箱の末路

本日は所用があり久しぶりに茅場町まで歩いていったのだが、東京証券取引所を通り過ぎると大手に混じって中堅含め地場証券の面々が乱立している。そんな中を歩きながらかつて活況であった頃の兜町を思い浮かべている折にふと気になったのはやはり先日に破綻してしまったあの丸大証券であろうか?

ココは仕手株好きならこの会員の名前を知らないものは居ないほどそういった筋の機関店として活躍した経緯があり、直近の特定銘柄の崩落はこの辺が大きく影響したという説も一部に出ている。それは兎も角も、既に登録抹消となっている同社の預かり資産の運転資金や給与流用で喪失した顧客資産は日本投資者保護基金が補償するという。同社は群馬桐生から東京に進出したが、そういえば同じ群馬出身の南証券なる会社も詐欺事件でこの補償基金による補償適用となった経緯があったなとこれまた思い出される。

ちなみに近所のメインストリートでも向いには老舗の十字屋証券も店を構えているがここも今月に証券業の廃業が決定している。まあ十字屋証券の場合は紳士的でこれらとはまったく違う背景だが、問題となった丸大や南は結局のところオーナーチェンジで箱にするにうってつけの会員であったというところだろうか。負債額は丸大とほぼ同額ながらあまり派手には報道されなかったものの、業界でもタイコム証券なんぞは広義ではこのパターンともいえるだろう。

金融緩和から一寸した過剰流動性相場で株式は久し振りに沸いている中でも、こうした件の露呈は何気に業界事情を物語っている。


オマケか主役か

本日のコモディティ市況は全般気迷いであったが、昨日の日経紙商品面には金への資金流入減少としてニューヨーク金先物市場へのヘッジファンドなど大口投資家の買い越し残高が約2ヵ月半ぶりの低水準となり、長期保有が多いETF残高まで減少に転じた旨が載っていた。

直近では気迷いの金だが、ところで金といえば業界でも金貨キャンペーンを張る企業など多いが、昨年は財務省まで復興財源に充てる個人向け復興国債で一定期間換金しなければ次期限定発行される記念金貨や銀貨がもらえる商品を発表していたこともあったなとふと思い出す。ブームに乗った格好で安全志向を刺激した抱き合わせ感は否めないが、実のところ日本国債というのは安全なのだろうか。

そんなわけでこの両者の取り合わせが何とも微妙な感だが、銀行あたりもパッとしない金融商品にこの手を多用してきそう。そうそうファッション関係でも今年はあのジャンポールゴルチエがデザインした金の述べ棒が限定発売されるとの報もあったが、はてこちらは完売したのだろうか?


株価から見る不動産市況

本日の日経紙経済面の「震災1年 底探る地価」には、「日本は割安」マネー回帰として震災直後に低迷した不動産市場にマネーが戻り始めた旨が出ていた。確かに最近外資系による大型成約が相次いでいる旨はしばしば耳にするし、この近所でも最近商業ビル含めた建設ラッシュが可也の勢いである。

しかしこれらを如実に表現しているのはやはり株価であろうか。もともと日銀の追加金融緩和以降眠っていた不動産セクターが軒並み息を吹き返したのは記憶に新しく、ワラントなんぞを見ていても週間上昇率は三菱地所やオリックスなどでやはりこのセクターで占められている。直近でこそ公示地価発表が短期的な材料出尽くしとなり一服していたが、本日は金融緩和メリットを享受し易いセクターとして再度物色の矛先が向かっていた。

また珍しく不動産業界紙等でも見出等には大手不動産各社の株価になぞらえて市場復活を謳っている旨が出ていた。上記の通り大型物件建設ラッシュともなれば並行して不動産2012年問題等が頭を擡げてこようが、バブルであれば懐疑をテコに育つのがこの手の特徴、そうなれば久し振りにこのセクターはまだ目が離せないということになるが。


ソフトサウンディング

本日の日経平均は手がかり材料難で方向感のない薄商いの中を僅かに反発して終了、業種別では石油ポストがしっかりな反面、証券ポストは軒並み安で値下がり率トップとなっていた。さてこの石油と証券のキーワードで先週話題になっていた件といえば、周知の通り東証一部の国際石油開発帝石が一昨年に実施した公募増資に絡み、インサイダー取引が行われたとして証券取引等監視委員会が中央三井アセット信託銀行に課徴金を課すよう金融庁に勧告した件があった。

この国際帝石株に関しては当欄では既に2年前に「懐かしや帝石」のタイトルで、「もともと同社には以前からファイナンス観測があり、これを読むかのように確信犯的なショートが直近で入っているあたりがなんとも怪しい」と指摘しておき、その3ヵ月後にはこうした物に絡んだ当局の調査に触れ、「出来高ひとつ取っても露骨な事例が存在するのに当局が重い腰を上げずに何時の間にか風化してしまうのが長年疑問であったが、はたして今回の調査では何処まで暴けるのか注目。」と書いた。

それから2年もかかって漸く一部が明らかにされたというワケで、信託銀行がインサイダー取引で課徴金処分されるのは今回初とか。先にAIJ事件でも信託の問題性を少し挙げたが、企業年金と毛色の違う公的年金などはこの手の件では行動が早いだけに今度は解約リスク等も台頭する懸念もあるか。しかしその辺の事情はともかくも、やはり何かこうこれでも小粒な感は否めない。

課徴金といっても運用報酬に基く算定で僅かに5.5万円であるから以前にも書いたようにヤリ得?の部類で、そもそも怪しい商いに占める今回の中央三井の問題玉はそれこそ数パーセントにも満たない割合だろう。スケープゴートよろしく信託銀行初摘発との喧伝だが、問題玉を占める海外籍は高みの見物であろうしまだまだ法改正も議論の余地があろう。


松井冬子展を観る

さて、18日にとうとう終了してしまったが、昨年末から開催されていた「松井冬子展-世界の子と友達になれる-」を過日観て来た。十年近く前だろうか、彼女の季節感が存在しないさまざまな花が咲き乱れるなかで解剖図の如く全裸で横たわる女性が描かれた「浄相の持続」を観て以来、彼女の世界に引き込まれてしまい以降ほとんどの作品を彼方此方追いかけて観ている。

今回は横浜美術館であったが、今回のような日本画であれば此処へは東山魁夷展以来の記憶であるから随分ご無沙汰である。それは兎も角、今回は代表的な九相図の作品から三点、また昨年の物含めた作品三点などの初公開モノが含まれ、加えて珍しいデッサン段階の絵も見せてくれるという垂涎企画であったが、果たして以前観た物も含めやはり何度観ても素晴らしいの一言、何れも最終形を諦観して生きるのでなく生きる為に最終形を想うという世界だろうか。

もちろん、今回の題目「-世界の子と友達になれる-」も圧巻、咲き乱れる藤と夥しい数のスズメバチが狂気に変わる直前の崩壊の予兆に絡めて見事な演出をしていた。彼女の作品は比較的賛否両論がはっきり分かれる方だろうが、お約束の解剖図の如き作品でも夫々の臓物を鮮やかな花の如くの描画で纏めており、こんな高等感覚と下等感覚を相互に覚醒させるような形で自己確認を引き起こさせるのは彼女くらいだろう。まあ、こんなややこしい表現の前にこれらを描くことで真実を見つめるということなのだろうか。

もうじき千鳥ヶ淵も桜が咲き乱れるだろうがそんな光景を見る機会があったら、途端にきっと彼女の見事なシンメトリーの桜を描いた「この疾患を治癒させるために破壊する」が瞬時に思い出され、目の前に展開する光景と重なるのは想像に難くないことだろう。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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