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緩和トレード逆回転

先に日銀は政策金利を0.25%程度に引き上げる追加利上げを決めたが、この決定から米景気の先行き警戒感も相俟って市場はボラティリティの波で大荒れとなっている。所謂インフレトレードの逆回転が一気に表面化しドル円相場は約7か月ぶりの141円台へと一気に上昇、本日の日経平均に至っては前週末比4451円安と実にあのブラックマンデーの時の下落幅を超え過去最大を記録した。

先物市場では日経平均が英ブレグジット以来、TOPIXは東日本大震災以来のサーキットブレーカーが発動される事態になったが、こうなると225オプション市場など非常に熱い。プットなど24000円や25000円の行使価格はそのディープアウトさから先週の日経平均1000円安でもその値は1~3円と反応乏しかったが、当限の250プットなど先週末の終値3円から本日はザラバ600円と200倍の大化け、同じく当限の240プットは先週末の終値2円が本日のザラバで480とこちらは実に240倍になっている。

個別では多くの企業が堅めに置いた2025年3月期の想定為替レートをあっという間に割り込む円高で主力の輸出企業株が売られるのはもっともな流れだとしても、円建て債で運用しているバークシャーの戦略見直し観測から伊藤忠商事がストップ安の暴落、またここから日銀の追加利上げが見込まれるなかにあって早くも資金調達需要の変調を見越しメガバンクの三井住友銀行もストップ安まで暴落する光景をもう終わりだと見るのかチャンスと捉えるのか?

つい最近には「新NISA」の個人購入額が旧NISA時代の上半期実績の約4倍にもなる7.5兆円を超え、その内訳は約4割が日本の個別株に流入と報じられていたが、その中でもベストスリーに入る人気を誇っていたJTもまた本日はストップ安まで暴落する展開に。新NISAの高らかな掛け声で一斉に大挙した彼らはこの度の急落をどう見ているかだが、いずれにせよリスクこそがリターンの源泉、個人的にはなかなか見られない荒れ相場にワクワクしながら臨みたい。


花火大会変遷

さて夏の風物詩である花火大会の季節だが、先の足立花火大会は実に開始20分前に中止の憂き目に遭ったものの、その後の葛飾納涼花火大会や先週行われた隅田川花火大会は不安定な天候ながらもなんとか開催の運びとなった。ところで花火大会といえば今年に中止となった花火大会は22か所に上り、規模が縮小された花火大会もあったという。

昨年の当欄では「物価高が叫ばれるなか人件費や花火の購入経費等が軒並み上昇したことを背景に従来設けていた荒天時の順延日が軒並み廃止されている。」と書いていたが、コロナ前と比較すると1.8倍にもなった花火(火薬)価格や、警備費を含む人件費や準備にかかる様々な費用の高騰化により今年は更にこれらの動きが顕著化してきているという感じか。

とはいえこれまで続いてきた風物詩はなんとか守りたいとこれに対応すべく動きも活発化しており、冒頭の隅田川花火大会や葛飾納涼花火大会でも市民協賛や船舶の標旗販売等を行っているが、帝国データバンク調べでは今年に国内で開催される主要な花火大会のうち約7割となる79の大会がこうして観覧エリアに有料席を導入しているという。

また支援の輪は企業にも広がっており、キリンビールでは新商品の売り上げの一部を活用し全国の花火大会を支援、花火を打ち上げる為の資材・人出・会場の設営などに支援金を充て減少傾向の花火大会を守り未来につなげてゆきたい考えという。今月は来週末に神宮外苑花火大会が控えるが、これまで毎年当たり前に見られると思った夏の風物詩もこの物価高を背景に今後存続をかけどう形態が変わってゆくのか注目してゆきたい。


上場までも上場後も

先週は100年に一度といわれた渋谷再開発のラストピースともいえる渋谷駅直結の大型複合施設である「渋谷サクラステージ」がオープンしている。この開業式典では出席していた首相は、「新しい資本主義の重要な担い手はスタートアップだ。スタートアップ支援の拠点となって、新しいイノベーションを起こす役割を期待したい。」と述べていた。

このサクラステージ、起業家の支援を目的とした会員制のシェアオフィスを擁しており施設に入居するスタートアップ企業と大学の産学連携の取り組みを実施する予定となっている。ところで冒頭の首相挨拶にも力が入っていた通り、政府は日本経済の起爆剤として2年前には「スタートアップ5か年計画」を作成している。

90年代に渋谷は米シリコンバレーに倣い渋谷ビットバレーといわれたものだったが、この5か年計画ではスタートアップへの投資額の大幅引き上げ、将来においてはユニコーン企業100社創出、またスタートアップ10万社創出などを目指すとして、日本がアジア最大のスタートアップハブとして世界有数のスタートアップの集積地になることを目指すとしている。

とはいえ日本のスタートアップは上場ゴール等と言われて久しい。先週末にも東証グロース市場に隙間時間で働ける単発バイトの仲介アプリを展開するタイミーが上場していたが、セカンダリーマーケットのステージに移行した後も伸びてゆくには法整備等で諸外国に比べ制度面などで見劣りする課題もあり、上場まではもとより今後は上場後も視野に入れた支援策定も求められようか。


猛暑と消費

今日も外へ出た途端に猛烈な熱気が身体を襲う暑さであったが、各地で体温超えの40度台に乗る気温を記録する地点も増えて来た。既に環境省は4月末に災害級の熱波に備える為に「熱中症特別警戒アラート」の運用を全国で開始しているが、イベント等でもこれにちなんだモノも多く東京ビッグサイトでは先週末まで関連会社83社で暑さを和らげる商品を体験できる猛暑対策展が開催されていた。

TVでもこの模様を報じていたが、機能は申し分ないのだろうが中には頭をすっぽりと覆うモノや長袖など見ている方からは更に暑さを増幅させるモノもあるなか、視覚的にわかりやすいモノとしてシャーベット状の飲める氷、アイススラリーなど各社力を入れているようだった。シャープではこれを作成出来る冷蔵庫を披露し、カリカリ梅で有名な赤城フーズでも今年からこれの販売を開始している。

こうした商品含め熱中症保険なども加入者が急増するなど猛暑関連の出費増加が予想されるが、一部シンクタンクでは夏場の平均気温が1度上がる毎に2600億円程度の個人商品の押し上げ効果があるといい、今月の平均気温は平年より2度ほど高いといわれている事で5000億円近い押し上げ効果で消費の盛り上がりが期待出来るという。しかし、思えば環境省は2005年に地球温暖化対策の一環として「クールビズ」を推奨した経緯があるが、あれから約20年経ってなお更なる温暖化の進行には危機感を禁じ得ない。


コングロマリットディスカウント

周知のようにコンビニ大手のローソンが先週末に上場廃止となっている。既に報じられている通り通信大手のKDDIによるTOBが成立した事によるものだが、このプライム市場における最後の発表では3月から5月までの決算で最終利益が169億6700万円と過去最高を記録、有終の美?を飾ったかっこうになったといえようか。

ところで上記のローソンに見られる通り、親会社と子会社が共に上場する「親子上場」は、昨年2023度には前年度比で1割減少し190社とピークの2006年度から半減した旨の記事が先週の日経紙に出ていた。5年ほど前だったか親子上場の解消が加速した時期に同紙の一面にこの件が報じられた事があったが、その時には288社と報じられていたからそこから約100ほど更に解消が進んだという事か。

そういえば以前当欄で取り上げたベネフィット・ワンも当時でその時価総額が親会社パソナの5倍超にもなる超親子逆転現象であったが、TOBの実施中であったエムスリー社は途中参戦した第一生命に売却先が変更される一幕もあったなと。他にもこの「ねじれ」で似たパターンではGMOインターネット・GMOペイメントゲートウェイや三菱ケミカルGと日本酸素HDなどがあるがこれらは親子上場をいまだ維持している。

解消組の富士ソフトなどはアクティビストからの要請をのんだ経緯があるが、利益相反や資本関係の非効率を突いて今後も物言う株主からの提案は増える事はあっても減ることは無いだろう。この親子上場も株式持ち合いと同様、日本独自の特異な商習慣ともいえようが東証の企業統治改革要請やアクティビストなどの圧力にこれらの浄化?も粛々と進行してゆくことになるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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