鑑賞初め

さて一昨日の日経「旬の人時の人」では同紙連載小説「等伯」で直木賞を受賞した作家が載っていたが、この安土桃山時代から江戸初期にかけて活躍し数々の傑作を残した長谷川等伯と双璧と称される巨匠に円山応挙が居るが、同氏の屏風が見られるのもあとわずかということで過日は三井記念美術館の「ゆくとしくるとし」を観に行ってきた。

応挙といえば「孔雀図」などどことなく伊藤若冲のタッチに似ており以前より興味があったのだが、やはり国宝にもなっている「雪松図屏風」の実物は圧巻、展示替えで昨年までの「雲龍図」は見ることができなかったものの、これをも凌ぐその荘厳さはやはり実際に観てみないとわかるものではない。

もともとパトロンが三井家だったということもあり同館で展示されるのは自然であったが、今回は併せて茶道具の展示が有り、昨年の「正午の茶事」に続き今回は冬季ということで長い夜を楽しむ「夜咄しの茶事」をテーマにしていただけあって趣のある行燈など初めて見る物が多数有り、昨年観た重要文化財である俊寛の「黒楽茶碗」もまた観ることができ毎度ながら構成の素晴らしさを堪能した次第であった。


奇策あれこれ

昨日の日経紙には金や原油等TOCOM上場商品の値動きを示す日経・東工取商品指数が一段と上昇紙週明けの清算値は351.05と前週末比で1.63上がり4年4ヶ月ぶりに350台を回復した旨が出ていたが、やはり世界景気の底入れ観測で昨年末から16%上昇している白金などの影響も大きい模様だ。

ところでこの白金といえば今月上旬には米連邦政府が政府債務上限引き上げを巡って与野党協議が難航するなか、米財務省が額面1兆ドルのプラチナ記念硬貨を発行し、FRBに預託する代わりに得た1兆ドルを政府歳出に充てるという予算水増しの奇策が浮上した一幕があった。

紙幣発行はFRBだが、記念硬貨発行等は財務省が有しており例外に当たるプラチナに着目しただけの単なる抜け穴なのだが、この手の発行モノといえば本邦でも巷の一部には、現在アベノミクス酣で大幅な金融緩和を進めるなか消費マインドを刺激するための秘策として高額紙幣の発行説が流れている。こちらは紙幣発行権限が財務省に有りというところで、これまた奇策の範疇に入るのかどうか色々出て来るこの手は奇異荒唐でもあるがその背景を鑑みるに冗談ともいえない部分もある。


食文化カオス時代

さてランチタイム時に知人と話していて自ずと食の話になったのだが、やはり今は低価格飲食店の話題が囂しい。ちょうど先週末の日経MJには話題の「俺の〜」シリーズの飲食店が近々店舗数を現在の約3倍に増やし本格的な料理人が調理する料理を売り物に集客力を高める旨が載っていたし、この辺はTVでもまた先週の「ガイヤの夜明け」で放映されていた。

新業態も加え、「俺のイタリアン」はミラノ、「俺のフレンチ」はパリとお家芸の本拠地へと進出も狙うというが、今や一部上場にまで昇格した「ひらまつ」に見られるように日本人勢はミシュランで次々と星を獲得しているだけにこうした部分とは別な意味で活躍する事になるのかどうか非常に興味深いところである。

また放映ではこの春にも割烹というジャンルにも進出する旨もあったが、やはり板長は他店同様に一流料亭からの引き抜き組、原価率と回転率で勝負という分野でもここまでの形態は今までなかっただけに見ものだ。日本の食といえば日本食やその関連グッズ等世界でブームになりつつあり、直近では名店料理人らが次代に文化継承する為に「学会」も発足されている。其々のジャンルで其々の方向性、食文化も宛らカオスのようになってきた昨今である。


促進と環境整備

週明けの日経紙特集には「ニッポン金融力会議」として、第2回トップシンポジウムの様子が載っており投資を促す環境整備の重要性が課題となっている旨が謳ってあった。昨年は前政権下でショートやセルボラが天下だったものだが、年末からはアベノミクスが好感され一般にも取り易くなってきた市場に変貌しているのは周知の通り。

そんな折だけにこうしたシンポも虚しい掛け声に感じられなくなってきたが、環境整備といえば先週発表された2013年度の与党税制改正大綱ではデリバティブ取引と現物株式の損益通算が検討事項に盛り込まれていた。

デリバティブといえば商品先物は当然その範疇だが、TOCOMは日本取引所グループとの合流について予てより証券と取引する口座が一元化できるよう損益通算を条件の一つにしていた経緯からこの辺は歓迎の模様だが、実際の合流については慎重論が底流にあり今後の展開については先ずはポスト替以降に具体論という形か。

証券優遇税制については一寸燻るものがあるもののFX税制一本化となり、直近では損益通算対象を公社債等債券にも広げる方針と徐々にではあるが環境も変化しつつある。冷や水を浴びせるような後退よりは遥かにましだが投資の啓蒙・促進には或る程度暫定でもドラスティックな措置の必要性を感じる。


時世と解釈

さて昨日の日経紙財務面では「ダンスが追い風」として、セントラルスポーツの2012年4-12月期の連結営業利益が前年同期比4割増となった模様との記事が出ていた。これを受けてか株価は本日も年初来高値更新となっているが、新学習指導要領に基づき昨年から中学校でダンスが体育必修科目となった事がダンススクールの会員数を想定より増やしている模様。

さて、そんな社会的地位位?を固めつつあるダンスであるが、同じダンスでも裏の方では昨日ちょっと取り上げたジュリアナから派生したクラブのようなところの規制は風営法を持ち出され昨年あたりから西麻布や六本木界隈の名店摘発などに見られるように締め付けが加速している。

風営法によればダンスは、享楽的雰囲気が過度にわたる可能性があり善良な風俗を害する恐れがあるものらしい。額面通りに受け取れば学習指導要領も再考しなければならないが、こんな埃を被った法を盾に大箱の摘発が相次ぐ背景には何かこう別の意図が隠れているのではないかと勘繰ってしまう。

そもそも風営法が出来たのも数十年以上も前の話、時代と共にこれらも変わっていって然るべしだろうが、これこそちょうど一週間前に「一括り論拠を裁く」として書いたこれまた根拠希薄な例で、ましてや上記の通り単に別件で本当の狙いの為の大義名分に利用されているだけだったら、それこそ関係各所等いい迷惑というものだろうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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