ブランド育成の違い

今週は所用で丸の内方面に出向いたのだが、そろそろ冬のセール関係も終盤となる中でもバーバリーの賑わいが一際目立っていた。このブランドといえば三陽商会だが先に発表のあった通りライセンス契約期限切れの影響で同社製の冬物が買えるラストチャンスという事もあるのだろうか?

同社は契約終了後にこのブランドの売り場を新ブランドに切り替え、売上で2割強を占めていたこの穴を埋めてゆくという戦略だがこれら両者を前に大手百貨店がどういった立ち位置を取るかなども今後気になる。対して当のバーバリーも今後3年で店舗数を現在の2〜3倍にする戦略とか。

そういえば直近では先週末にも中堅アパレルのルックが、米ブランド(トリーバーチ)の独占販売契約を今年7月末で終了する旨の発表をしていたが、以前にも書いたようにこんなアパレルから果てはチョコレートまでライセンス契約見直しが近年は彼方此方で目立つようになっている。

ブランド本体もオプションのロングよろしく損失限定・利益無限大?の立場を盾に本邦側と持ちつ持たれつの関係であったが、近年のこうした動きに大衆的なプレミアムブランドからラグジュアリーブランドへ啓蒙を急ぐ焦りがやはり見え隠れする。今更ながら多数のラグジュアリーブランドを確立してきた欧米勢のスタイルを感じるが、この辺こそ一番日本に欠けている不得手部分なのではとあらためて感じる。


副作用転じて

さて、最近ではライブドア事件や豊田商事事件が取り上げられていた日経紙(日曜に考える)の頁だが先週はあの薬害エイズ事件が取り上げてあった。非加熱製剤で感染した血友病患者らが国と製薬会社を訴えた過程は当時何度も放映され今でもその光景が思い出される。

この件で当時渦中にあったミドリ十字の株価暴落の様子も同様に思い出されるが、同社は後にこちらも今は市場からその姿を消した吉富製薬に合併され、その後は三菱ケミカルの子会社になった後に田辺製薬と合併するなど再編が進むなかで大手に合併を繰り返されその法人格は今やきれいに消滅している。

ところで、同紙に併せて載っていたリスクのない薬はなくかつての副作用が効用になることもあるという部分も目に留まり、副作用のあったサイリドマイドが多発性骨髄腫治療薬として使われている例が載っていたTが、もっと柔い?ところではもともと高血圧やら前立腺の治療薬として使われていたものが今や発毛剤で大活躍している。末尾に書かれていた薬害の歴史は薬の有効性、安全性を高めるための最良の教科書という一文が印象的であった。


実質還流

本日の日経紙投資情報面には「キャノン、金庫株3割へ」と題して、潤沢な手元資金をもとに自社株買いを続け、2020年をメドに発行済み株式に占める自社株(金庫株)の比率を現在の18%から30%まで引き上げROE(自己資本利益率)など資本効率の改善を狙うキャノンの例が載っていた。

同社のような自社株買いに増配というパターンを見ていていつも連想するのが米のコカコーラなのだが、NISAに好まれそうな一般ウケする高配当を出しつつもこうした金庫株から実質は手元資金が還流してくることになり、これがまた増配などの原資になっている背景というカラクリがある。

そんなワケで昨年末にも一寸触れたように実に26年間もの間増配を続けているというのは主力の他社には見られない現象で一際異彩を放つ。高ROEといえば最近ではこの手に買い疲れが出て同業種の別銘柄への乗り換えが進んでいる模様も一部指摘されてはいるが、金庫株を使った経営政策は今後もさまざまな角度から検討されてこようか。


恒常化?

先週末の日経紙商品面には「WTI、ブレントに接近」と題して、原油安が続くなか今月中旬には国際指標の北海ブレントと米国指標のWTIがほぼ同水準となる場面があるなど両者の価格が迫っている旨が書いてあった。

需要や生産面を背景としたファンダメンタルズに加え先物での裁定などもこの辺を後押しして約1年半前の逆転劇も視野に入るとされているが、コモディティーでは最近貴金属の世界でも金と白金の逆転現象が今月中旬以降ニューヨーク先物市場で起きている。

上記の北海ブレントも経済低迷する欧州という背景があるが、プラチナも触媒用途のディーゼル車が主流になるこれまた欧州景気の先行き不透明という素地に加え、やはり中旬のスイス中央銀行による対ユーロで設定していたスイスフランの上限撤廃発表によってユーロ安が一気に進むなど外為市場の不安定さから安全資産とされている金も買われたのが背景になっている。

原油の頁でも末尾にはWTIが長期にわたりブレントを上回るかは不透明だとしているが、これらが今後長期化するか否かが注目されるところ。株式の世界でも同業などの株価逆転が起こった当時は初のパターン等と珍しがられたものも、その後それが恒常化し格差が更に広がるケースも近年多く安易なアノマリーは通用しにくくなってきているのかもしれない。


変わらぬ手口

さて、先々週の日経紙(日曜に考える)では、2006年のライブドア事件が取り上げられており当欄でもこれについて触れたが、先週のそれは1980年年代に世間を騒がせたあの豊田商事事件について取り上げられていた。

当時はちょうど彼方此方横行していた私設市場を懸念し商品取引所法の改正がありこの辺がこの手の業者が蔓延るようになった背景でもあったが、金だけでなく枝葉を広げてベルギーダイヤモンドや鹿島商事などダイヤモンドからゴルフ会員権まで扱う雑食企業、最後は会長が襲撃されその後事件の全貌が次々に明らかになってきたが今でも当時の様子は生々しく思い出される。

同紙の見出しには「悪質商法の源流 詐欺師の養成所」と題してあったが、企業名から始まりテレコール部隊やらそのシステム化された営業手法、異業種への進出意欲など今や消えていった業界大手も考えてみればまさにこれの映しだったような気もするが、そういえばこの豊田商事が商品なら時を同じくして投資ジャーナルという株式版もあったなとも思い出す。

それはともかく何れにせよ一見無数に見える詐欺手法も基本部分は今も昔も変わっていない。近年起きている詐欺的事件もカラクリは至極単純ながらそれでも実際に広い年齢層が釣られ被害者として毎回毎回多数出てくるのも不思議だが、今更ながら最大の防御は金融リテラシーを先ずは各々磨いておく事だろうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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