86ページ目

商慣習に変化

昨日の日経紙一面には「政策保有株売却2.3兆円」と題し、2022年3月期の政策保有株の売却額は前の期より約6000億円多い2兆3000億円となり開示が始まったここ4年間で最大となるなど上場企業の持ち合い株の解消が進んでいる旨が出ていた。東証再編前に当欄では上場基準も睨んで政策保有株の売却要請も進むと思われると書いていたが、果たしてこれらが後押しした格好となったか。

ちょうど昨年の今頃には政策保有株の減少が著しい三菱商事を取り上げた際に、これまであまり見られなかったAGCやキリンなど金曜会メンバーの株売却が目に付いた旨を書いていたが、三菱グループの中核とされる三菱グループの御三家の一角の三菱重工も三菱グループ中心に政策保有株を減らしている旨が同紙に書かれていた。

また政策保有株として多くの企業に持たれている割合が高いことで有名?なリクルートホールディングスも保有比率の高かった企業が手放す動きが継続している。ともあれ特異な商慣習ともいわれた持ち合いの動きは今なおあるものの、昨日も取り上げた東証再編における流通株式の基準変更等にも盛り込まれている通り持ち合いの合理性が問われるなか投資家目線の経営改革は粛々と推進されようか。


横一列のパフォーマンス

週明けの日経平均はFRBが積極的な金融引き締めを継続するとの警戒感から反落スタートとなったが、東証が市場再編を4月からはや半年が経過している。上場基準を満たさぬままに経過措置として新市場に上場した549社の所謂暫定組のその後は約1割が企業価値向上の取り組みを進め基準超えとなったものの、暫定組全体では約6割が時価総額を減らしている旨が先の日経紙に書かれていた。

この暫定組、当初より経過措置の期限を決めておらず関係者からは旧一部との違いも見いだせないとの声が多く挙がっていたが、その株価の方も勢いを欠き毎日日経紙に掲載されているプライム市場指数もスタンダード市場指数等と共に再編直前の4月1日を基準日とした1000に絡んで一進一退の推移と冴えない。

ところで株価指数といえばTOPIXも算出方法を見直し、プライム市場の205社とスタンダード市場の288社の計493社の構成比率を引き下げると先に東証が発表している。但しこちらの方も、23年10月の再評価で基準をクリアすれば同指数への採用を継続するという事になっておりこれまた猶予が与えられている。

TOPIXもまた上記のプライム市場指数等と比較するに殆ど変らぬパフォーマンスとなっており、TOPIX100とかROEで選りすぐったJPX400然りでこちらもここ10年間でパフォーマンスにほぼ差異は無くどれも団栗の背比べ状態。指数構成の椅子に座り続ける企業努力も大切だが、MSCIのような市場代表性を備えた真に使える指数への道はまだまだ遠いか。


依存体質

本日の日経紙金融経済面には全銀協が115行を対象に仕組み債等に絡む実態調査を開始した旨が出ていたが、デリバティブを駆使し国債や社債より高い利回りが出るよう設計した金融商品の所謂この仕組み債、既に三井住友銀行は販売を停止し楽天証券も先月末で全ての仕組み債の取り扱いを停止、更に今月から横浜銀行や京都銀行など6地銀・グループも仕組み債の個人販売を全面的に停止している。

この背景には先に金融庁が2022事務年度の重点施策をまとめた金融行政方針を発表しているが、ここで仕組み債が名指しされ販売する金融機関にその販売状況をヒアリングする旨の明記があった点などがあるようだ。証券子会社などを持つ地銀グループの販売構成を調べると実に約4分の1にあたる23%が仕組み債であったという。

仕組み債といえば10年以上も前からリーマン・ショック等の相場急変が起こる度に有名私大や地方自治体の損失などその都度問題が表面化してきた商品で、その変動の激しさ故に関西の某地方自治体など相場急変による値洗い損の拡大で訴訟を起こしたものの、アベノミクスの波で値洗いが一気に改善し訴訟が取り下げられたというヤレヤレな話もあったのを思い出す。

いずれにしろ直近では野村や大和など大手証券まで足並みが揃った感のあるこの度の動きで、喉元過ぎればでこうした金融商品に依存してきた向きには死活問題というところも出て来よう。ただ金融庁としても「貯蓄から投資」が喧伝されるなか、こうした流れが削がれるような金融商品の問題はマズイというのは想像に難くなくそういった意味でも今回の本気度が窺える。


争奪戦3年

さて、先月は三つ巴、いや四つ巴となったオイシックスによるシダックスへのTOBを取り上げたが、本日の日経紙社説には「企業は敵対的買収から逃げず価値向上を」と題し相手企業の取締役会から賛成を得ないままTOBを始める敵対的買収が経営戦略の一つとして定着してきた旨の記事が書かれていた。

この辺に絡んでは直近では先月末に文具メーカーのぺんてるに敵対的買収を仕掛けた東証プライム上場のコクヨが、買収方針を取り下げて保有するぺんてる株の全株を同業のプラスに売却する旨が報じられている。当欄で「文具争奪戦」と題しこのTOBを取り上げたのが3年前、最終的にホワイトナイトと一緒になる格好で治まったようだ。

こんな買収劇の伏線だったワケではないだろうが、敵対的買収が報じられる数カ月前の某バラエティー番組ではコクヨにぺんてる、それにプラスの社員が集まり各社其々の自慢の商品を持ち寄り随所でぺんてるの海外網を羨ましがる光景が繰り広げられていた。その辺は兎も角も、この度の決着で縮小傾向にある国内文具市場の構図がまた変わりゆくか否か引き続き注目しておきたい。


内外経済効果

周知の通り、政府は本日より旅行代金を一部補助する観光需要喚起策である全国旅行支援をスタートさせた。東京が少し遅れてスタートするため46道府県がスタートし12月下旬までとするが、具体的な日付は各都道府県の判断に委ねる模様。前回のGoToトラベルは緊急事態宣言で腰を折られた格好になったが、コロナ禍で打撃を受けた経済の再生へ起爆剤としたい考えだ。

早くも予算上限に達し受付を終了した自治体も出始めたこの旅行支援だが、GoToトラベル以来、約1年10か月ぶりとなる。1人あたり2万円の割引が出来た2年前のGoToトラベルと比較するに今回は1泊最大1万円一寸と数字では見劣り感がするも、高額な宿泊施設に人気が集中する傾向にあった前回から今回は割りを食ってしまったリーズナブルな宿への経済効果にも繋がるか。

大和総研ではこの全国旅行支援の経済効果に関して波及効果と合せ約8300億円と試算しているがもう一つ、水際対策の方でも本日より日本への入国者数上限が撤廃されている。ツアーに限って来た観光が個人旅行も解禁となり、元々ビザが免除されていた国からの短期滞在者のビザ取得も不要となるなど日本への渡航条件が大幅に緩和されることとなる。

G7並みに水際対策を緩和すると首相がロンドンで講演したのが5月、漸く開国の運びとなった感だが首相はインバウンド消費について年間5兆円を目指す考えを示している。中国勢のゼロコロナの影響が不透明だが、インバウンドの回復が仮に5割程度になるとしても全国旅行支援と合せて約4兆円程度との試算があるだけになかなかの目標ともいえるが、何れにせよここは円安のメリットを引き出す商機を最大限に生かしたいものである。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2025

1

1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31