中銀による構造的需給

さて今年3月頃迄は4000ドル大台割れはもうないとさえ一時思われた金だが、米利上げと米ドル高長期化の思惑が強まるなか先月末にこの水準を割っている。この下げを牽引した一因にETFからの資金流出がいわれているが、なるほどWGCによれば先月26日までの1週間では世界の金ETFから裏付けとなる金の金額にして47億ドル、重量ベースでは38トンが流出したといい、1週間でこの重量の流出は22年以来、約4年ぶりの規模という。

上記の通り先のFOMCを受けた米金融政策の思惑を背景に金融大手ゴールドマン・サックスなどは今年年末の金価格の見通しを1トロイオンス4900ドルと従来予想の5400ドルから引き下げており、シンガポールのユナイテッド・オーバーシーズ銀行も年末予想を従来の4800ドルから4300ドルに下方修正している。ここまでの下落局面で記録的上昇をけん引した流入の半分弱を吐き出した計算になるが、一方でこの水準で食指を伸ばす向きもある。

CFTCでは6月末のヘッジファンドなど非商業部門による金の買い越し幅は、1月下旬以来5か月ぶりの高水準に拡大、増加は2週連続で直近で最も買い越し幅が縮んでいた5月下旬から約2割増加している。中国の中央銀行もここ20か月連続の買い越しと最長記録を塗り替えているが、6月末のバランスシートでの金保有量は前月より15トンも増加しその増加幅は23年10月以来の大きさになっている。

まさに“捨てる神あれば拾う神あり”だが、投資家の裾野が広がったこともあり短期目線で手放す投資家の裏で世界の中央銀行は“脱ドル依存”の動きで金を含めた準備資産を分散する動きも顕著になってきている。冒頭のWGCの調査では今後1年で自国の金保有量を増やす予定とした中央銀行は過去最高水準に上った模様。斯様な中銀の構造的需要が今後の価格を占う上での鍵ともなってくるだけにこの辺を引き続き見てゆきたい。


ダブルスコア級再編劇

本日はヤマダ電機に買い物に行ったのだが、ついこの間家電激戦区の池袋にヨドバシの関東最大店舗が開業したのを思い出した。池袋はビックカメラやヤマダも旗艦店を構えているがこの業界ではこれに先駆け最大手のヤマダHDと、大手エディオンが経営統合する旨の報もあったがが、連結売上高約1兆7千億円を誇るヤマダにエディオンが合わされば約2兆5千億円、2位に位置するノジマでさえ1兆円にも満たないわけだからダブルスコア級となる。

ヤマダHDは既に2021年に大塚家具を傘下に収め住宅やリフォーム事業の強化をしておりPBブランドにも注力しており、エディオンもリフォーム事業を拡大し2022年にはニトリとの資本提携し共同開発を進めている。両者とも目指しているのは暮らし全体を提案するライフスタイル企業への転換だが、今回の統合が叶えば圧倒的なスケールメリットも手中に収めることになる。

家電業界といえば当欄では今から14年前の2012年にビックカメラによるコジマ買収を書いたことがあったが、その時には「業界上位同士による再編劇にステージが変わってきた」と書いていた。人口減少の社会の中で家電に限らず小売業はビジネスモデルも変わりつつあるうえ、圧倒的規模を持たなければ生き残れない時代に入っている様をひしひしと感じる今回の大型統合だ。

そういったところでは冒頭のダブルスコア級ではドラッグストア業界でも昨年のイオン傘下のウエルシアHDとツルハHDの経営統合も記憶に新しいが、他にもホームセンターやスーパーにコンビニしかり。人口減少の社会の中で小売業のビジネスモデルも変わりつつあるだけに、今回のガリバー誕生でまた他の企業や業界にも与える影響も少なくなく合従連衡の新たな波がまた来るか。


大・中小で二極化

先週に経団連は大手企業23業種248社の夏のボーナスの平均支給額を公表しているが、それによれば企業の好調な業績や毎月の賃金上昇が反映され比較可能な1981年以降で最も高くなり初の100万円の大台に乗った模様だ。これで5年連続の増加というが、中東情勢の影響などが懸念された日銀短観も市場予想を超える5期連続の改善を見せ企業収益の底堅さが改めて認識されたかっこうだ。

大企業の設備投資額は前年度比で11.5%増となり今回のボーナスと併せ斯様な数字は賃金や投資などの循環が回りはじめたことを示すものともいえるが、この大企業の方はそれとしても雇用の7割を支える中小企業の方のボーナスはどうなっているのだろう?出るだけマシとの指摘もあるなか、帝国データバンク調査では平均で50万円にも満たない数字が出ており上記の大企業平均のほぼ半分ということになる。

それでも今年の春闘での平均賃上げ率は最終集計で大企業が5.01%と昨年より0.33ポイントマイナスと伸び悩んでいる一方で、中小企業のそれは昨年の4.65%から今年は4.69%と微増ながらも健闘が見られる。日本経済が新たなステージに入るのは大企業と中小企業の二極化がどれだけ緩和されるかにかかっているといえ、大企業のような循環の流れが中小企業にも及んで初めて皆が景況感改善を実感出来るものと思われる。


増強続くアローヘッド

本日の日経紙金融経済面には「東証、注文処理能力を倍増」として、海外投資家などの流入による注文件数や売買代金の異次元とも呼ばれる急増や加えてシステムに必要なメモリーなど半導体の価格高騰による調達難を鑑み、現在1日あたり8億3千万件の処理能力を持つ注文処理システム「アローヘッド」の処理能力を約2倍の15億件に増給する旨の記事があった。

東証のシステムといえば2006年にライブドアの連日ストップ安の渦中に売買注文のキャパオーバーから東証一部二部まで及ぶ全銘柄の取引を強制的に停止する前代未聞の事態に陥ったのが記憶に新しい。そんな当時から比較するに今の処理能力でも飛躍的だが、先月は1日当たりの注文件数が月平均で2億3000万件とここ1年で約2倍にまで膨らみ、更に直近では3億件程度で推移している。

かつて場立ちが居た頃なら“笛吹き”になるような発行済み株式分が場中に回転してしまうようなケースが近年は頻発し、HFTの自動売買や大手ネット証券中心に売買手数料の無料化も進みこれに伴う注文件数も飛躍的に急増してきている。こうしたネット系もまたシステム増強などの対応を迫られようが、最近のサービスも一昔前では考えられなかったような“至れり尽くせり”の感もあり時代と共に個人のハードルも限りなく低くなったとつくづく。


ダブルパンチ値上げ

さて、互いに停戦合意違反を非難していた米とイランが攻撃停止で合意との報道が出ているが、原油や石油製品の供給不安による影響は今月も表面化している。帝国データバンクによる主要食品メーカー調査では7月値上げ予定の飲食料品は2566品目に上っている。単月の値上げ品目が2000品目を超えるのは今年の4月以来、3か月ぶりのことで、上記の中東情勢などが品目数を押し上げている。

分野別では即席麺などの「加工食品」が1084品目と最多で、4月に日清食品が、そして6月に明星食品が価格改定を実施していたが、今月は“赤いきつね”や“緑のたぬき”の東洋水産に“スーパーカップ”のエースコック、そして“カップスター”のサンヨー食品の3社が一斉に値上げする。これに続くのが「パン」の1078品目で“ロイヤルブレッド”の山崎製パン、“超熟”のPasco、“ネオバターロール”のフジパンなど大手が一斉に値上げに走る。

外食系ではバーガーキングが2月に続き半年も経たないうちにバーガーからサイドメニューに至るまで2回目の値上げを敢行し、モスバーガーも15日から値上げ、すき家も円安による牛肉価格の高騰を背景として8日から牛丼を値上げ、昨年の値下げも今回の値上げで“往って来い”で元通りになった。またドトールコーヒーショップやエクセルシオールカフェも中東情勢を受けた包材高騰を背景に主力商品を23日から値上げする。

1か月前には「~11兆円以上も投入した介入効果虚しく円安基調は変わらない~」と書いていたが、そこから一時は1か月で更に3円近くも円安が進み約40年ぶりの円安水準に。中東情勢の悪化にこの円安も輸入コストを上昇させるダブルパンチで帝国データバンクの言う年間値上げ品目数2万品目台での着地想定を睨み今後も身構える動きが継続されようか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2026

7

1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31