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一先ず一歩

周知の通り先週は東京証券取引所グループが大証に対して実施したTOBが成立している。果たして買い付け上限を上回る応募があったことで撥ねられた株の還流懸念から先週のストップ安に続いて大証は本日も続落で年初来安値を更新となっていたが、何れにせよこれでまたひとつ「日本取引所グループ」への作業が進展することになった。

東証といえば先に挙げたシステムトラブルなど近年不祥事が相次いでいるが、これに限らず高速化の流れの裏では世界中でこれらに絡んだ事故も最近は多い。統合ではシステムや市場の一本化となった後に再度この手のトラブルが発生したら代替取引が利かなくなる脆さも持ち合わせることになるわけで、今後投資家を如何ほど誘致出来るかは統合メリットを生かしその技術を以ってこの辺に対する信頼をどれだけ築けるのかにかかってこよう。

またもうひとつ統合によって銀行よろしくメガ的な規模になるとはいえ、上場ベースでいえばかつての大証のウリであるデリバティブというステージで見れば、先週水曜日に触れたCMEなどからするにその時価総額は1割そこそこというところ。世界規模での再編劇では未だ未だ予測出来ない動きも水面下で進行していると思われるが、これに絡んだサプライズもまたあるや否やこの辺も併せて注目されようか。


絶てるかセール依存

街を見ると先月から続いていたある種の風物詩であるセールも秋物の登場で漸く終盤といった感じであるが、今年のそれは例年とは一寸違った風景であった。周知の通り三越伊勢丹がセールの開始時期を例年より約2週間遅らせ、東急百貨店からルミネまでこれに倣い、高島屋なんぞはセールを2段階に分ける変則形で対応した。

果たしてこの先陣を切った上記の三越伊勢丹は2.6%の減収、高島屋は2.9%の減収となるなど、大手4社が月初に発表した7月の売上高は軒並み前年割れに終る結果となり分散効果は共倒れという格好になっている。消費者行動を読み切れなかったとの指摘が相次ぎ、追随して折衷案を取ったところなどはこれに懲りて来年は先送りを止めるとしたところも出ている。

しかしセール時だけ消費が活発になる客層を考えるに、デフレが長期化したなかで近年セールの早期化や多発化の様式はこうした層の脳裏に刻み込まれ、そもそも通常価格に対する信頼などこれらの客層は既に持ち合わせていない。ホテルであれば稼働率の悪い時期に半値以下で客室を開放した時期があっても、回復期では全く同じ空間提供でもその倍の値でも予約は埋まるもので、この辺がアパレルとの違いである。

アパレル業界低迷の中でセールはまさに集客や売り上げの起爆剤になっているのは明白だが、それらを更新し続ける為に上記の早期化や多発化という後戻り出来ない環境は或る面麻薬のようなものである。そういった意味では今年はセールを抜本的に考え直すのに一石を投じたとも言われているが、麻薬を絶つ苦しみに双方耐えられるのかどうか?この辺は今後を見てみないとわからないが、家電よろしく業界の株価とも併せこの辺を見守りたいところ。


欧州デリバティブ事情

さて、既報の通り週明けには世界最大のデリバティブ取引所を運営するCME(シカゴ・マーカンタイル)グループがロンドンに欧州顧客向けのデリバティブ取引所を新設すべく英規制当局に申請した旨が報じられている。

ロンドンのデリバティブ取引所を巡っては、上記のCMEグループも取得に名乗りを上げていた昨年の香港取引所による非鉄のLME(ロンドン金属取引所)買収もあったが、このレースから離脱を余儀なくされ今回の独自路線に打って出たCMEの行動には、米国の厳しい規制を嫌う欧州金融機関に配慮した決定であることも報じられている。

ところでLMEといえば、先月末には会員の反対票が0.76%にとどまりほぼ満場一致で香港取引所との統合が承認されたが、今後は従前の相対決済や倉庫事業なども絡んでいるだけにワラント操作?等々含めた所謂ムラ社会の商習慣がこのまま踏襲されるのかどうかも一部関係者には目下のところ注目されるところ。


相次ぐ金融スキャンダル

本日はVN指数が一時5%近く急落するなどベトナム株式市場が急落となっていたが、これは同国の大手銀行アジア商業銀行の創設者である大富豪が昨日に不正な経済活動を理由に逮捕され銀行株などが大幅下落したことによるもの。

金融界で著名だった氏の逮捕で動揺が広がった格好だが、これに限らず直近では金融界の暗部が明るみに出る報が多い。周知の通りもっと大きなところで今月は英スタンチャート銀行が対イランの不正取引を過去10年近く行い、数億ドルに上る手数料を得てきた件がマネーロンダリング防止法違反との報があり、同じマネーロンダリングでは英HSBCもメキシコを舞台に関与していたとの報もあった。

斯様に立て続けにシティがクーズアップされたが、そういえばLIBOR問題のバークレイズもまたシティであった。それは兎も角も挙がったところは新興国絡みが抜きん出ており、果たしてというかリスクの代償としての旨みは大きいというのはこちらの世界でも明白で、日本でも大手証券がファイナンス情報と引き換えにいろいろ商機を見出していたのが咎められている。儲け至上主義の露呈はある別な意図があるともいわれているが、ここまで伏せられてきた物が立て続けに表面化する動きは確かに陰謀説の類が組み立て易いか。


08年再来?

さて、ここ最近紙面を賑わせているものに穀物の高騰問題がある。これに関しては先に仏と米が世界的な天候異変で穀物など食料価格が上昇している問題への対応を協議するためG20による緊急会合招集の準備に入っているが、直近では先週末の日経紙に「穀物高、じわり食卓圧迫」として食用油の値上げが浸透、飲食店向けや店頭価格も上がり始め、小麦も値上がりしそうとの旨も書いてあった。

当然近年金融商品化が著しいコモデティー市場においては先にカゴではトウモロコシも大豆も史上最高値を付けているが、食料とエネルギーという二つの顔を持つトウモロコシなどは争奪戦の様相を呈し本日の日経夕刊でも「食料か 燃料か」と物議を醸し出している。ましてやここへ最近頻繁にチラつかせる機会が多くなってきた金融緩和政策では過剰流動性の波が再度作られており、ファンドも其れなりの商機を狙っているから尚更か。

さて冒頭の件だが、足元ではデフレ化著しいなかで正直何処まで原料コストの上昇分をそのまま製品価格に転嫁出来るかどうかは未知数というところ。本日の日経紙ではレアアースもあの手この手で世界中からかき集めている旨が書いてあったが、斯様に調達先を増やし必要量の安定確保を図るのは企業側の重要課題。この辺に関しては最近穀物に強い丸紅は先に米穀物商社ガビロンの買収を決めているが、従前の総花的経営からの同社の転向は競争激化もさることながらこの辺を睨んでの展開ともいえこの後に続くメジャー群の動向もまた注目されるところ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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