空売り解禁の効用

さて今月もそろそろ終ろうというところだが、周知の通り今月5日からは2002年に導入となった「空売り」の規制が漸く緩和されることとなった。機関投資家やヘッジファンドもやり易くなるというものだが、個人も従前の単元等が緩和されることでこれらの自由度が増すというもの。

初日には空売りが占める比率が今年最高水準になっていたが、5月の高値からちょうど信用期日の順次到来にあたりその因果玉目当てでショートが溜まった銘柄も多く散見されていた。ただ当の日経平均はそこから軽く1,000円以上上昇し本日も急反発で年初来高値更新となっており、モノによっては早々と踏まされた向きも多いのではないか?

繋ぎの用もあるので何とも言えないがここまでのSQも絡めカラを誘い易いスケジュールの設定も年初来高値の構築に一役買ったようにも見える。昨今ではハイフリークエンシー取引等も横行していることでこの緩和がどの程度の影響を与えることになるのか未知数の部分もあるが、何れにせよ市場がまた一歩本来の姿に戻り売買の厚みも更に増してくることになろうか。


投資マネーで活性化

本日は日経平均が冴えない中でも総じて不動産セクターが堅調な展開になっていたが、この辺は日経紙総合面で「運用不動産2兆円越す」として、地価上昇を期待した個人や年金基金の資金がREITに流入し購買力を増したこれらが不動産の大きな買い手になっている旨の記事も一部手掛かりになっている。

これらREITに関しては当欄では今年の春先からREIT市場への資金流入が加速しその時価総額も過去最高を更新した旨を度々取り上げてきたが、五輪開催が決定した9月ではTOPIXの7%上昇に対してREITのそれは16%にもなり、また今年の不動産取得額は初めて7兆円を越え7年ぶりに年間最高額を更新するという。

その種類も多様化し従来のオフィス系特化から星野リゾートにみられる旅館モノや、また直近では週末に小売設立では初のイオンリートが上場を果たし、ココは合計1,500億円越の物件を取得するなど流れ込んだ投資マネーで各所に活性効果がもたらされている。斯様なマーケットのマッチが脱デフレを後押ししてくるかどうかますます注目である。


新無国籍通貨

さて、半年ぶりの水準にまで円安が加速し一頃の相場膠着から脱して為替市場もまた活況が戻るかというところだが、通貨は通貨でも最近活況を呈しているものにネット上で流通するビットコインなるものがある。

この通貨を取引する取引所では今月に入って上旬から中旬までにその相場が2倍に大化けし、この3ヶ月で相場は6倍になるなど投機熱に拍車がかかり、他の競合取引所にも注目が集まり裁定の機会を窺う投機家も出始めたという。

無国籍通貨という点で金と同じであるものの、電子決済など現実的な利便性で金とは可也異なる。無国籍通貨の枠で見るに金にとってはたして脅威な存在ということになるのだろうか?また、原資産が活況になれば当然構想として出てくるのがETFで、既にフィエイスブック創業過程で揉めた人物が申請をする等しており、ますます目が離せなくなりそうだ。


現物回帰?

さて先週のニュースで目に留まったものにインドの空港で国際線旅客機のトイレから約2億円近くの金の延べ棒が発見されたとの件があった。同国では今年金の関税が6%から15%に引き上がっており、この辺を背景にしたものと考えられているがこれだけの規模だけに何とも裏がありそうな落し(忘れ)物?である。

ところでこの金地金といえば、先週の日経紙マネー&インベストメントには「金地金、再び脚光」として為替の円安安定や増税前の駆け込み需要も期待され、低迷している先物を横目に地金販売が再び伸びてきている旨が載っていた。

こうした地金需要は円建てETFにも及んでおり、当欄で先週20日付け「プラチナ復権」の項で金の主力であるSPDRゴールド・シェアが年初から4割弱減っている旨を書いたが、同紙によれば同じETFでも国内保管を謳う金の果実は年初比15%増の6.4トンと過去最高水準に達しているという。こんな流れを汲んで来年は現物回帰となってくるのかどうか、引き続きETFの動向含めて注視しておきたい。


「俺の〜」ロジック

さて、年明けに当欄で「食文化カオス時代」として一度取り上げたことがあった話題のレストラン「俺の〜」シリーズだが、いくら話題とはいえ個人的にレストランに入るのに並ぶという選択肢はありえない私は未体験だったものの、近所に最近突如としてオープンした「俺のフレンチ」に行く機会が舞い込んできたのでこれ幸いと今更ながら行って来た。

表通りから一寸入った裏路地?ながら先ず何処の店舗でも見られるように、お店の入り口には某所のホストクラブやキャバクラの如く(失礼!)、名店で腕を振ったブランドシェフの大きな写真が聳え立つ。一見ブッ込みにも見えるが、入ってみるとオ−プンキッチンで座席にも座れてそう窮屈な感じは無く店員のサービスもなかなかいい。

さて肝心の料理だが周知の通り此処は一般のお店が原価率30%とかいわれているところを倍の60%以上ということで逸品を驚愕の値段で出すというものだが、看板メニューのロッシーニなんぞは大きなフィレ肉やフォアグラにトリュフをふんだんに使い60%どころか見た感じ原価率は90%くらいになっているのではないだろうか?

他、伊勢海老やホロホロ鳥も然りで材料費を湯水のように使ったメインディッシュの一品が1,000円そこそこであるから感覚がおかしくなる。上記のロッシーニなど都内の一寸した店ならアラカルトで軽く一皿10,000円以上するがそれが10分の1の価格だから其れなりに後ろ盾が無ければ出来る業ではない。

そんなワケで当然ながらどれもこれも美味しくまた伺う約束をして出てきたが、驚異的原価率のメイン物は直に提供せずに出てくるまでの間に前菜(これも激安)やアルコールを消費させるというあたりも一つのポイントか。しかし牛丼業界など高原価率で臨んでも収益は覚束ないものが、「俺の〜」形態ではしっかり儲けが出ているというロジックが面白い。

今、あちこちで発覚している偽装までして原価率を極力下げるところあれば、こうして真逆の発想で原価率を極力高くして勝負に出るところあり。経営もさまざまである。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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