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値上げ耐性

昨日は日清食品冷凍が想定を超えた食材や人件費、物流コストの上昇を背景に家庭用冷凍食品40品目の出荷価格を9月1日納品分から約5~20%引き上げると発表している。同値上げは今年の3月以来のことであるが、40品目というと同社ブランドの家庭用商品の約半分の規模にあたる。

再値上げとはいえこの冷凍食品、他とは違って相次ぐ値上げでも高い値上げ耐性を誇り国内生産や消費量などその市場規模は昨年には過去最高を更新している。先週末の日経紙でも「冷凍食品、食卓の主役に」と題し冷凍食品を取り上げていたが、以前に当欄でも取り上げた大手スーパーや百貨店など小売も冷食に商機を見出している旨が書かれていた。

そういえば春先に銀座三越が地下の食品フロアを2010年のオープン以来、初めて大規模リニューアルさせたが、そこで特に力を入れたのが冷凍食品類であった。本来のお店の味を再現するためにそれぞれ解凍方法が湯煎、氷水、流水などその食材の本来の姿に戻る最良の解凍方法を提案し天婦羅や鮨からラグジュアリーホテルの味まで気軽に食する事が可能になった。今後も値上げ耐性を武器に枝葉の広がりで市場規模の更新劇が続くのは想像に難くないか。


トレーディングカード狂騒曲

さて、先週末には千葉の幕張メッセでポケモンカード日本一を決める「ポケモンジャパンチャンピオンシップス2023」が開催されていたが、このポケモンカードといえばつい最近も有名デザイナーとのコラボカードがランダムでもらえるというキャンペーンで、怒号が飛び交うなか棚からあらゆる商品が消える阿鼻叫喚の光景がTVでも報じられていた。

これを見て思い出したのが大手雑貨チェーン3COINSの「KIDS節分」なる商品に大勢の客が押し寄せ店内が地獄絵図になった今年の節分の光景か。まさに同じ光景であったが、毎度の事ながらポケモンといえば上記の通りレアカードを狙ってカードの最新作発売日など各地で数百人の行列が出来るのが今や風物詩?になっている。

コロナ禍でカードをコレクションする人が増加しているというが、20年以上前に発売された世界で39枚しかないというカードはそのお値段1億8千万円。上には上があるもので世界最高額でギネスに認定されたモノはなんと7億円という。まあ億の単位は兎も角もポケモンカード1パック5枚入りで180円だが、SARなどはこれが数百から数万倍に化けるというから挙ってこれを狙いに行くのもわかる気がする。

そんなワケでポケモンカードをはじめとしたトレーディングカードの市場規模は年々拡大し、2017年では1000億円に満たなかったが、18年に1000億円を抜いて以降21年には1782億円まで拡大してきているという。これに伴いせどりビジネスも拡大しているというが、年々拡大するオルタナティブモノの次期投機対象をいち早く発掘する嗅覚が問われるところか。


出口戦略考

今週の日経紙グローバル市場面で「日銀、甘くない緩和出口」と題し、日銀がこれまでの金融緩和の大号令のもと買い入れたETFが時価53兆円にもなり先週公表された2022年度決算ではその分配金等が1兆1000億円に達し、保有割合が50%を超える国債からの利息収入に肉薄するほど膨張している旨の記事があった。

ここでは出口戦略についても言及されていたが、当欄でも既に3年くらい前に日銀勘定から別の機関等に移管・分離させイグジットを探るというさながらバブル期に証券会社で大流行した所謂「飛ばし」のようなスキームや、相応のインセンティブ付与を前提に売却制限付きで個人への譲渡案などの案を書いたことがあった。

この後者の案はここでも再度取り上げられていたが、文中で「日銀が持つ含み益を有効活用してほしい」と述べていたニッセイ基礎研究所の井出氏自身もETFの出口戦略については政府が財投債でもって日銀からETFを買い取ったうえで個別株に置き換え、入って来る配当金を子育て支援などの成長投資に充てる案などに言及している。

なるほどこれなら年間の少なくない信託報酬も削減出来、個別株となる事で優劣によるリバランスが効く規律も働くことで東証が求める活性化策との親和性も非常に高くなる。同頁では今後金利を上げる政策正常化を進めるのとこの処分という2つの出口政策の両立は簡単ではないとの指摘も書かれていたものの、いずれにせよこういったことを考えてゆく時期に来ていることだけは間違いなさそうだ。


踏み上げ

本日の日経紙マーケット総合面にはFX(外国為替証拠金)取引を手掛ける個人投資家が予想外の円安が継続しているために追い詰められている旨や、日経平均株価と逆方向に2倍の値動きをするETF(上場投資信託)の投資家が日本株の上昇が続いていることで戦略の見直しを迫られている旨が出ていた。

ドル売りのポジションに、日経平均ダブルインバースインデックスであるから日経平均の売りといういずれもショートポジションがこの度のドル高、日経平均高という上げ相場で「踏み」を強いられているという構図だ。確かにFXなど値幅もさることながらスワップポイントも昨年1-3月期に比較すると軽く10倍以上になっているから体力消耗の激しさは想像に難くない。

ちょうど株に置き換えて言ってみれば信用倍率が極端に低くなり高額の逆日歩が日々発生している銘柄を辛抱して抱えている状況という事になるが、日経平均ダブルインバースも円買い・ドル売りポジションも共にまだ踏み切れていないポジションが残っているとみられるだけに、双方共に相場が一旦のピークを迎えるのは最後まで残った向きが降参し踏んだ場面となるか。


株式インセンティブ彼是

さて政府が今月中に決める「新しい資本主義」の実行計画改定案の概要が明らかになっている。この辺はカギとなるスタートアップ振興では株式報酬の一つであるストックオプション(株式購入権)の従業員への付与期間の制約を撤廃するなど、購入権を発行し易くなる規制緩和を検討する旨などが日曜日の日経紙総合面に出ていた。

一方で多くの企業が使う信託型の株式報酬について、直近で国税庁が給与としての税務処理が必要だとの見解を示している。これまでも外資系企業の役員等がストックオプション絡みで国税とヤリ合う場面を多く見たが、企業側としては権利行使で得た株式売却に対し税金は譲渡所得で20%との認識であったものの、同見解では給与所得とし最大55%の税金が課される事で企業想定より税負担が増加する事になる。

冒頭のストックオプションの付与期間の制約撤廃など大企業に比較して福利厚生等の面で見劣りするスタートアップ企業の人材獲得には追い風となるものの、この度の国税の見解で信託型を導入している各社に見直しの動きが広がるのは想像に難くない。財務に余裕の無い企業でも活用し易い同制度を新たに導入する企業は近年増加し続けているが株式インセンティブの在り方が改めて問われるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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