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あれから10年とこれからの金

約1週間前に束の間の1,200ドル大台を回復した金が週を跨いで再度の大台割れとなっているが、昨日の日経産業紙には「有事の金輝き失わず」と題し国際市場に不透明要素が充満するなかでも低迷している金も、一方で実質金利が上昇しても下げ渋るなど新たなリスクを背景に色褪せていない旨が書かれていた。

ちょうど一週間前にも当欄ではリーマン危機から10年目という中での金を取り上げたばかりだが、このリーマン危機時も換金売り一辺倒からS&P500等を凌ぐ急回復にスポットが当たったものだがその後も回復のキーとなったのは危機後から低下を続けた米実質金利にあっただろうか。

冒頭の通り地政学リスク含む新たな不確定リスクが蔓延しているなかで当の実質金利は昨年末あたりから上昇場面も見られ微妙な均衡となっているが、コモディティーから金融商品の側面が色濃くなりその変動要因もより多層化してきている事もまた現状の膠着の背景とも言えるか。


リーマン危機10年

今週の日経紙では世界を金融危機に陥れたあのリーマン・ブラザーズ破綻から今週はちょうど10年という事で、当時の検証から次の危機への教訓を探る記事が連日掲載されている。株式関係の検証はもとより、コモディティーも昨日の同紙商品面には多くが当時より安くこの10年での構造変化も暗示していると記してある。

金融危機当初は株式も商品も売りが殺到したが、今なお金やWTIそれに銅などのコモディティーはその後の軌跡と併せ様々な構造変化の解説が為され易い為に登場頻度も高くなっている。CRB指数はリーマンショック前の史上最高値更新から約5割の低下を見せているが背景の一部にはシェール革命や遺伝子組み換え技術もある。

ここ新興国の通貨安を伴う米国の好景気持続観測で上値の重い金も、当時の換金売りからの立ち上がりではオルタナティブ投資を背景としてのETFの存在感が増した筆頭格だろうか。今後取り巻く環境はやはり利上げがキーとなって来ようが、そこに実需等の要因も絡み逡巡する投資マネーの方向も決まってくるか。


現引き事情

さて、先週末の日経紙商品面には「現物受け渡し急増」と題して、東京商品取引所の金先物現物受け渡しが先月末時点で2462枚と2015年12月以来の高水準となるなど急増している旨が書かれていたが、その背景には金の先高シナリオが崩れ損失が出る差金決済を避ける投資家が増えた事がある模様。

元々短期の差金決済目的から中長期へスイッチといえば聞こえはよいが、株の信用取引よろしく値下がりの度に段階的に追いかけて来る追証や絶対期日から解放される手っ取り早い処置だけに、それらの回避で現引きする手段を取る向きも居るが要は現物を高値で買った塩漬けという事。

一縷の望みを賭けてか、記事の末尾には来年10月の10%への消費税引き上げ後に売却し増税分2%相当の利ザヤにも期待するような事も書いてあったが、もはや思考もこうなると当初の目的から既に逸れているだろう。それは兎も角も消費税10%での利ザヤ拡大に期待する向きといえばやはり密輸組織だろうか。

直近では大阪拠点の金の密輸グループが大阪国税局の税務調査を受け、香港の密輸業者から報酬として支払われた手数料ほかに対し無申告加算税含む追徴課税額が約8億5千万円に上った記事を見たが、10%の増税では現況から25%も旨みが増すだけに密輸の動きが一段と活発になるのは想像に難くなく政府の対策強化は焦眉の急の事態となってきた。


売られる金に買われる金

さて、昨日はトルコリラ急落で外貨ベースでの割安感が大幅に増した最大都市イスタンブールなどの高級ブランド店に連日外国人旅行者が長蛇の列をなして殺到している旨を書いたが、当然ながらその裏でタンス預金目的等で人気があった金貨はここ1週間で約35%値上がりしたとされ一般は購買力低下が起きている模様だ。

ところで金貨といえば、一方で米国の経済制裁の対象となっている反米国では金の存在感が増している旨が先週末の日経紙商品面に出ていた。中でも個人の金買いが飛躍的に伸びているのがイランでWGCによれば今年1-6月の地金やコイン需要は前年同期に比べて3倍に増えた模様。

通常は通貨安が進むと冒頭のトルコのように現地通貨建て金価格は上昇し買い手控え現象が起きるが、今回は経済制裁再会を控えての更なる金価格上昇見込みを背景に買いが旺盛になっているというこれまで培った肌感覚に因る現象が出ている。また他国ではロシアも昨年末からわずか半年で中央銀行が105トン積み増した模様。

米国債売却と併せ外貨準備における金積み増しで米国依存度を低下させる狙いだが、当の金価格は1週間前から1年半ぶりに1200ドルの大台を割ってきておりロシアはじめとした中央銀行にとっては好都合とも言える。今後のディスクロで各国中銀の保有状況がどのように変化しているのか興味深いところである。


安定の貴金属ETF

さて昨日触れたトルコリラ急落だがその余波はコモディティーにも及び、この急落を受けユーロ安・ドル高が加速、ドル相場と逆相関の金からの資金流出でニューヨーク先物の週初終値が前週末比約20ドルほど安い1トロイオンス1190ドル台とほぼ1年半ぶりに1トロイオンス1200ドルの大台を下回った旨が本日の日経紙商品面に出ていた。

1年半ぶりの安値示現という一方で、この金などを中心とし東証に上場されている金の果実シリーズを筆頭としたETFなどの貴金属投資が、実物資産という観点から不測の事態に資産全体の目減りを防ぐ「守り」の役割なども期待されじわりと浸透している旨が週明けの時事にも出ていた。

このシリーズ、主力の金が上場した8年前には当欄で「売買代金は1億3千万越えとなかなか。この手では首位を誇る「SPDRゴールド・シェア」の同日の売買代金が約7億7千万、大証に上場している「金価格連動型上場投資信託」は約3億8千万、同じ大証の「国内金先物価格連動型上場投信」が約1,600万、そして「ETFS金上場投信」が約6百万であった事を考えると今後にも期待が持てよう。」と書いていた。

あれから8年、その純資産残高は588億円となり実に上場時の30倍近くに膨らんでおり、これを含め銀、プラチナ、パラジウム4商品のそれも今月アタマの時点で736億円と上場時から20倍を超えるなど軌道に乗った感がある。市況に左右されない安定感が要だが、世界規模で見ても金ETF残高はこの2年半で5割強増加しており今後も要注目といえる。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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