Win-Winいつまで

さて、当欄では先月に株式市場で信用取引の買いがかつてないほど活況を呈し過去最大水準に膨らんでいると書いた事があったが、先週の日経紙総合面では「個人の株信用取引123兆円」と題し、7月の信用取引の売りと買いの合計額が123兆円と半年で2倍になり、現金取引を含む個人の売買代金に占める信用の比率は同月に83%と最高になった旨の記事があった。

以前に当欄でキオクシアHD株をマル信枠で目一杯張っている向きをチャレンジャーと称したことがあったが、このキオクシアHDの買い残高は今月上旬段階で1323万株、実に時価で6000億円以上にのぼっている。マル信はコストに金利が乗っている分、通常は現物よりも利食いを早めに入れる傾向があり信用評価損益率はマイナス圏で推移することが多いが、6月はプラス圏に浮上したというから異例だ。

それだけ上手く回転が効いたということだろうが、波に乗れた投資家だけでなくこれら信用の活況は胴元の証券各社にも収益をもたらしている。今月アタマに出揃った大手ネット証券の2026年4~6月期の合計純利益は前年同期比で2.3倍に膨らんだが、背景には信用取引の金融収支が貢献し各社これが大幅増加、収益全体に占める割合も大きく伸びてきている。

かつて手数料の引き下げ競争で遂にはゼロまで行き着き“不毛な戦い”ともいわれた時期があったが、当時はこの活況を誰が想像しただろうか?とはいえ需給面では過度な膨張はボラティリティーにも響くリスクも孕んでいるがこの辺は相場次第か。今後は米市場の23時間取引対応も年末から始まるが、いずれにせよ各社の更なる収益を睨んだ舵取りが注目されるところだ。


GPIFと政治

一昨日の日経紙投資面・一目均衡では「GPIF、予期された政治介入」と題し、7月の財務大臣の「GPIFをはじめとする年金基金により日本の金融資産にさらなる投資をしていただく方向で後押ししたい」との発言などから、GPIFの比率変更がある場面では世間が年金受給者ではなく政治のための変更だと受け止めかねず、はたして「自主性や創意工夫」を発揮できるのかとした旨の記事があった。

この辺に絡んでは先月も「官製相場色」として当欄で一度取り上げているが、うっかりなのか確信なのかGPIFを引用?した事でいまだ思惑が交錯している。現在のGPIFの配分比率は国内株式・外国株式・国内債券・外国債券で25%ずつだが、プラスマイナス6%までは許容範囲とされている。6%とはいえ約300兆円を誇る運用資産だけに1%変更だけでも約3兆円が動くことになるだけにそのインパクトは大きい。

実際にアベノミクス時代には債券から株式比率を増やしたことで円安・株高構図を創造した“実績”がある。冒頭の「自主性」という面ではその運用方針に合致すればその配分は独自に決められるが、政治利用に世間が敏感なのは前回も一寸だけ書いたようにバブル崩壊後にこのGPIFの前進を使って所謂“PKO”で株価を買い支えた苦い記憶があるからにほかならない。

ただ現在のポートフォリオは昨年の4月に始まったばかりで次のプロセスまでは時間がかなりあるが、そもそも論でGPIFのポートフォリオはあくまで年金積立金を増やすことが目的なわけで経済政策の援護射撃が目的ではない。先週末に公表された今年6月末の構成比率はほぼ基本ポートフォリオに沿った結果であったが、秋に公表される第2Qの資産構成にも注目しつつ今後も各所での官製相場を匂わす発言等には注意を払っておきたい。


AIインフレで跛行色の非鉄

さて日々情報が交錯するイラン情勢を睨み原油価格の乱高下も常態化してきたが、このコモディティーでは先週末の日経紙グローバル市場面で「銅、最高値迫る」と題し、銅価格の国際指標であるLME(ロンドン金属取引所)の3か月先物が1トン14369ドルまで上昇し、1月に記録した最高値に肉薄した旨の記事もあった。

足元でデータセンターなどAIインフラに向けた需要が伸びるなか、産出国であるコンゴが銅精鉱の輸出を禁止する報が伝わり供給懸念から買いが広がっており同じ非鉄のアルミ等が低迷するなか対照的な動きをしている。そんな背景もありAI投資コストによるインフレが警戒されているが、昨年前半などもこの銅価格が上昇するなかこれらが懸念されAI関連株が軒並み調整したのが記憶に新しい。

日曜日の日経紙NewsForecastで“AIインフレ”にも注目とあったが、上記のデータセンター建設や先端半導体需給逼迫でインフレ圧力も意識されてきている。先月のFOMCでは政策金利の据え置きが決まったが、FRB内ではインフレ圧力を睨んで金融引き締め論も出てきており日銀が陥っているようなビハインド・ザ・カーブを警戒する声が高まっているのは想像に難くない。

そういったところで先ずは今晩に発表される米7月CPI(消費者物価指数)や13日の米PPI(生産者物価指数)に関心が向かう。市場予測からの乖離具合で“タカ”になるのか?はたまた“ハト”で落ち着くのか?利上げ折り込みが加速するとなると、一旦は決算を受けて“コツン”とした感のあるテック関連も再度場味が変わってくるだけに先ずは上記指標の発表に注目しておきたい。


単位引き下げ再要請

さて皆が注目したキオクシアHDの2026年7~9月期の連結純利益だが、先週の発表は事前の市場予想平均こそ下回ったものの前年同期比31倍になる見通しとなり、1株を3株にする株式分割も併せて発表している。しかしながらこの3分割でも最低単元を購入するのに今日の終値でも480万円以上が必要と東京証券取引所が望ましいとする「50万円未満」にはほど遠い。

当欄ではかつてNTTの25分割も取り上げたが、同社など分割前でも最低単元を買うのに東証の望むところの50万円以下であったものだが、ふたを開ければ驚きの25分割をやってのけ最低単元購入は数万円から可能になった。そう考えるとキオクシアHD株もそうだが、最低単元買うのに1000万円近くの資金が必要になる値嵩株の分割は他社も控えめなものが多い感もある。

とはいえこのキオクシアHD株、一時は上場来高値ベースで、最低単元買うのにも実に1100万以上もの資金が必要だったことを考えれば、曲がりなりにも購入のハードルは下がったのか?そういえばこのキオクシアHDの分割発表の数日前には、東証が所謂「根嵩株」と呼ばれる投資単位の大きい上場企業約270社に向けて株式分割の再要請を通知した旨が報じられている。

この投資単位引き下げ努力?は今から4年ほど前に東証が分割要請したものだが、それ以降は確かに分割が急増し昨年の分割発表件数も前年度比で36%増加し2025年度末の上場企業平均の最低投資額は21万円と20年前の半分以下になっている。とはいえ近年の株高効果で分割してなお分割前水準に上昇してくる企業も珍しくなく、個人投資家が期待するという10万円以下水準のハードルも高くなってきているだけに今後の各社動向が注目されるところだ。


購買意欲を刺激 

本日の日経紙投資面では、日清食品ホールディングスの2026年4~6月期の連結決算で国内外での値上げが浸透し純利益が前年同期比18%増の132億円だった旨が出ていた。国内では「カップヌードル」等が販売を伸ばした旨が出ていたが、同社のカップヌードルといえばCMもなかなかのバズり具合で今年はシーフードヌードルのそれが某美容クリニックのオマージュ?でなかなか笑える。

このシーフードヌードルは昨年も同じく“霊長類最強”と謳われたレスリングの吉田沙保里氏が某バラエティー番組で話題になった連続風船割りをオマージュしたものが話題になっていたが、こうなると次は何を出してくのか待ち遠しい。またこのカップヌードルでは数年温めていた製法を確立し直近で「冷やし」も販売に踏み切るなど攻めた戦略が奏功している。

ところで食品系で話題を呼んだモノといえば、今年は他にナフサ不足を逆手に取ってカルビーが白黒パッケージにしたポテトチップスを売り出した件もあったが、こちらは話題を集めた当初こそ前週比45%増だったものがその後は4週連続で落ち込み、ピークからの減少幅は直近1年で2番目となったという。価格転嫁に苦闘する食品業界だが、レーティングも明暗で今後も各社の戦略には注視してゆきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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