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カタリスト

一昨日の日経紙マーケット面では「株高占う政策株の縮減」と題し、日経平均株価がレンジ相場を脱しバブル崩壊後の最高値を更新する原動力の一つとして、政策保有株の縮減に注目が集まっている旨が書かれていた。冒頭にはアイシンが政策保有株ゼロ化を目指す旨が出ていたが、とりわけ今年は過去にないペースで持ち合い解消が進んでいる。

即ち東京証券取引から発表されている週次統計において投資家主体別売買データの政策保有株の売却を反映する事業法人からの現物株式売却では、10月第1週時点で計4.8兆円に達しているが、同じ時期の過去5年平均が約3兆円程度であったことを考えると今年はこれらを約5割上回るペースで推移していることになる。

これまで株式持ち合いという日本の特異な形態は相手があっての事につきなかなか解消のきっかけが切り出せなかったものだったが、政策保有株を持ち合う双方共にPBRが低い傾向にあったところへ東証が要請したPBR1倍割れ是正等でこの辺のハードルが下がり動きが加速してきたものと思われる。

とはいえ安定株主を欲する企業ニーズはある一定数は残る可能性が高く今後何処まで解消が進むか不透明な部分もあるが、既に先に取り上げたアクティブETFでも「政策保有解消推進ETF」なる商品が登場し解消期待は大きい。特にこれに組み入れられているトヨタグループの持ち合い解消の動向は冒頭のアイシン然り注目が集まっており、引き続き他の事業会社含めた政策保有株の縮減に向けた動きには注目しておきたい。


枝葉の広がるオプション市場

さて先週末の日経紙グローバル面では「超短期トレード、米で急増」と題し、米オプション市場で米S&P500種株価指数を原資産とするオプションで24時間以内に満期を迎えるODTE(ゼロ・デー・オプション)の比率が、CBOE(シカゴ・オプション取引所)の調査で8月に5割となるなど超短期トレードの存在感が高まっている旨が出ていた。

満期が24時間未満と超短期で価格も安価なところがミーム株などに飛びつく個人に人気なあたりが国内でも一頃話題となったバイナリーオプションを彷彿させるものだが、最近では個人のみならず機関投資家の取引も増加している模様で、いずれかに大きく動けば利益が狙えるストラドルの買いをビッグイベントの前に組んで臨む向きも多いようだ。

こうした人気からCBOEはVIX1D(ワンデーボラティリティ指数)と呼ばれる指数をスタートさせ、先月にはナスダック100指数のプットを売り稼いだオプション料がETFの収益源となる「ナスダック100エンハンスト・オプション・インカムETF」なる商品も登場している。またドイツ取引所のユーレックスでも、ユーロ・ストックス50と連動するゼロ・デー・オプションの取引が開始されている。

斯様な新指数の登場や上記の売りニーズが増えるような新形態のETFの登場で、ボラの変動幅拡大など含めオプション市場全体のバランスを危惧する声も一部出てきているがその辺は今後の推移を見守りたいところ。日本でも先にSBI証券と楽天証券が揃って手数料無料化を打ち出したばかりだが、こうしたことなどを背景に日本でもオプション取引の枝葉が広がってゆくかどうか注目したい。


欧州に倣う

高島屋から回収した顧客の服より再生したカシミアを使った衣類の案内が来ていたが、この辺に絡んでは経済産業省が先月末に衣料品の再生や再利用に関する課題と改善策をまとめた報告書を公表している。「回収」「分別・繊維再生」「製造」「販売」の4段階で改善を要求するというものだが、上記の高島屋はじめ近年再生衣料の試みが目立っている。

最近はJR東日本などでも回収した古着から手拭いなどを作って販売する動きがみられるが、アパレル産業は世界で年間約9000トン以上もの大量な服が廃棄されており石油産業に次ぐ環境汚染産業とまで言われているが、日本でも家庭や事業所で不要になった衣料品の64.3%が捨てられており再生は約17%にとどまっているのが現状だ。

リサイクルやアップサイクルで先行しているのが欧州勢で、ZARAはじめ複数のブランドを展開するインディテックスは早くからプラスチックのショッピングバッグを廃止し再生衣料にも積極的に取り組んでおり、H&Mも廃棄品をアップサイクルした循環型繊維を什器に採用するなど積極姿勢が目立つ。今回の経産省の動きも欧州の動きに対応したものだが何処まで比率を伸ばせるか注視しておきたい。


国際金融センターランキング

先週は日経サステナブルフォーラムが開催されたが、そこで総理は新しい資本主義実現会議のもとに投資拡大に向けた政策を議論する分科会を設けると表明、NYで表明した煩雑な行政手続きを英語で完結するなど海外投資家が活動し易いように環境を整える等の資産運用特区などを議論し年末までに政策プランをまとめる方針と述べていた。

この海外の資産運用会社を日本に誘致する狙いの特区だが、ちょうど先月末に公表された国際金融センター指数によればランキングのトップは安定のニューヨーク、次いでロンドン、そして3位がシンガポールとなっている。という事で肝心の東京はというと21位と前回の16位より更に5つランクを下げなかなか不甲斐ない位置に甘んじている。

もっとも1年前は曲がりなりにも9位とトップテン入りしていたワケだから前回も既に7つランクを下げていることで今回も連続ランクダウンと凋落が目立つのは否めない。ちなみに政府はこの資産運用都区の候補として東京以外にも大阪、札幌、福岡を軸に検討しているようだが、このうち大阪が同ランキングで辛うじて38位に位置しているものの札幌や福岡はランク外となっている。

このランキング、今後数年で重要になると想定される都市には東京以外のアジア勢が数多挙がって来ているが、現状の日本の運用会社の規模などを見るにこれに挙がって来ないのも納得でなんとも心許ない。この辺はホームバイアスの特異さなどが背景になっているワケだが、先ずはこのあたりの現状から見直さなければならないのかもしれない。


分割機運

さて、今年は誰もがその名を知っているであろう日経平均寄与度の高い銘柄群の分割が目立つが、ザッと挙げても先ず3月にはユニクロのファーストリテイリングが1株→3株へ、4月には夢の国ことオリエンタルランドが1株→5株へ、ファナックが1株→5株へ、東京エレクトロンが1株→3株へ、信越化学工業が1株→5株、そして7月にはNTTも超大幅分割を実施済みだ。

今月もホンダやデンソー、ヤクルト本社やロームなど有名どころの分割ラッシュだが、先の日曜日の日経紙総合面にも「株式分割 個人買いやすく」と題し、東京証券取引所が望ましいとする最低投資金額とする「50万円未満」を上回る銘柄の分割が2023年10月末までに60件強と前年同期の2.3倍に増える見通しと書かれていた。

上記以外でも直近ではJR東海が11年ぶりに1株→5株への株式分割を実施したほか、村田製作所も1株→3株の分割を実施、アドバンテストも同じく1株→4株の分割を実施しており、村田製作所は2019年の3株分割以来、4年半ぶりの分割実施、アドバンテストに至っては2006年の2株分割以来、実に17年ぶりの分割実施となる。

来年から始まる新NISAに向けて個人投資家がより投資し易い環境へとの機運の盛り上がりから東証の示す望ましい投資単位の水準へ近づけようとの分割実施の増加だが、形ばかりの分割でなお新NISAの拡大した成長投資枠を軽く超過してしまう向きや、超値嵩のままこれまで静観してきた向きが今後重い腰を上げるのか否かこの辺の動向も注視しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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