基準地価2026

先週はこの時期恒例で国土交通省から2026年の基準地価が公表されている。大型再開発やインバウンドの増加などにより住宅地、商業地、全用途共に上昇していずれも5年連続での上昇となっていたが、全体をけん引したのは三大都市圏で全国最高地価地点は不動の21年連続トップで明治屋銀座ビルの1平方メートル当たり5250万円、一昨年の4210万から実に1000万円以上も上昇している。

この東京だが商業地地価の平均は1平方メートルあたり平均がピークのバブル期1993年以来、33年ぶりの高水準になっているという。コロナ禍後の出社回帰などを背景に旺盛なオフィス需要から需給バランスが取れた適正な空室率の目安である5%を下回り、日経紙では都心の5区では大規模オフィスの平均空室率は6月末時点で0.8%と出ていた。

今後の5年間の供給ペースは低水準で空室率の低下基調は27年まで続き、これにより受給バランスは一層逼迫しオフィス賃料相場の上昇は続くとも書かれていたが、それにしてはREITの弱さが際立っている。東証REIT指数は年初来で13%安に沈みREITのNAV倍率(株式でいうところのPBR)に至っては上昇している全銘柄が1倍未満の水準に甘んじている。

もっとも足元での金利上昇傾向を背景に利益成長の側面から上記の低迷は致し方なく、高品質オフィスの利回りは2%台半ばぐらいになってきている一方で新発10年物国債の利回りはこれを上回ってきており、であればわざわざという構図も否めない。“陰極まれば~”という相場格言もあるが、今後は金利上昇やインフレを当該不動産が生み出すキャッシュフローがどの程度上回ってくるかも焦点となって来ようか。


あの店のあの味

昨日の伝統工芸展に行った際に三越本店近辺を歩いていて思い出したのが、先月の日経紙ヒットのクスリの頁で「名店の味、MA&で承継」と題し、名店の味がなくならないようにレシピや屋号などを継承するミニM&Aを手掛ける企業を取り上げた記事。この冒頭では、東京・日本橋にツタが絡まった建物でスープ状のカレーを出す店があったが閉店しもう食べられなくなり“ロス”になった旨の書き出しであったが、これを読んで懐かしい想いが蘇った。

今のマンダリンオリエンタル東京とコレド室町テラスとに挟まれたとんでもない一等地にあったこの店は近所で私も何度か行ったことがあったが、同紙でも“ツタのカレー店”と「通称」で書いている通り建物の内外に店名が無く、外看板には「珈琲」と書かれていたものの店内でコーヒーを呑む客を一度も見たこともなく、店内は座ると否応なし?にカレーが出される一択のなかなか癖のある店だった。

斯様に日本橋には無くなってしまった名店が幾つもあるが、ここ数年でも幾つも思い浮かぶ。近所にあった「都寿司」は軽く創業100年を超える老舗であったものの5代目婿養子が起こした不祥事で突然閉店、鮪は言わずもがなランチの“にもの丼”も忘れられない味だった。TCATにあった唯一無二の味の担々麺が人気だった「龍鳳」も人手不足に苦しんでいたが力尽き、住宅街のクラシックな佇まいの中で海軍ゆかりのフレンチを堪能出来た老舗の「スコット」も消えた。

他にも創業家の内部分裂で本家の味の継承者が独立してしまったパターンや、名前は残っているが同業に買収され移転した例など日本橋には数多ある。これらは辛うじて同じ味を味わうことが出来るが、確かに上記の“消えた名店”の味の再現店がこの先現れるのか未知数だ。こうした無形資産だけを継承対象とする手法はこれまでにない新手といえようが、普及すれば“ロス”の寂しさも半減することになろうか。


伝統工芸展2026

昨日で終了したが、日本の優れた伝統工芸の保護と育成を目的に日本工芸会が開催する日本工芸の技と美が集結する公募展「伝統工芸展」の第73回が開催され先週これを観て来た。陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、諸工芸の7部門の一般公募作品1071点から選ばれた作品と“人間国宝”の最新作を含む約550点を一堂に展覧していた。

2年前の伝統工芸展で「輪島塗」に当欄で触れた際には、ちょうど年明けの大地震で工房が被害に遭ったことから仮設工房で作業再開するも続いて能登地方を豪雨が襲いその影響が懸念される旨を書いていたが、今年も石川県からは輪島塗ほか素晴らしい作品が数多く出品されていて一先ず安堵した。被災地といえば直近では熊本大地震もあったが、この熊本からも素晴らしい作品が出品されていた。

そういえばこの熊本、この7月に発生した大地震の復興を後押ししようと各所で支援の動きが見られるが、ラグジュアリーホテルなどではホテルニューオータニが熊本県産の栗を使ったモンブランを販売したり、帝国ホテルでも熊本県産の商品を展開している。いずれにせよこうした支援の輪のもとに日本が世界に誇る伝統技術の灯を絶やすことなく継承していってほしいものだ。


普及のカギ

本日の日経紙グローバル市場面では金(ゴールド)が裏付けとなる暗号資産「金トークン」が、今年7月に成立した改正金融商品取引法で暗号資産が金商法の規制対象に位置付けられる事になったことで、法律上明確に位置付けられることを契機に売却益にかかる税率がETF(上場投資信託)なみまで下がる公算が大きくなる旨の記事があった。

つまり現在は雑所得として扱われ住民税込みで最大55%の税率が適用されるものが、ETF並みの約20%まで下がるということ。冒頭の金トークンについては今から4年ほど前に当欄でも三井物産のものを取り上げたことがあり、ブロックチェーン技術を用いて金価格に概ね連動する暗号資産の「ジパングコイン」が発行されており、今年6月末の発行残高は25億7400万円となっている。

こうしたことを鑑み暗号資産取引所の中には今年から新たに上記のジパングコインの取り扱いを開始しているところもある。またジパングコインは発行体の破綻に備えた銀行による保証の仕組みがあるが、金融商品としての取引が可能になってくると斯様に様々な事態に備えて投資家保護のために補償や救済の基金制度などの整備が行われ、これら整備の進展で投資のアクセスもまたし易い環境が整ってくればこの手の普及も期待出来るか。


消える選択残る選択

さて、先週は日経平均が調整色を強める中でも2日連続ストップ高の後も続騰していたのが東証プライム上場のアルビスであったが、これは周知のようにスーパー大手のライフコーポレーションがTOBを実施すると発表しその買い付け価格の3780円にサヤ寄せしたもの。当のアルビス側は賛同意見を表明しており、このTOB成立後に上場廃止となる見込みだ。

このスーパー業界では春先にスタンダード市場上場のオリンピックもドンキが買収し上場廃止の道を辿ったが、TOBといえば先月もハウス食品工業が子会社の壱番屋の売却検討の報があり、組み込みソフト開発のイーソルのMBOも報じられておりいずれも株式の非公開化を検討する。斯様に非公開化の選択が増加しているが、ちょうど1週間前の日経紙一面でも東証への上場を廃止する企業が3年連続で過去最多を更新する旨を報じている。

非公開化に向かうケースでは上記のようなパターンもあれば、市場改革により上場維持基準を満たせなくなったパターンもある。昨年末には要請期間内に条件クリアする方策として所謂ロールアップなどの動きや、ファンドが絡んでファイナンスを駆使した時価総額拡大計画の動きなども予測されると書いていたが、ふるいにかける経過措置もいよいよ終了し条件のクリアが難しい10社が来月に上場廃止となる予定だ。

しかしこんなグロース市場やスタンダード市場でなくとも、東証一部からプライム市場に長らく君臨してきたところの「大正製薬」や「久光製薬」など誰もが知る“定番企業”まで非公開化を選択するのを見るに上場を前提としない新たな形が垣間見える。今後もこうした“前向きな退出”が中心になってくることが予測されるだけに、引き続きポスト別に注視しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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