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燻る思惑

今月中旬に当欄では「アクティビスト台頭」と題しTOBが難航している日立国際電気やアサツーDKを取り上げていたが、先週末の日経紙マーケット面にはこの日立国際電気へのTOB成立を試みている米投資ファンドのKKRが従来のTOB価格から約25%再引き上げする発表をした旨が載っていた。

KKRが一段の譲歩を迫られると当欄でも書いていたが、果たして異例の再引き上げ措置となった。イグジットのハードルが引き上がっただけにKKRはファイナルアンサーとしているが、反落となった本日の終値でもその再引き上げしたTOB価格を上回っており一般含め市場を下回る価格で応募する奇特な向きは如何ほど居ようかと疑問符が付く。

もう一つのTOB期限を一度延長していたアサツーDKの方はといえば、土壇場で筆頭株主のWPPが態度を軟化させ売却合意に向かった事で買い付け期間を12月6日まで延長という事で一応の決着を見た格好となっている。こちらも期限迫るなか三つどもえの構図がどう決着するか見ものと書いていたが、其々の思惑を乗せてまだまだ注目されるケースが続こうか。


ふるさと納税平準化

この時期になるとふるさと納税もそろそろ駆け込み消化が始まろうかというところだが、先週末の日経紙には「ふるさと納税 過熱一服」と題し、昨年のふるさと納税受け入れ額上位100自治体の今年の見通しが自治体の6割で減少を見込んでいる事が同紙調査でわかった旨が載っていた。

うち9自治体は受け入れ額が半分以上減ると見ており、中には受け入れ額が十分の一に縮小する見込みの自治体もある模様。8月に当欄でこの件に触れた際には好調な返礼品の受注で設備投資や雇用を増やしてきた関連企業こそ心中穏やかではないと書いていたが、果たしてというか彼方此方の返礼品納入業者も恨み節が聞こえて来る。

こんな梯子を外された納入業者や自治体の混乱を見て一括りで通達を出した総務省サイドの態度軟化の一部報道も出ているが、自治体サイドも返礼品が及ぼす経済効果はやはり無視出来なく、一度吸ってしまった甘い蜜の味は忘れ難いだけに苦心する誘致合戦も余計に本来の目的とかけ離れたモノも新たに出てきている。

とはいえ大手の仲介サイトでは受け入れ額全体では2割程度増加しそうとの見込みを出しておりふるさと納税の気運自体が萎えたワケではなさそうで、総じて今のところ総務省の一括り通達はこうした増加分と併せ首位減少分が他所へ分散する効力を齎した格好になっているものの何れ徐々に回帰してきそうな気がしないでもない。


連続破綻から20年

さて、今週で関係者に多大な衝撃を与えたあの山一証券破綻からはや20年が経過する。思い起こせばちょうど20年前の11月という月は四大大手の一角であったこの山一が破綻劇のトリを務めた格好になったが、その前に連続破綻の口火を切ったのが月初の三洋証券、そして中旬の北海道拓殖銀行があった。

この三洋証券といえばバブル期を象徴するかのような東証をも上回る世界最大とも言われたトレーディングルームが鮮明に思い浮かぶが、拓銀にしても一時は一蓮托生だった数万円の値が付いたカブトデコム株が紙屑になりウィンザーホテル洞爺の写真を見る度にこれらの事件が思い出される。

そして山一。日経・私の履歴書で元野村證券副社長が書き綴っていた通り今では金商法で真っ黒な「ニギリ」が横行、その派生で公然と「飛ばし」も横行し山一破綻のトリガーとなったのだがあれから20年、日経平均も25年ぶり高値水準まで回復した今こうして改めてひと昔を回顧する機会が多い。

当時はそもそも株式が持ち合いで成り立っていたのでわざわざ浮動玉相手にIRなどマトモに考える向きも少なく、投資尺度にしてもフューチャーバリューやQレシオなど異常株価を擁護する為?の指標が次々と現れた狂乱時代であったものだが、そう想い返すと現在進みつつあるガバナンス改革もこの山一破綻を教訓としている部分も少なくないか。


プラチナ選好

先週末の日経紙マーケット面には「プラチナ、長引く価格低迷」と題して、価格低迷が鮮明化し需給バランスの崩れから相場の低迷は今後も続くとの見方が強まっている旨が載っていた。そういえばちょうどこの時期になるとホリデーギフト等の案内が多くなってくるが、ジュエリーなど同じモデルでもプラチナ仕様のモノが極端に高いケースなど違和感を覚えるようになって来た。

一般的には宝飾品でも白モノの貴い輝き信仰は依然として日本人には多いが、お隣中国では昨年のプラチナの宝飾需要は40.4トンと直近ピークである2009年の60.8トンから34%も減少となっている。プラチナ信仰は投資用でも顕著で下鞘化の15年から16年にかけて本邦勢のみ買い向かった経緯があるが、今年の地金販売量は田中貴金属工業で1月から9月が前年同期比で5割近く減少と報じられている。

先月アタマの当欄では「クレジットカードなんぞもゴールドより格上のプラチナカードが肩身が狭い等との冗談も出てきそう〜」と書いたが、今月9日の日経紙・春秋でも「クレジットカードのグレードはゴールドより上級だが、見直しを迫られまいか。」と似たような事が書いてあった。不動のカードグレードやジュエリー価格へ名実共に即した価格に回帰するのか否か恒常化した鞘を今後とも見守ってゆきたい。


今年のボジョパ

ハロウィーンが終って次の11月の風物詩といえばボジョレー・ヌーヴォーだが、今年も昨晩0時に解禁となり都内のイベント会場には多くの人が集まり賑わっていた。昨年も高い評価であったが、なんでも今年は夏場の気温が記録的に高く乾燥していた事から葡萄の果実が小さく凝縮されたものとなり非常に高品質のワインが出来上がったという。

イベント会場に限らずANA等では空港のラウンジや機内でボジョレー・ヌーヴォーを提供するサービスを行ったり、箱根では恒例のボジョレー・ヌーヴォー風呂を開催した様子が報道されていたが、日本への輸入量は販売量減少を背景にここ数年減少が続いており、2004年のピークから半分以下にまで落ち込んでいた昨年から今年は更に5%減少の見通しという。

斯様な背景から小売り各所では消費落ち込みに歯止めをかけたい考えといい、新たな顧客層の掘り起こしを狙って大手等は液体が映える透明ボトルにイラストを直接印刷したSNS映えを意識した商品も登場している。ハロウィーンからクリスマスまでを埋める商戦としての地位を確立出来るか否か今後も各社の戦略に懸かって来るか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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