンストックの異変は今後の消費構造の変化を物語っているようだ。


アパレルの異業種

さて、今週アタマの日経MJ紙には「黒帯気分で押忍!」と題し、先月に空手を取り入れたフィットネス「ビーアイエフ・バイ・ナージー・ハラジュク」が原宿にオープンした記事があった。フィットネスジムといえば最近では先に挙げたシックスパッドステーションなど様々な形態が増殖しているが、空手フィットネスを手掛けたのはアパレルのジュンである。

同社社長曰く「姿勢を良くすると体幹が鍛えられる。そういう体で服を着るというのが一番美しく見える。」とのこと。殿方には残念ながらココは女性専用という事だが同フィットネスの公式アンバサダーには世界空手道選手権大会優勝者の女性を据え、ロッカールームのドライヤーは全てヘアビューザーという拘りよう。

思えばかつて同社はエアロビクスを世に広めた立役者としても有名だったが、これに限らず当欄で今年3月にも書いたようにここ数年はファッションの枠を飛び越え衣食住を含めたライフスタイルを提案するアパレルメーカーが増えている。異業種を組み合わせることでこれまでにない相乗効果がどう創造されるかこうした部分に今後も注目しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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