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独占の歪

週明けから各ポストには「電気料金値上げのお願い」として東電から案内が投げ入れられている。冊子?には来月からの値上げについてその値上げをお願いするに至った理由からシミュレーション、果ては節電節約手法までご丁寧に書かれているが一般的には月1,000円超の値上げになるというところか。

ところで案内には「徹底した経営合理化に取り組んでいます。」と謳ってあるが、今月は同社の給与引き上げ計画が明るみになったばかり。会社側は新たな技術者の育成等の観点も考慮しこれ以上の年収減額は電気事業の遂行に支障をきたしかねないので勘弁してくれという言い分だ。

しかし今迄の収益構造を一般は皆納得しているのだろうか?そもそもこれも総括原価方式のデータ詳細を頑なに拒んできただけにベールがかかっていたものだが、これの一端が明るみになったところで同社利益の90%以上を一般家庭の電気料金から吸い上げていることが判明している。小口向けの販売割合が30%台という事を考えると或る意味凄い。

企業向けと違って電力販売が独占出来る家庭向けは否応なしにいい値状態となっていたワケだったが、自由化無きところに市場原理は働きようもない。上記の給与引上げ計画話も含めてこんな半端な競争政策がより一層公務員色を強くしてきたのは明白だろうが、この辺に今後新たな政策が出るのかどうか注視しておきたい。


日経・東工取指数先物上場廃止

こちらでも既報の通り、先週末に東京工業品取引所は国内商品先物の値動きを総合的に示す「日経・東工取商品指数先物」の上場を廃止すると発表している。商品指数系といえばつい先月も東京穀物商品取引所が農産物の動きを総合的に示す「東穀農産物指数」の公表を中止したばかりであるがそれに続く格好となった。

しかしこれが上場したのはつい一昨年の3月、何とも早い退場という印象だが一方で近年の取組というか商いの無さを見るに残念ながら当然の結果とも言えるか。日経紙には「商品設計を変更したものの活性化にはつながらなかった。」と書いてあったが、そもそも登場時から全社参加とはならず極めて地味なスタートが既に示唆していたのかもしれなかったし、鳴り物入りの限日取引から限月への変更など今更ながら不振も想像に難くは無かった。

上手く乗せればお約束のETFは勿論のこと、ブルベア系やワラントまで枝葉を次々と広げられる構図だったのだが、このTOCOM指数系のETFでは唯一白金がNEXTシリ−ズからほぼこの「日経・東工取商品指数先物」上場の一ヶ月前に上場しているのみ。そこからの枝葉が遅々として進まなかった原因も課題であった。

今後総合取引所創設も粛々と進行してゆくだろうが、やはり日経平均やTOPIXのようベンチマークとしてマトモに機能する存在がコモディティーも必要なのはいうまでもない。上場商品移管を巡ってまた二転三転する懸念もあるものの、落ち着いた暁にはもう一度そんな役目を担った新しい構成の指数が登場するのを期待したいところである。


商品アノマリー

さて、梅雨が近いこの時期になるとPGM系というか白系をウリにしたメタルジュエリーの案内が各所から送られて来るが、なかでもプラチナといえば今週は5日の日経紙夕刊一面で金の価格がプラチナを上回る逆転が定着する気配との記事が出ていた。

同紙にも謳ってある通り、プラチナは過去30年近く金価格の2割高〜2倍が常でそういったことから一昔前まで両者価格の接近時や逆転時にはストラドルなんぞがよく取り組まれた経緯もあったが、近年の経済環境やら取り組みからここまで恒常的な逆転から察するにこんなアノマリーも既に色褪せてしまっているのが窺える。

こんな背景には勿論経済減速懸念があるが、足元では日進月歩の技術でジワジワと需要減少の芽も出てきている。先週末の日経紙財務面には「マツダ株、連日の年初来安値」として、3月のファイナンスに加え最近の円高・ユーロ安で業績悪化懸念が燻り株価が冴えない旨が書いてあったが、末尾には社運をかけた低燃費技術を前面採用したSUV・「CX-5」が想定を上回る売れ行きともあった。

この「CX-5」だが、新型の高効率燃焼技術によって窒素酸化物を除去する排ガス処理工程が必要なくなる事で必要最低限の部分を入れても従来のプラチナ使用量は7割削減出来たという。まだTOCOMが板寄せだった頃には新触媒開発の噂が出る度にストップ安が続いたものだったが月日は過ぎこんな噂も次々と現実のものになって来ている。

産業色の強い世界だけに昔ながらのアノマリーも斯様に過去の物になりつつあるが、昨今の株式市場なんぞは更にこれが顕著、コモデイティーと絡めて見ているとこちらもまたヒントが幾つも転がっていたりするもの。


調達の目処

さて、昨日はアジアでの戦略を睨むLMEに触れたが、そのアジアでは欧州債務危機からの株価下落が影響し香港やシンガポールなどの株式市場でIPOを延期、中止する企業が相次いでいる旨が昨日の日経紙に載っていた。

立て続けに出ている中で調達見込み金額規模の大きいところではフォ−ミュラ・ワンの約20億ドルなどあるが、昨年の大手商品取引会社グレンコアなどにみられるように市場では香港の資金調達金額が近年突出している。そういえば高級ブランド系でもあの伊プラダが此処へは先に上場していたが、英グラフダイヤモンズもこの香港市場へのIPOを予定していたのが中止になってしまった。

世界中の主要株式指数が今年の上昇分を軒並み帳消しにし、資金調達も上記の件はじめ社債発行額も落ち込みが激しく、この状態が続けば新興市場など可也の悪影響が予想される。しかし、IPOも元々のホームタウンを避けてアジア戦略を睨んだ途端にとんだ災難であったが、市況の改善と共にこれらもまた復活してくるのかどうかこの辺も見ておこう。


重要戦略拠点

さて、中国の景気減速懸念から工業用素材として使う非鉄金属の需要減退観測で投機筋の売りも目立った結果、今月に入ってから非鉄金属の国際価格が軒並み下落、銅などフシ目の7,500ドルを切って年初来安値更新となり、株式市場でもその関連株は直近での崩落が目立っている。

銅といえば指標となるのはLME(ロンドン金属取引所)であるがこのLME、目下のところ上記の通り中国で急成長しているSHFE(上海期貨交易所)等の取引市場に危機感を感じ、アジアでの事業展開を各所にて強化し始めている旨が過日の日経紙に出ていた。斯様に利便性を高めて参加者の拡大に繋げようというところだが、目下のところLMEは複数の取引所による買収提案に晒されているのは既報の通り。

このうち先月まででNYSEユーロネクストは撤退し、入札に残っているCMEグループ、インターコンチネンタル取引所、香港取引所等の3取引所はいずれも10-12億ポンドの価格を提示している模様であるが、アジアを睨む戦略を展開しているだけにこの辺の行方がどうなるのか大きな関心が向かおうというものである。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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