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政策の限界

先週末の国内債券市場では長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが上昇し、一時0.505%と日銀が現在の金融政策で上限としている0.5%を上回った。前回この上限を超えた先月22日以来のことで次期総裁候補が所信聴取で発言してから初めての事である。海外金利の上昇圧力が波及したほか、総務省発表の東京都区部の2月消費者物価指数の総合指数が市場予想を上回った事などが背景。

斯様に依然として物価上昇を抑制するために日銀が緩和修正に踏み切るとの思惑が根強く金利上昇の圧力は衰えないが、残存8~9年の利回りが指標の10年債利回りを上回るという歪みが続く市場では今の経済実態に照らすと長期金利上限は1%くらいが適切ではないかとの試算もあり0.5%では低すぎるという思惑先行から更なる歪みが生じてしまっている構図。

斯様な歪みから国債を基準に金利が決まる社債市場などいろいろなところに悪影響が及んでおり、新総裁が先ず着手するのは変動幅拡大含めたYCCの改革ではとの思惑が喧しいが、国債を買い占めたり共担オペにより本来は市場が決めるべき金利を人為的な需給調整で封じ込めている不自然な政策自体がもう限界にきておりその大義が失われてきているのは間違いのないところだろう。


トレンド反転の解は

さて、厚生労働省が先週に発表した去年1年間の出生率速報値は前年比で約4万3000人減少の79万9728人と7年連続で減少し、この統計開始以来初めて80万人を切ることとなった。ちなみに国立社会保障・人口問題研究所の推計では出生数が79万人台になるのは2033年と予測されており、実際は想定よりも11年早く少子化が進んだということになる。

これらを受け首相は少子化のトレンドを反転させるため金銭的な支援に重点を置いて今の社会に求められる政策を進めてゆくことが重要と発言していたが、先月BIGLOBEが行った子育てに対するZ世代の意識調査では結婚もしたくないし子供も欲しくないが36.1%、結婚はしたいが子供は欲しくないが9.6%と実に45.7%が子供は欲しくないと回答しておりその理由は金銭面以外が42.1%と半数近くに及んでいる。

その内訳として多かったのが育てる自信がない・子どもが好きではない・子どもが苦手・自分の時間を制約されたくない等などなかなかショッキングな内容だ。金銭的な問題が最大の理由ではなくなってきているというのを、金銭的支援に重点を置いて進めている政府・与党はこの政策に対し世論が付いてきているワケではないのを今一度認識すべきか。

以前には内閣府が公表した男女共同参画白書などで結婚や恋愛に対する新たな価値観やら若年層の消極化云々を背景に少子化が進んでいるような話があったが、厚生省が1980年代に行った調査でも20代のおよそ7割が配偶者や恋人がいないという結果だったという。そこから何が見えるのかといえばこの数十年間やってきた少子化対策がほとんど効果が無かったということだろう。はたしてこの難問の解が見つかる日は来るのか?喫緊の課題だ。


PBRにもメス

さて、最近は日本のバリュー株のパフォーマンスが欧米を引き離すなど一人気を吐いている旨が話題になっている。バリュー株といえば当欄では今から4年ほど前にバリュー株は受難の時代でPBR格差は過去15年で最大を記録した旨を書いた事があったが、昨年末段階でも東証プライム上場企業1837社のうち実に50%にあたる922社のPBRが1倍を割っている状況であった。

この辺に目を付けられ近年では東証がアクティビストの格好の獲物?になってきたワケだが、ここ数年行われてきたTOBやMBOの中にはその価格がPBR1倍を切っているというモノも少なくなかっただけにさもありなんという感じだ。上記の通りPBR1倍割れが半分を占めているワケだが、このうち更にこの半分0.5倍未満が15%もあるというから東証も危機感からこれに改善要請のメスを入れるというのも頷ける。

万年低PBRからの離脱の鍵の一つとなるのはROEを上げてゆくことにほかならないが、このROEもアベノミクス時代に欧米と比較するに著しくその低さがいわれ改善努力が叫ばれた時期があったのを思い出すが、これを上げるべく流行った自社株買いも当時はリキャップCBなどを使った見せかけの実績も目立ったものだ。

そういえばプライム市場基準を満たさない「経過措置企業」の中でも上場維持基準適合に向けた計画書の内容を着実に実行している企業の株価上昇が顕著になった時期があったが、斯様にこの手の改善要請の類が出る度にそれらは期待感から物色の矛先が向けられるもので、今の低PBR物色もそれとダブって見えなくもないが小手先の改善策でなく本質的なものに踏み込む施策が望まれるところ。


弥生の値上げ

本日から3月入り、今月は先月より値上げ食品の品目は下がるとはいえ値上げラッシュは止まらず、帝国データバンクによれば前年同月比では約2倍近い数の3442品目にのぼる。去年より数十年ぶりに値上げする商品が続出しているが、ここまで33年にわたって価格を据え置いていたミツカンの味ポンも本日出荷分からとうとう値上げとなる。

3月の値上げで最も多い食品分野はニッスイや伊藤ハムが値上げするちくわやかまぼこ、ニップンや日清食品冷凍が値上げする冷凍食品などの加工食品で単月全体の半分を占める。次いで多いのが菓子で、ロッテの雪見だいふくや森永乳業や森永製菓のピノやチョコモナカジャンボなどアイス系など中心に菓子における値上げ品目数は単月としては最多を更新する。

来月は来月で牛乳やバター、ヨーグルトなど乳製品の一斉の値上げが予定されている。飼料高等で生乳取引価格が上昇しているのが背景だが、生乳といえば需要低迷が長期化しその裏では日々廃棄処分を強いられている向きもあるなど何とも複雑な構図だ。こちらは国の早急な支援が望まれるが、いずれにしろ輸入小麦の価格改定も控えているだけにこの辺の動向にも注視しておきたい。


相場連動な盗難

さて、2年前に当欄では二宮金次郎ゆかりの地である栃木県で設置してある同氏の銅像が盗難被害に遭った件を取り上げた事があったが、先週末に再び同県でこの銅製の二宮金次郎像が盗難被害に遭っていることが報じられている。何とも罰当たりな件だが、同氏ゆかりの地ということで同市では学校など27か所も銅像が設置してありこれが狙われた格好。

目的はほぼほぼ換金狙いだろうが、一昨年はちょうどLME(ロンドン金属取引所)で銅相場が1万ドルの大台を超え、スクイズを背景に現物と先物の逆鞘幅が過去最大規模に拡大していた最中の出来事であったが、年初から先物市場の価格は堅調で今月アタマでは買い建て玉から売り建玉を引いた買い越し規模が9か月半ぶりの規模になっている。

また銅に限らずアルミなども7か月ふりの買い越し規模で非鉄市場の堅調が目立つ。そんなワケでと銅の1月国内取引基準価格はJX金属によれば1トン当たり約123万円となっており、前回盗難に遭った2021年の相場が約87万円であったから当時より4割以上も値位置を切り上げていることになる。

PGM系の価格高騰でコンバーター狙いの自動車盗難が増加した事件も過去にあったが、米欧の金融引き締めによる景気悪化懸念が薄れたほか、中国のゼロコロナ政策の事実上の解除による経済回復期待を背景にマーケットには投機マネーが流入し易くなっているだけに、こうした相場連動型の盗難もまたぞろ活発化する懸念がある。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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