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団体解禁

先週末に中国政府が中国人による日本への団体旅行を解禁している。長らく期待されてはいたものの肩透かしが続いていただけに唐突といった感じもするが、実際のところインバウンドは今年の6月まで訪日客全体数は約1070万人とコロナ禍前の7割弱まで回復してきていたものの、中国からの訪日客は2割にも満たなかったのが現状であった。

こうなると真っ先に反応するのは東京株式市場で、ザッ挙げても本命ともいえる三越、高島屋等の百貨店株や、JR各社に京成等の鉄道、JALなど航空といった交通機関から土産物菓子の寿スピリッツ、中小型モノでは免税店のラオックス、インバウンド向け旅行会社のハナツアー、ABホテルの物色にシーツ・タオルの白洋舎も連動高するなどインバウンド関連株が軒並み高となっていた。

これらの物色熱は週明けも続き本日の日経平均は日米金利の上昇を嫌気し400円超の急反落となったものの、上記の銘柄群はほとんどが年初来高値を更新するなど逆行高が目立っていた。大手証券系シンクタンクではこの度の団体旅行解禁で今年の訪日客全体の消費額は約2000億円押し上げられるという試算もある。

今年の6月までの訪日客の消費額は観光庁発表では約2兆2千億円となっているが、弱保ち合いが続く円安の効果は大きく訪日客の購買力は更に増しているといえようか。とはいえ受け入れ態勢の整備などオーバーツーリズムへの課題は残るが、政府が目標としている5兆円という数字が夢物語で無く視野に入って来るのかどうか今後もこの辺に注目してゆきたい。


バービー炎上

今週は原爆が投下されてから78年となる広島と長崎で平和祈念式典が開かれ、広島では首相をはじめ過去最多となる111か国の代表などが参列した。ところでこの原爆に絡んで直近で物議を醸し出しているのが、夏休みが始まった頃に全米などで公開された映画「Barbie」で、この米国の公式アカウントが原爆投下を想起させる画像に好意的反応を示した事が批判を呼んでいるというもの。

同作品は既に先月末時点で世界の興行収入は既に約1100億円に達するなど記録的ヒットとなっており、時を同じくして公開されている原爆の父とされる米物理学者の伝記映画と絡めバーベンハイマーなる造語と共にバービーと原爆を合成した投稿が相次いでいたものだが、よりによってこの「原爆の日」を控えた時期になんともタイミングが悪かった。

このBarbieだがもう一つ、この原爆問題以前に映画に登場する地図の中で中国が主張している九段線が描かれていたということでこれもまた物議を醸し出した経緯がある。折しも中国とベトナムが領有権を争っている最中ということもあり、ベトナム国内ではこの映画が上映禁止にまでなっている。

穿った見方をするなら業界にとって旨味のある市場である中国に忖度しているというシナリオも考えられなくもないが、それにしてもそれぞれの地域のセンシティブな問題について製作側の意識の低さは否めない。逆に中国がこのベトナム側の扱いだったらどうなっていただろう?おそらく蜂の巣をつついたような騒ぎになることは想像に難くないが、いずれにせよ日本公開前に水を差した格好になってしまったのは残念である。


中古車投機

中古車販売のビッグモーターの不祥事が連日世間を騒がせているが、中古車といえば先週末の日経紙夕刊・親子スクールでは「国産中古車が海外で高値?」と題し、海外で90年代に日本の走り屋などの間で人気を博したスポーツカーがオークション等において非常に高価格で落札されるケースが出ている旨の記事があった。

海外で注目されるようになったのは言わずもがな映画「ワイルド・スピード」の影響だろうが、併せてキーワードのところでも取り上げてある製造後25年が経過したモノはクラシックカー扱いで輸入車安全的合法の安全基準から除外される所謂25年ルールも流通に寄与しているか。こうした海外人気が国内需給の品薄を招きこれが更なる高値を招くスパイラルが起きている。

同頁では中古のスカイラインGT-R価格の暴騰するチャートが載っていたが、かつて私も知人から維持に疲れた同車種の売却を持ち掛けられた事があったのを思い出す。既に15万近く走っていたこともあり全く食指が動かなかったが、驚くことに今やこの程度でも500万前後の値が付いており当時提示された値からは実に約10倍に大化けしているから凄い。

こうなるとまるで昨今のウイスキー投機のような話だが、円安の影響で更に海外からは買い易い環境にある事で物色意欲は衰えないか。そういえば直近でもトヨタが新型のランクルのお披露目をやっていたが、この車種も人気モデルは中古市場で新車の約1.5倍の値が付いているという。販売店では転売防止で購入後直ぐの売却をしない旨の誓約書を書かせるケースも出ており、これはメルセデスでもよく聞く話だ。オルタナティブの幅もここ数年で随分と広がってきたとつくづく。


BaaS

週末に米アップルが2023年4~6月期決算を発表している。アイフォーンの販売伸び悩みが懸念されていたものの、アプリ販売等のサービスの売上高拡大がカバーし売上高と一株利益共に市場予想を上回る事となった。ところでこのアップルといえば4月に始めた預金サービスの残高が100億ドルを超えたとも発表している。

このアップル預金については当欄でも5月に一度触れているが、同社は口座提供と管理を米ゴールドマン・サックスが担っており、預金利回りが全米の預金口座の平均の10倍以上となっていることに加え、アップルカードで買い物などをした際に付与されるキャッシュバックが口座に自動入金され残高に対する利息が受け取れるなど貯蓄習慣を簡単に確立・継続する事が出来るのも魅力となっている。

こうした異業種のサービスを既存の金融サービスと連携出来る新たな金融プラットフォームとして注目されているBaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)だが、今年の春先に米銀破綻という悪地合いの中で東証スタンダードに上場した住信SBIネット銀行など公開価格を上回る初値となったのも同事業が評価されてのものと指摘する向きもある。

銀行やライセンスを持った事業者がキャッシュレス決済をはじめ後払いや送金などの仕組みを他の事業者に貸す事で内製化の動きという流れが顕著化すると想定した場合、同事業の市場規模は非常に広いといえ今後銀行もこうした部分での在り方が求められる場面ではその領域で先行している向きが或る意味アドバンテージになるか。


祭りと商機

コロナ禍を経て先月は日本三大祭りの一つ、京都の祇園祭が4年ぶりに通常開催となり約15万人が訪れたが、昨日からは東北最大の青森のねぶた祭がこちらも通常開催されている。こちらも4年ぶりに制限のない通常開催となったことで感慨もひとしおというものだが、今年はインバウンド含めた富裕層を対象にしたサービスが全国の夏祭りに広がっている。

上記の祇園祭の最大の見せ場となる山鉾巡行では今年初めての試みで、一席40万円のプレミアム観覧席が販売された。山鉾巡行についての音声案内ガイドが用意され、京都名物の「おばんざい」をつまみに京都で作られたワインや日本酒を飲みながら祭りを楽しめるというものだが、販売開始と共に8割近くがインバウンド客に売れ体験した向きはいずれも満足そうであった。

この青森ねぶた祭でも昨年1日2組限定で導入した100万円のVIP席を今年は1日6組、開催5日間で30組まで増やしたがこちらも開始早々半数の予約が埋まったという。こうした動きを見て今月12日から始まる徳島の阿波踊りでも1人20万円のプレミアム桟敷席を20席導入、2階のソファー席で徳島産素材を使った食事を堪能しながら演舞の解説を聞いたり踊りの体験も出来るという。

先に2023年1月~6月の訪日外国人客数がコロナ前の64.4%までに戻った旨が報じられていたが、某生保系シンクタンクが報じているところではコロナ禍前の2019年1-3月と今年の同期では宿泊日数が4日以上伸び、消費額も約9割が回復しているとういう。内訳では買い物代が減少する一方で上記の祭り含む鑑賞モノなど娯楽・サービスが2倍以上に膨らんでいるという。インバウンド消費もモノからコト消費へと変化するなかで、高単価の企画等ここに商機を見出す動きは今後も加速してゆきそうだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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