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ほろ苦い缶珈琲

GWも終わり本格始動といったところだが、今月の食品値上げは主要食品メーカー195社で824品目を値上げする予定である。前年同月の3倍となる水準ながら、メーカー各社はゴールデンウイーク前後のかき入れ時の値上げを避ける動きに走った事で4か月ぶりに1000品目の大台を下回ることとなった。

今月はコーヒー豆や砂糖の値上がりを背景に缶コーヒーが目立っており、サントリー食品インターナショナルは主力のボスをメーカー希望小売価格115円から140円に引き上げ、同じくキリンビバレッジはファイアを125円から152円に、アサヒ飲料もワンダを124円から151円に引き上げるほかポッカやダイドードリンコも然りでこれら値上げは25年ぶりのことである。

冒頭の通り今月の品目数は一服となったが、6月以降は5500品目以上の値上げが既に決まっており日経紙調査ではコスト上昇分の価格転嫁の割合は5割未満が半数に上っている事などから、少なくとも秋までは断続的な値上げが続くとみている。また先の輸入小麦の政府売り渡し価格が22年4月~23年3月に比べ平均5.8%上昇しているが、今後はこの小麦粉の価格上昇がパンや菓子などの値上げにつながるかが焦点となるか。


米銀預金獲得競争

さて、予てよりその突出した預金流出から次はココではないか?と噂されていた米地銀ファースト・リパブリック・バンクがやはりというか経営破綻となった。これで先のシリコンバレーバンクが破綻して以降、このおよそ2か月足らずではや3つの中堅銀行が破綻に追い込まれたことになる。週明けのマーケットが開く前にJPモルガンによる救済とギリギリの決着となったが、この一連のスピード決着の流れは先のクレディスイス救済の時の週末を彷彿させる。

これら以外の銀行も戦々恐々だろうが、これまで預金の流出が軽微にとどまっている銀行でも先の決算では軒並み今後の業績を下方修正しているところが多い。この背景には今やMMFでも遜色ない金利が得られるようになったことで、SVB破綻以降は銀行よりも安全で安心なMMFが恰好の受け皿となっており、預金を繋ぎ止める為に金利を従来の想定予想以上に引き上げたことがある。

加えて直近ではアップルが先月から預金サービスを開始しているが、業界を騒がせたのはその預金利率で変動制とはいえ当初の利回りは全米の貯蓄口座の平均の10倍以上に相当する年4.15%。全米で1億人を上回るアイフォーン利用者をフィンテック分野強化で狙い囲い込む作戦だが、早速開始後4日間で10億ドル近くの預け入れがあったそうで中小銀行勢にとっては泣きっ面に蜂ともいえる状況だろう。

この二重苦、三重苦の状況のなかこの流れが今後も続いてしまうか否かだが、今回救済に動いたJPモルガンのCEOは中堅銀行の経営不安は終わりが近づいているとの認識を示しているものの、今後は資本規制強化に備えリスクアセットを縮小する動きが出る可能性から貸し渋りの顕在化も懸念される。株価の下落に身売りが報じられる銀行も出てくる視界不良のなか今後も暫くは中小銀行の憂鬱は続きそうだ。


業界再編第二弾

さて、先週の東証プライム市場での値上がりランキングトップとなり目を惹いたのはスーパーのいなげやであった。比例配分でのストップ高を交え一時は2,000円の大台変りを示現する急騰を演じたが、これは周知の通りイオンが同社を連結子会社化するとの発表から子会社化に向けイオンによるTOB実施も想定されTOBプレミアムへの期待が先行する格好になったことが背景にある。

しかしいなげや株の急騰を見るに思い出されるのはかつてバブル期に秀和が流通再編を唱え仕手戦さながらにいなげや株を20%超まで買い進んだ事件か。あの時はいなげやと共に忠実屋の買い占めも行われていたが、両社は相互の株式発行で抵抗し不動産融資総量規制も直撃し結局はこの仕手戦?に提灯を付けた一部投機家だけが儲かり同社が描いた再編劇の青写真は未達に終わった経緯がある。

結局この時の株がイオンに流れたワケだが、このイオンによるスーパー再編の動きは今から10年近く前にもあり当時も当事者のマルエツやカスミの株式が物色され急動意となったものだった。今や株式市場から両社の名前は消えたが、上記の秀和事件で助け舟を出して収拾したダイエーも今やイオン傘下に収まり市場からはその名前は消えている。

コロナ禍を経て巣ごもり需要の反動や物価高騰による買い控えを背景に足元厳しく、来るデジタルシフト化も睨み効率化待ったなしの業界再編第2弾といったところだが、上記と並行し買い占めの憂き目に遭った百貨店もその後再編が進んだ。いなげやも経営統合となれば市場からその名前が消えるはこびとなるが、そうなるとこれまでの再編劇において市場で戦った面子はイオン以外全て株式市場から名が消えるなんとも諸行無常な感だが今後も流通業界の合従連衡の波は続くか。


明暗のGW

さて、GW目前だが今年の場合は新型コロナの制限が緩和されたことにより自宅で過ごす向きが減少し、旅行などいわゆる外向きな動きが復調するGWになりそうだ。そうした事で調査会社インテージによればGWにかける予算は一昨年の15,908円、去年の16,407円に対し今年は27870円と去年に比べて約1.7倍と大幅にアップしている。

この恩恵を受け特に復調を見せそうなのが旅行業界で、JTBによれば今年のGWの国内・海外合計旅行者数はのべ2470万人と新型コロナの影響が出る前の19年比で1%減水準まで回復、円安の影響を受けない国内は特に好調で19年比2%増と過去最多を見込むという。先週発表した国内航空11社のGWの国内線予約合計も245万人と前年同期比で23%増となっている。

円安や燃料高の影響で海外旅行、国際線は低調だがその逆でインバウンドは急回復、訪日外国人旅行者数は今年3月で181万人と前月比で約23%増加、今やコロナ前の7割くらいまで戻ってきている。GWのホテルもラグジュアリー中心に満室が目立つが、需給逼迫で客室単価も首都圏で約5割上昇し更には外国人向けにプレミアムルームを設け更なる書き入れを狙う施設も増えている。

そういった事でGWの市場規模は全体で2兆7114億円になると試算されているが、そんな裏でこの復調に対し一部受け入れ側はコロナ禍で従業員を削減した傷が癒えず人手不足問題のジレンマに陥っている向きも少なくない。ホテルなどこうしたところは稼働率の限界を単価でカバーする動きも出ないとは限らずまだ料金も上がって行きそうな雲行きだが、いずれにせ連休明けには新型コロナは5類に移行し復調も一層顕著になってくることでこの辺が課題として残るか。


新体制下の初会合

さて、植田新総裁になって初めての日銀金融政策決定会合が明日から行われるが、やはり最大の関心事はYCC(イールドカーブ・コントロール)なる長短金利操作の修正がいつ為されるかだろう。新総裁は就任直後の記者会見で、「現状の経済物価金融情勢を鑑みると現行のYCCを継続することが適当。」と述べていたもののマーケットのさがで何らかの動きを期待するフシもある。

一部の外資系銀行ではドル円への影響を仮に4月にYCCの10年債のレンジを0.5%から上限1%に拡大した場合は約5%の円高、長期金利の操作対象年月を5年から7年に変更した場合は約6%の円高、YCCを撤廃した場合は約9%の円高に振れると試算している。ただ今回はGW直前なだけにマーケットの混乱等を避ける意味でも現行継続は適切との発言を撤回してまで決行するような可能性はさすがに低いか。

ましてや欧米での金融システム不安や、先の日銀短観で大企業製造業景況感が5期連続で悪化している事などもあり何らかの動きがある可能性としては6月という向きが多い。しかし米の実体経済の悪化、リセッション入りの足音も聞こえはじめているだけに金融政策の正常化への舵を切るタイミングもなかなか難しいところではあるが、ともあれ目先は明日からの初会合に大注目としたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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