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下限あり

本日の日経紙には、日銀が月末の金融政策決定会合で追加金融緩和の検討に入ったことを受けた長期金利の低水準になっている様が書かれていた。目下のところまた欧州の雲行きが怪しくなってきているが、この金融政策決定会合が控えているために本邦市場はなかなか鋭角的に売ってゆく動きになっておらず消化難にも見える。

さて同じ紙面には「緩和は当然 日銀の苦悩」とも出ていたが、もともとゼロ金利とはいっても補完準備預金制度がある以上市場金利の下限は0.1%。即ち日銀がいくら資金を供給したところで当座に預ければ0.1%は確実に取れることから、金融機関が挙ってこれを行っているようでは金融緩和効果の実効性が疑わしいとの指摘は前からあった。

そんなわけではてこれが日銀は本当に苦悩なのか、つれない素振りが期待を煽る単なる演出に過ぎないのかというところだが常識的にはまだ可也の緩和余地があるというのは否めない。各所で催促相場もいわれているが、何を考えているか解らない決定に出れば単に失望に変わるのは明白であり何れにせよ月末の決定会合に注目である。


業界慣行に牽制効果の薄さ

さて、先週末にはSMBC日興証券に金融庁が業務改善命令を出すに至っているが、これは周知の通り企業の増資情報を公表前に漏洩し顧客に勧誘活動を行っていたのが金融商品取引法に違反するとの判断によるもの。主幹事の情報漏洩といえば、先月には野村の件を書いたことがあったが矢継ぎ早に二件目である。

証券取引等監視委員会ではこの対象銘柄の公表はしていないが、主幹事実績から察するに三井住友FGと、もう一つは相鉄HDと思われる。何れも国際帝石の説き同様に事前から不自然な株価の動きが予ねて指摘されていたが、当の委員会は検査対象はSMBC日興証券のみとして対象株を売買した投資家のインサイダー取引の有無については言及を避けており中途半端な感は否めない。

まあ、仕切りや大量推奨販売が公然と行われていた一昔であればこんなのはごくごく普通の光景であったと思われるが、情報を扱う証券会社への監視の目も強化され時代は変わったものだなとしみじみ。それでもこのケースでは情報伝達者はインサイダー取引規制そのものには抵触するワケでもなく、先の国際帝石でも課徴金は5万円足らずとけん制効果など出ようはずもない。業界の慣行の一つを切り崩すのもまだまだ時間が掛かりそうだ。


どうなる日本ブランド

本日の日経平均はほぼ終日軟調に推移し小反落となったが、日経平均が上がろうが下がろうがそれらに関係なく主力勢の中で連日の続落歩調が続いているのがソニーだろうか?

もちろんスペイン等に絡んで欧州債務問題再燃から対ユーロの円高進行でこれらの売上高比率が高い同社に売り物が集まったというのもあるが、昨日など同じ欧州関連グループの富士フィルム、リコー、NTN、日産自、マキタ、キャノン等々一斉高していたにも拘らずこのソニーはひとりマイナス圏に沈んでいたのはやはり目立つ。

そんなワケで新経営方針説明会が行われようが、有機ELテレビ量産へ台湾企業と提携交渉が明らかになろうが、まったく材料視されずむしろ売りの材料になるほど。特に新CEO就任で注目された新経営方針説明会では、優等生的な文章構成ながら実のところ具体的なものは何一つ提示されず素直な感で「絵に書いた餅」そのもの。わざわざこんなプレゼンなどやらなかった方が株もまだ値持ちがよかっただろうと察する。

しかし同社を含めシャープやらパナソニックやらのテレビ事業の不振は、これら主力の3社で2兆円近くへこむわけだからなんとも酷い。丁度一週間前の日経紙にはパナソニックは白物家電中心に環境事業に経営資源を集中、シャープは台湾企業からの資本提携をテコに収益改善を図るなど戦略を示しているとしているが、このシャープとて出資を仰ぐ企業はこれで完成度が増し将来的には同社と競合することになるのは必至で、そうなればその時に主導権を握るのは至難の業。先の見えぬなか今後サプライズが出て来るか否か、各社の舵取りからはまだまだ目が離せそうもない。


カモ

さて、本日の日経紙でちょっと目に留まったのが「大機小機」の末尾の文章、すなわち「翻って日本は最悪の財政赤字を抱えながら消費税増税でもたついている。ユーロ危機を防ぐためにIMFへの協力に積極的だが、このままではIMF管理もありうる。」という部分であるが、この辺はまったくの同感である。

この消費税増税に絡んで当のIMF専務理事は、首相が目指す2015年までに10%まで段階的に引上げる方針を強く支持すると発言している。財政再建に対する中期的な期待を高めることで日本経済の回復に寄与すると考えるとのことだが、その財政再建が急務な国から600億ドルも毟り取るのを取り付けておいてこれだからまあ物は言いようだなと。

つまるところ増税でも何でもして更なる資金捻出を視野に入れているところなのだろうが、結託というか利用されている政府も政府である。個人ベースでボヤいても仕方ないがこのままでは上記の大機小機の一番最後の部分に書いてある「沈みゆく国」になりかねない。が現実のものとなってしまうのも想像に難くないか。


相対的に

さて、本日の日経平均は小幅ながら続落といったところだが、その東証一部出来高は15億4,132万株と完全に様子見な展開に終始していたといえよう。さてそんな東証でも先に報じられた昨年の売買代金は、中国・上海取引所を上回りアジア地域で3年ぶりに首位になった模様。

しかしなんとなくだが感覚的に意外?と思ったのが正直なところ。この辺は東証が海外投資家の参入が拡大してきたのに対して、上海は金融引き締め策の影響で売買代金の落ち込みが大きかったとのことだが、まあ総じて東証が特に秀でていたというよりも上海がそれ以上に悪かったということだけなのだろう。

これで大規模な投資が奏功したとまた一段と東証は海外誘致に躍起になりそうな気配がするが、中国は政策一つで一変する可能性がありこの辺も注目ながら結局は利便性が要、今後も各所のマネー争奪戦の動きに注視しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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