48ページ目   株式

次世代議決権行使

さて、先週末の日経紙総合面では「株主総会、ネットで出席」と題し、業の株主が議論の視聴だけでなく質問や議決権の行使も法律的に問題なく出来るようにするなど、インターネット経由で株主総会に出席出来るよう株主の利便性を高め形骸化しがちな株主総会の活性化を狙うべく経産省等が企業向け指針を作る旨が出ていた。

総会シーズンともなると彼方此方の企業から丁寧な会場案内図が記された招集通知が送付されてくるが、一寸遠隔地ともなるとなかなか躊躇われ更に昨今のお土産自粛機運から招集通知には赤文字でお土産のご用意はございません等ときっぱり謳っている通知もあり、これらが更に腰を重くしている部分もあるか。

これまで株主総会に出席できない場合は郵送で議決権行使というパターンであったが、もともと個人株主の行使比率は3割程度が相場、つまり個人株主の3分の2が議決権を行使していない状況であった。そんなワケで議決権を行使してもらいたい企業のニーズを背景に昨年から議決権行使をスマホで行えるサービス等が開始されているが、これらに枝葉を持たせることで行使率のアップなど総会の活性化に繋がるかどうか今後の進化にも注目したい。


取引所もスピードバンプ

さて、本日の日経紙金融経済には「取引速度あえて遅らす」と題し、HFT(高速取引)業者に対する他の投資家の不平等感を解消する事で活発な取引に繋げる狙いとして、世界の取引所で投資家の注文を受けてから執行までの時間を敢えて遅らせる「スピードバンプ」なる仕組みの導入が広がっている旨が書かれていた。

そうした動きに対し東証としてはテイカー型のみ不利になる差別する仕組みの導入には慎重姿勢というが、既に一般との機会不平等が混在するなか昨年の今頃にはロシア系の新興勢力HFT業者による東証での売買全体に占める比率が1割を超えている可能性も高い旨を書いた通り主力級プレイヤーに台頭した存在の扱いは課題か。

もう一つ当欄では今から2年前だったか、そのシステム開発負担の重さを背景にHFT大手米バーチュ・フィナンシャルが同業のKCGホールディングスを買収するなど再編機運から高速業界も淘汰の波が押し寄せてきている旨を書いた事があるが、このスピードバンプの実施が広がりを見せれば淘汰の波に更なる拍車がかかるのは想像に難くないか。


その先の消却

先週末の日経紙投資情報面には「自社株の消却 倍増」と題して、同社調べで自社株を消滅させる消却額の合計が約5兆3000億円と前年度の2倍に増えて自社株買いの金額を上回るなど、自社株買いから更に踏み込んだ消却が相次ぎ斯様な動きは今年も継続しそうとの旨が書かれていた。

ところで当欄では先月に政策保有株を圧縮する動きを取り上げたが、先週は時価総額が上場時の3倍強になったリクルートホールディングス株に政策保有株として保有する幅広い取引先からの売り圧力が俄かに高まっているなか、この受け皿として自社株買いを検討している旨も報じられていた。

背景には国内外の投資家が資本効率の改善を要求しROEを重視する波に乗る動きがあるが、これが意識されるばかりに資金が刹那的にこれらに振り向けられているパターンも一部見られた。上記のリクルートも資金の使い道のプライオリティとしてはM&Aを軸とする成長投資としているが、今後其の先の余力の部分をどう生かしてゆくかこの辺が各社共に課題となりそうだ。


期待とジレンマ

本日の日経紙金融経済面にはゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントが、世界でETF市場が拡大するなか日本でも需要が高まるとみて、月内にも同アセットが注目するテーマ関連に絞り込んで投資する5本の販売を始めるなど国内でETF事業に参入する旨が出ていた。

このETFといえば先月も日中のETF相互上場で想定を超える需要が集まっている事で中国マネーの取り込みが期待されているが、一方で個人投資家の人気が高い所謂ブルベア型ETFは昨年2月のVIXショックが尾を引いて金融庁や東証などの当局が新規上場に慎重になっている旨も報じられている。

言われてみれば確かにこの手の新規モノはパッタリと見かけなくなったが、当時はS&P500のVIXインバースETNが早期償還となり、インバース型のVIX短期ETNに至っては一気に17分の1まで暴落するなどオプション市場並みの大荒れの波が襲ったものだが、このボラこそ人気を集めている部分なだけに投資家保護と市場活性化というジレンマをどう解いてゆくかが課題か。


ESGとGPIF

さて、先週末の日経紙総合面には「ESG投資に3.5兆円」と題し、公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が環境や企業統治などを考慮したESG投資を増やし、5日に発表した2018年度末の資産残高が3兆5銭億円に達し1年前の2.3倍に増えた旨が出ていたがこの辺は先月末の当欄でも少し触れていた。

ちょうど同日の投資情報面にもGPIFの3月末時点での保有銘柄リストが公表されていたが、なるほど2018年3月末比で上昇が目立った武田薬品工業はサステナブルバリューレポート2018が環境省や「地球・人間環境フォーラム」主催の「環境コミュニケーション」で優秀賞を受賞するなど取り組みやディスクロが高く評価され、三菱商事の方はESGの観点から企業のパフォーマンスを図る目安として多数の投資家に参照されているFTSERussellが開発したインデックスの構成銘柄になっている。

GPIFの18年度運用利回りは1.52%で運用指標である1.92%を下回ったというが、ESGは短期目線で顕著な効果が出る性質のものではない。短期といえば近年はヘッジファンドの中でも成績が思惑外れとなったところも見受けられたが、こうした短期指向の一部は企業へのプレッシャーを通じ実態経済への悪影響を指摘される部分もあった。

それだけにESGの流れはこれらショートターミズムの問題解決にもつながると期待の声も一部にあがっているが、何れにせよESG投資は投資先の長期的な成長機会を捉えることにあるため長期にわたって巨額な公的資金を運用するGPIFがESGに着目する事はやはり自然な流れということか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2025

4

1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30