二季化

さて、2005年のクールビズの導入から20年が経過したが2005年の開始当初は6~9月だった期間は2011年に5~10月に、2021年以降は指定が無くなるなど気候変動に合せてその期間も変化している。その気候だが気象庁は先月の平均気温が平年より2.34度高く、統計を開始した1898年以降で最も高かった2020年の1.43度を上回って歴代1位の高温であったと発表している。

7月に入ったが、ここから9月にかけても高温傾向が予測され年間真夏日の日数100日時代の到来も囁かれており、「暑さ対策」にかける費用もインテージ調べでは今年は前年比9%ほどの増加という。気温が暑さを増し35度までは消費が増加するものの、これを超えると外出控えなどから減少傾向になる「35度の法則」も有名だが、さて今年はどの程度消費に影響が出るであろうか。

斯様な気候の影響を特に受け易いアパレル業界などは長期化した夏の売れ筋が変化し、秋も短くなり冬も遅くなってきている事で季節衣料がこれまでに増して振るわなくなっているという。各社の戦略では各々で夏を(初夏・盛夏)と(猛暑)に分けて定義したり、1年を二季として定義し長い夏の中での商品構成を細分化して見直す方向という。長期化した夏を背景にライフスタイルにも各所で変化の兆候が表れつつある。


株主総会2025

今年の株主総会も先週にはピークを迎えたが、先週は特にフジHDや日産、大日本印刷などアクティビストが大株主となっている注目企業の総会が多く開催された。度々各紙でも報じられているが今年はアクティビストによる株主提案を付議された企業は52社と2年連続で過去最高を更新、また議案数も137議案とこちらは3年ぶりに過去最高を更新している。

さてその内容だが、注目されているところでは昨日に開催された冒頭のフジHDは米ダルトン・インベストメンツから12人の取締役の選任案を提出されており、先週開催された太陽HDに対しては香港のオアシスマ・ネジメントが社長を含む取締役2人の解任が提案されていた。フジHDの方は提案された新取締役候補12人が否決されたが、太陽HDの方は総会では異例の事態となる社長の再任案が否決される一幕があった。

ここ数年見ていると主要どころへの株主提案のテーマは昨年や一昨年など増配や自社株買いなど株主還元の類が全体の半数を占めていたものであったが、今年は上記の2社や直近のマネックス・アクティビスト・ファンドが出した大日本印刷への株主提案もそうであったように取締役選任案などどちらかというとガバナンス関連の議案比率が高まっているようにも感じる。

昨年は複数のアクティビストから圧力?を受け、首をかしげるほどの大幅増配を発表し急騰した企業の株を新取締役まで送り込む事に成功したアクティビストがきれいに売り抜けたケースも見られたが、そう考えると今年のそれは短期目線というよりもより中長期目線で成長戦略の具体化など経営力向上を意識した提案割合の高まりを感じる株主総会であった。


“売り”から“買い”傾向に

さて、先週は東証プライム市場に上場している化粧品サイト運営会社「アイスタイル」の業務資本提携を巡るインサイダー取引をしたとして、コンサルタント業の男が東京地検特捜部に金融商品取引法違反容疑で逮捕された報があった。この手の事件といえば昨年は胴元の東証社員や、金融庁に出向中の裁判官まで同容疑で挙げられるという前代未聞の事件が記憶に新しいところ。

ところでこのインサイダー取引といえば、金融庁はTOBを巡るインサイダー取引事件の増加を受け違反した場合の課徴金に関し不正に得た利益に一定の係数を掛け合わせるなどで欧米の水準に近づけるなどこれを17年ぶりに見直す旨が先週の日経紙一面でも報じられている。この辺に関しては2007年ごろの当欄では課徴金を払ってなお利益が手元に残る“やり得”状態と書いていたがあれから20年近く、漸く“やり損”の構図となるか。

しかしインサイダーといえばひと昔前は証券取引等監視委員会も手薄で、その手の情報伝播も今よりはるかに緩かったものだ。それこそ兜町界隈の一部OLクラスでも何故か筒抜けだったこともあったし、夜に舞台を移せば同伴やアフターの場でその手の情報が飛び交っていた光景を思い出す。そう考えると今は末端より川上に近い向きが手を染め摘発されてしまうケースが多くなったと感じる。

もう一つ、日経紙では昨今の東証による資本効率改善要求などを背景にTOB案件に乗る“買い”の事例が多く挙げられるが、ひと昔前のインサイダー取引といえば買いよりも巨額増資や企業破綻などに乗る“売り”目線のインサイダー取引が横行していた感がある。なので確信犯のカラ売りが嵩み逆日歩も超高額になり後半に乗った連中は破綻しても持ち出しになってしまう笑えない事例もあったものだ。まあそう考えるとこうした禁断の“買い”案件の増加も時代を感じざるを得ない。


初の70万人割れ

週明けには団塊の世代が後期高齢者になると共に想定されるであろう現役世代の負担への懸念を取り上げたが、高齢化と合せて深刻なのが少子化か。先に発表された「人口動態統計」によれば、昨年の出生数は前年比5.7%減となり統計のある1899年以来初めて70万人割れとなった旨が報じられていたが、加えて自然減も減少幅が拡大し過去最多となるなど想定を上回る人口減少となっている。

コロナ禍で出会いの機会が減ったとかそもそも若年層の結婚観が変化し意欲低下がいわれているとか所説あるが、一部婚活会社の調査では結婚したくない又は関心が無い割合が適齢期の男女共に4割を超えてきているのを見るに少なくとも一昔前とは隔世の感がある。また、そもそも適齢期となる人口の層そのものが失われつつある人口縮小フェーズに日本は既に入ってしまっている構図もある。

斯様な少子化でインフラに歪も表れつつあり、先のTVのバラエティー番組で学校を舞台にした企画モノをたまたま見たが、番組中にテロップで「少子化等の理由で統廃合する学校は全国で300校を超える・・」と出ていたのが印象的だった。こうした足元の生活インフラへの影響はもとより更に長期で見れば生産性への影響や年金の問題にもつながって来るが、今後の社会的配分を考えるに国全体での広範な支援など喫緊の課題となるか。


コモディティ明暗

懸念された中東情勢だが、朝方にトランプ米大統領が「イスラエルとイランが停戦で合意した」とSNSに投稿したことでマーケットも各々反応している。148円台まで軟化していたドル円は一転して144円台まで急伸、日経平均も一時600円を超える上げ幅を演じ39000円台まで指呼の間となる場面もあった。またコモディティは原油が停戦合意に先駆け約14%も下落していたが、金もNYで2週間ぶりの安値を付け国内先物も2%以上の下落を演じた。

ところでこの金といえば3000ドル大台突破後にいち早く3500ドルシナリオを出していたのはマッコーリーであったがドンピシャの予測であった。先週にはシティグループも金価格に関するリポートを出していたが、2025年第3四半期は3100~3500ドルで推移するものの、米中間選挙を控えるタイミングで経済政策強化がなされ米と世界全体の成長見通しから市場はリスクオンに傾き、26年下半期までに2500~2700ドル台まで下落するとしている。

足元で金は目先のポジション巻き戻しから一服したとはいえ年初からまだ2割以上高い水準にある点で原油との違いは鮮明だが、この辺はやはりドル離れなどを背景にした各国中銀の旺盛な買いによるところが大きいだろうか。WGCによれば各国中銀は昨年まで3年連続で年間合計1000トンを上回る金を購入しており、今年も歴史的な高値圏で推移した1-3月期でも過去5年間の四半期平均を24%上回る規模の買いがあったという。

とりわけ近年は更に米国とバチバチ?な関係でその依存度を引き下げてきている中国の買いが安定しており先月は約1.9トン購入しているが、これで金の買い越しは7か月連続となっている。外貨準備に占める金の比率は既に3年で2倍にもなってきているが、他の新興国も其々余力はあるとみられこの辺は今後も相場にとってのサポートとなり続けるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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