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破壊と創造の匙加減

さて週末の日経紙商品面には、TOCOMが発表した8月の外国人投資家の売買高が105万9,324枚となった旨が載っていた。前年同月比で33%減となったものの、取引全体に占める比率は29.7%となり、単月で過去最高だった7月に続く高水準となった模様だ。

斯様にコモディティー市場においても外国人の存在が鮮明になってきているが、この辺に関しては同所がアジア投資家誘致に躍起になっている旨が前日の同紙にも載っておりまだまだ増殖の余地ありといったところか。平行して今月は農産物市場開設を正式決定しシカゴの農産物市場をとの裁定取引を促し売買を活発にしたいとの抱負を述べていたが、裁定取引といえば「金ミニ」市場も最終決済価格を標準品決済日寄付値に変更し裁定を促す旨も報じられている。

この辺がインフラと共に整備されてくるとなるとやはりコモディティー市場もHFT化?の流れに拍車がかかるかというところだが、それに伴い個人等の取引形態にも変化が見られるのであろうか。ところでこの個人に関してだが、先週には経産省が金融商品先物を1年以内に投資した経験者に限って勧誘を認めるという商品先物取引の営業行為の規制を見直す方針を固めている。

しかしこの方針、総合取引所を睨み規制によって縮小してきた市場に歯止めをかけ改正金融商品取引法も睨んだ措置とはいうものの、コチラの方はなんとも無手勝流な措置という感はやはり否めないところである。


鶴丸再上場の賛否両論

さて今週のビッグイベントといえば、やはり昨日の「JAL」再上場であっただろうか。売り出し価格ベースでも時価総額が約6,900億円と国内では先の大塚ホールディングス以来の大型案件、世界規模でも今年5月のあの米フィイスブックに次ぐ2番目の規模となるが、実に一昨年の会社更生法適用申請から約2年7ヶ月で株式市場にスピード復帰という計算になった。

当初「JT」売り出しの絡みもあってJAL上場は来年初旬になるのではと噂されたり、他の障害?とも考えられた公取も静かなままで上場にこぎつけたが、コードは懐かしの「9201」と01復帰、その注目の初値は公開価格を20円上回る3,810円となった。これで企業再生支援機構は出資した3,500億円が僅か2年半で大化けし、3,000億円以上の売却益を生むという企業再生事例では他の案件がコケたとしてもなお金が残るのではというほどかつてない成功案件となった。

しかしどうだろう、単純にPER等から「ANA」より割安との声も出ているが、それは金融機関の債権放棄やら減価償却費減少、今後10年近くも法人税が免除されるという特例措置の上に作られた数値の話しであり、確かにこの辺の創られた競争力を公取はどう見るのだろうという疑問も残る。そんな批判を少しでもかわす狙いなのかどうか想定される利益から配当性向など控えめな株主還元という気もするが、美味しい餌で既存会社の競争環境を乱すつもりはありませんといったところだろうか?

ここまで必要以上?の政治介入論も言われてきたものだが、諸々の障害も無いまま思惑通りに上場を果たしてしまった以上、今後はこれら競争という部分において条件の対等化など調整してゆくことも課題になるのではないだろうかという気もする。


自動化の弊害

本日の日経紙商品面には「自動売買で売り膨らむ 成約件数、通常の130倍に」として、17日のニューヨーク市場のWTI原油が5分間で1バレルあたり2.6ドル強急落した旨が出ていた。CFTCは粛々と原因の調査を始めているらしいが、参加者による自動売買が大幅下落につながったとみられている模様である。

自動売買といえばコモディティに限らず近年ではFX等も末端までシステム系が浸透してきた感もあるが、近年のレバレッジ規制等で投資化層によっては資金効率が低下、アクティブさを求める向きに応える形からこうした流れが台頭してくるのは自然なところ。ただこの手が普及すればするほど市場では上記のような突飛な急変値が出現するのは当然だろうか。

国内商品市場でもシステム入れ替え後に石油製品等で異常値が出た際に無効措置が取られたりしたことがあったが、他方でオプション市場等では不透明なシステム売買によって付いた異常値でも付いた値が相場とばかりに先の震災時には多額の資金が市場に消えた経緯もある。結局自動とはいえ使いこなしは人知判断、個々は執行リスクを勘案して臨みたい。


規模も寄天?

さて、先週末には投資信託協会が8月の投信概況を発表している。それによれば公募投信全体での資金流入は6ヶ月連続となったものの、主力の株式投信の流入額は前月比72%減と伸びが鈍った旨が書いてあった。この辺の伸び悩みに関しては上旬にも日経紙一面にて投信残高が足踏みする一方でファンド数だけが急成長している旨が載っていたのが思い出されるが、別頁では平均残高が5年前に比べてほぼ半減とも出ていた。

また「日本にはロングセラーのファンドが少ない」とした解説図も出ていたが、2001年の資産額1位であったあの「ノムラ日本株戦略ファンド」が10年でその順位を106位まで落としていたのはやはり目が留まる。所謂日本最大の「1兆円ファンド」として鳴り物入りで登場したものだが、実に120ヶ月以上連続で資金流出という現象も日本初ではないだろうか?元は巨艦でも流出超過で規模縮小となればその分投資家には不利益が転嫁されるのは明白だが、この手は売り手にとってはひょっとしたら当初からモニュメント的な存在であったのかもしれない。

また同紙によれば投信会社がファンド1本を運用するのにかかる人件費などのコストを勘案すると、実に約8割のファンドでコストが運用成績を上回る赤字状態にあるという。また目新しさは売り易さとばかりに前述のような新ファンド増殖現象も起き、その販売経路も多岐にわたる一方で、売り手の懐を潤す販売手数料など現況あまりに差があり過ぎる体系の歪さが嫌でも感じられる。

日本に必要なのは運用実績のあるロングセラー投信だとの一文もあったが、そんな土壌になるには上記のような諸々の体質やら体系やらの浄化?が先ずは課題ではないだろうかとも思う。


その境界線

さて、今週一寸目に留まったニュースといえば一昨日の日経紙「はや耳」に「急増の二択型FX 業界が自主規制へ」のタイトルで、相場の方向感や到達水準を予想して投資する二択型FXの自主規制にFX(外国為替証拠金)取引業界が自主規制に乗り出すという記事だろうか。

一般にも極めてわかり易く小額でエントリー出来る取引だけに、同紙によれば4〜6月期の売買高は1,613億円と前年同期の11倍に急増するなどここ急速に広まった感もあったが、例のコンガチャ問題以降は既にこの二択系も規制は時間の問題と春先くらいから実しやかに噂が絶えなかったものだ。結局コンガチャに倣え(習え)ということで、やはりというか早めに手を打ってきた感が強い。

しかし、ギャンブル性が強いとはいうものの実際のところこれらの境界線は何処にあるのだろうか?よく相場予測論で期間が長くなればなるほど予測する事自体がナンセンスとの話があるが、そういった観点からはこの手が一番理にかなっているとの解釈も出来よう。射幸心という絡みではそれこそ手数料を無料にしたりするマル信の日計りもそうであるし、ワラントや果てはオプションまで取り方によっては射幸心を煽る要素は多大である。

根底に内部で刈るというような操作性の疑義が生じるものがある問題であればきつい規制は当然だが、資金流出が相次ぎ腰を据えた投資家が殆ど見当らなくそれこそ長期投資などというのが死語になりつつある昨今、投資・投機は軽薄短小化してきたのは時代の流れではないだろうか。そんなところへ規制好き?な本邦の土壌が絡み出る杭は打たれ再縮小というスパイラルな流れがパターン化しつつあるが、リクイディティの芽そのものまで摘み取ってしまうようなことの無いような采配が求められようか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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