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市場席巻の生成AI

米巨大IT企業の2023年10~12月期の決算が出揃い、マイクロソフトは先の2023年10~12月期決算は売上高が四半期として過去最高を記録、アップルは2023年10月~12月期の決算が5四半期ぶりに増収増益となっていたが、昨日の日経紙社説には「AI時代に競争に入った米巨大IT企業」と題して、世界のテクノロジー産業に大きな影響力を持つ巨大IT企業の主戦場がスマホからAIに移り変わったと認識すべきとの旨が書いてあった。

それもその筈で生成AIの市場規模は2022年が推定で398億ドルであったものが、大手証券系ではそれが今後の拡大により2027年は0.4兆ドル規模の予想、2032年予想では1.3兆ドル規模に拡大が見込まれているとの試算を出している。実に2032年にかけて市場規模は約33倍、年率平均で42%の成長が予想されているからこれは凄い。

米の時価総額ランキング1位に君臨するのはマイクロソフトだが、同社の株価上昇率は1年で65%にも達し時価総額は24日に初めて3兆ドルを突破したのは周知の通りで史上初の4兆円企業が視野に入っている。2位はアップル、3位はアマゾンだが、元々本業で住み分けが出来ていた彼らも生成AIがこの領域に浸食し安定的な構図も変わりつつある。

大手が挙って新興生成AI企業に投資をし始め、更に大手から投資された企業がまた別の新興AI企業に出資するなどでこうした競争激化でAIはますます洗練化される構図か。経産省も国内の生成AI開発を支援する旨を表明、海外勢が先行する生成AI基盤の国産化を促すとしているが先行する米市場の背中はまだまだ遠く見える。


3年連続のスタバ

先週末にスタバが全体の8割以上のドリンクを今月中旬から4~28円値上げすると発表していたが、これで3年連続の値上げとなった。というワケで今月に値上げをする予定の飲食料品は帝国データバンクの発表では1626品目、前年同期の5639品目から大きく減少したとはいえ昨年10月以来、4か月ぶりに1000品目の大台を上回る。

身近なところで挙げれば、江崎グリコがプッチンプリンなど247品目を3~39%値上げ、また冷凍食品大手テーブルマークは家庭用冷凍食品やパックご飯など56品目を約3%~13%値上げ、そしてカゴメは家庭用トマトケチャップなど147品目を6.2%~16.4%値上げするが、このトマト関連製品は昨年の記録的な猛暑でトマトの価格が高騰した所謂“トマトショック”の影響が大きいか。

食品系ではこのトマトショック以外にも鳥インフルエンザによるエッグショック等もあったが、双方共に今は価格も落ち着きを取り戻している。一方5月迄で人件費を理由とする値上げ品目数は約2割を占めているというが、賃上げ分を確保する為の値上げが広がってゆくのかが今後の焦点で、そういった意味では春からの所謂「物流2024年問題」等もどういった影響を及ぼすか注目しておきたいところである。


モノづくり日本

周知の通り、先月は無人探査機の「SLIM」が世界初となるピンポイント着陸に成功しているが、その後太陽電池が発電できず電源を切った状態にしていたものが一昨日には太陽の向きが変わり太陽が当たった事から太陽電池パネルが復旧、地球との通信が確認されてその運用が再開したことが明らかになっている。

それにしてもこの度のピンポイント着陸、その誤差はこれまで数キロメートルとされてきたが、今回は目標地点からわずか約55メートルと前例のないピンポイント着陸であり大きな成果であったのではないか。このスリムを支えているのが搭載されている日本製品だが、三菱重工のエンジン、三菱電機のコンピューター、シャープの太陽光パネルに古河電池のバッテリー等々だ。

まさにオールジャパンといった感じだが、個人的に感心したのが着陸直前で月面に投下され月面を撮影したのがボール状のSORA-Qか。これをJAXA等と共に共同開発したのがこれまた玩具のタカラトミーだったが、月面に降り立ち変形する部分で変形型玩具のトランスフォーマーの技術が使われているということで、日本のおもちゃ技術が宇宙で活躍する時代が来たとは何とも夢のある話ではないか。

昨年末には宇宙ビジネス展示会「NIHONBASHI SPACEWEEK」を書いた事があったが、今や宇宙はこれまでの調査する場から様々なビジネスの場に移りつつある。世界的な競争のなかで日本企業が存在感を示す機会はまたとないチャンスともいえるが、今回の件では上記の通り宇宙という舞台で日本のモノづくりの力を改めて示す事が出来たのではないか。


商習慣の発展的解消

昨日の日経紙投資情報面には「持ち合い株売却益4倍」と題し、2023年4月から12月期の投資有価証券売却益が6800億円と前年同期の4倍にも増えた旨が出ていた。持ち合い株といえば昨年の10月にはグループの持ち合い構造が強固な事で知られたトヨタグループでも、アイシンが政策保有株ゼロを目指す旨を打ち出したのが衝撃的だったが予想以上の急ピッチである。

この辺の背景には言わずもがな東証からのPBR改善要請等があるワケだが、持ち合い株解消に絡んで当欄で東証再編以前に取り上げた三菱系銘柄などその後の株価パフォーマンスが素晴らしい。減少が顕著だった三菱商事を巡り金曜会メンバーの株売却や三菱御三家の一角の三菱重工等も取り上げたが、それぞれ当時から株価ははや約2倍近くに化けている。これら以外でも積極解消組では芙蓉系の日立製作所などの株価上昇も顕著だ。

そういえば昨年の秋口に登場した所謂アクティブETFの中には「政策保有解消推進ETF」なる商品も登場していたが、本日はジワリと年初来高値を更新してきている。今月から始まった東証の資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応に関する開示企業一覧の公表と同様に、これらのアクティブETFにおいても解りやすいそのテーマ別に更なる改善圧力がかかって来ることも予測されるか。


中国版PKO

昨日の日経紙総合面には「中国、追加の株価対策」と題し、中国証券監督管理委員会が上海総合指数の低迷が続く自国の株式市場にて株価テコ入れの一環としてこれまでも上場企業の大株主等の保有株売却の制限をしてきたが、“空売り”を制限するため譲渡制限株式の貸し出しを昨日から全面禁止にする旨が出ていた。

上海総合指数といえば2015年の急落がいまだ記憶に新しいが、この時の株価対策といえば国家ファンドが2400億ドル相当を投じたと伝えられたが株価下落の勢いを止めることは結局出来ずほぼ失敗に終わった経緯がある。この度の低迷時も先に政府系ファンドによるETFの購入などが画策されたが、これまた効果が出ないままにこの度の追加措置に至ったという感じか。

これら以外にも約2兆元にものぼる市場安定基金などの活用論も一部で報じられていたが、昨今の本邦株式のバブル崩壊後の高値更新云々等の報道を見るに連想してしまうのがこのバブル崩壊後1990年代のPKO(Price Keeping Operation)なる経済対策か。昨日はトヨタ自動車が歴代最大の時価総額となった旨を買いたが、おりしも今月に入って東証の時価総額は上海証券取引所を上回っている。

約3年半ぶりのアジア首位への返り咲きだが、当の上海に上場している日経ETFや米国株ETFの価格が異常人気で実際の基準価格より大幅に上回るイレギュラーな状態により売買が一時停止にまでなっている。予てより中国は日本と同じ轍を踏まぬよう研究し当局が対策を講じるとの記事を度々目にして来たが、日米のETFに大挙して流れ込む逃避資金を見るに当局に対する信頼度の一端を見た感もする。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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