「俺の〜」ロジック
さて、年明けに当欄で「食文化カオス時代」として一度取り上げたことがあった話題のレストラン「俺の〜」シリーズだが、いくら話題とはいえ個人的にレストランに入るのに並ぶという選択肢はありえない私は未体験だったものの、近所に最近突如としてオープンした「俺のフレンチ」に行く機会が舞い込んできたのでこれ幸いと今更ながら行って来た。
表通りから一寸入った裏路地?ながら先ず何処の店舗でも見られるように、お店の入り口には某所のホストクラブやキャバクラの如く(失礼!)、名店で腕を振ったブランドシェフの大きな写真が聳え立つ。一見ブッ込みにも見えるが、入ってみるとオ−プンキッチンで座席にも座れてそう窮屈な感じは無く店員のサービスもなかなかいい。
さて肝心の料理だが周知の通り此処は一般のお店が原価率30%とかいわれているところを倍の60%以上ということで逸品を驚愕の値段で出すというものだが、看板メニューのロッシーニなんぞは大きなフィレ肉やフォアグラにトリュフをふんだんに使い60%どころか見た感じ原価率は90%くらいになっているのではないだろうか?
他、伊勢海老やホロホロ鳥も然りで材料費を湯水のように使ったメインディッシュの一品が1,000円そこそこであるから感覚がおかしくなる。上記のロッシーニなど都内の一寸した店ならアラカルトで軽く一皿10,000円以上するがそれが10分の1の価格だから其れなりに後ろ盾が無ければ出来る業ではない。
そんなワケで当然ながらどれもこれも美味しくまた伺う約束をして出てきたが、驚異的原価率のメイン物は直に提供せずに出てくるまでの間に前菜(これも激安)やアルコールを消費させるというあたりも一つのポイントか。しかし牛丼業界など高原価率で臨んでも収益は覚束ないものが、「俺の〜」形態ではしっかり儲けが出ているというロジックが面白い。
今、あちこちで発覚している偽装までして原価率を極力下げるところあれば、こうして真逆の発想で原価率を極力高くして勝負に出るところあり。経営もさまざまである。