格差是正

昨日に東京証券取引所が発表した26日申し込み時点の信用取引の買い残高は2週連続で増加、一方で信用売り残高は3週連続増加で約4ヶ月ぶりの水準に膨らんでいたが、信用取引といえば先週の日経紙一面には「株の信用取引 夜間も」と題し、東証が閉まっている早朝や夜間も私設取引所などで信用取引が出来るようにする規制緩和に乗り出す旨が報じられていた。

この件に関しては今から2年ほど前に、大手ネット証券会社が実施したアンケートのお願いの中で「信用取引があったら便利に思うか?」という質問があったのを思い出す。PTSは刻み値などで一歩先を歩んで創設来売買代金の増加が続いてきたものだったが、こんなアンケートから2年で漸くマル信にも切り込んできたかという感じ。

とはいえ昨年にはカリブ海の島にある投資会社の不正売り抜けの舞台としてPTSが使われたり、リクイディティーの面などまだまだ課題は多い。また同紙にも書いてある通り利益相反の問題等もあるが、既に個人投資家の売買においてマル信は半分以上を占めているだけに取引所との格差是正で利便性向上に期待がかかるところ。


くじらPKO

昨日の日経紙一面には「公的マネー、筆頭株主に」と題して、同紙の試算で公的年金を運用するGPIFと日銀を合せた公的マネーのパッシブ運用等で東証一部上場企業約1970社のうち4社に1社にあたる474社の実質的な筆頭株主となっている事が分かった旨が報じられていた。

所謂「くじら」のGPIFについてはこれまで何度となく当欄でも取り上げて来たが、日銀のETF買い入れも年間購入額を6兆円とほぼ倍増することを決めて以降、今やその経験則や買い入れペースを読みながらのトレードで市場は一喜一憂し一部限界論の台頭もあって戸惑いも否めなくなってきた。

かつてのPKO時代から時は過ぎ、当時は存在しなかったスチュワードシップコード等が導入された現代、形態を変えてのPKOとの比喩が喧しい。後半戦も米国の利上げを巡る思惑が燻るなかくじら勢はこれら踏まえて購入スケジュールをどう図ってゆくのかこの辺がまた注目される。


自社株買いとROE

先週末の日経紙マーケット面には「自社株買いに選別の目」と題して、5兆円超と過去最高だった前期に続いて今期も同規模になる公算が大きくなる旨が載っていた。昨年のコーポレートガバナンスコードの適用でROEが意識され、自社株買いが急増とその動きがより活発になってきている。

さてこのROEが意識されてという部分であるが、これが重要視されるあまりこれを維持するが為に企業の利益が設備投資やら開発や研究に十分回らないままに自社株買いに振り向けられているケースも最近は多く目にするようになった。

末尾には自社株買いを成功させる要因は何かとし、自社株が大幅な含み益になっているところはROEが安定して2ケタ台の企業が多いとあったが、もともと低ROEのところや上記のケースで自社株買いに勤しむケースでは生産性が低下し低成長の原因になっているのは否めない。効果的な自社株買い機運から市場の篩も一段と選別色が出て来ようか。


渡りに船の転換

さて本日は所用で浅草方面に行ったのだが、この界隈を通り多くのバックパッカーらしき外国人観光客を見るに思い浮かぶのがこの近くにあるラブホテルを改装しゲストハウスにしたカオサン・ホテルの大ヒットだろうか。

この辺に絡んでは今週の朝日紙でも、ラブホテルを外国人観光客向けホテルにリニューアルする業態転換が増えつつある旨の記事も見掛けた。ここでは業態転換した埼玉のラブホテルを取り上げていたが、従前では所謂風俗案件への融資はまずハネられたものだが、同ホテルは1億以上の改装費を都内の信用組合から借りたという。

こんな手の平返しの対応変化は、やはり4月に政府が日本政策金融公庫に対しラブホテル改装費の積極融資を通達した事が可也大きいだろうか。現在ラブホの平均稼働率は平日で4割止まりと言われているが、こうした政府の腰上げが呼び水となり業態転換が進めば経営難とホテル不足解消の一助にもなるワケで、来る東京五輪を見据え政府アクションの試金石となろうか。


売り専第2弾

夏枯れ相場で一進一退の日経平均だが、個別ではなかなか戻りの鈍いモノも散見される。サイバーダインなどもその一つに挙げられるが、先週末の日経紙投資情報面にも取り上げられていた通り、空売り専門の米調査会社シトロン・リサーチが同社株価を割高としたリポートを巡って同社側が分析が非常に浅く、事実誤認を含むとの見解で知的財産の所有状況など疑義について反論している。

この手の件といえば当欄では、グラウカス・リサーチG第一弾と題して今月の4日にそのターゲットとなった伊藤忠商事を取り上げているが、時価総額の大きな東証一部株と違ってこちらは新興のマザーズで時価総額も約九分の一ほどなだけにホルダーも穏やかではないだろうか。

しかしその目標価格も事実上の売り推奨時から85%安であるからなかなかインパクトのある値というか内容である。グラウカス・リサーチのこれ迄の実績も言わずもがなだが、この手の売り専が7月、8月と立て続けに出てきた事で今後も突如としてターゲットにされる企業とその攻防が注目される。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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