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優待もお土産も

さて、先月にピークを迎えた株主総会については今後その形の在り方など先に取り上げた通りだが、三菱UFJ信託銀行によればこの株主総会で新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐべく来場者へのお土産を取り止める企業が今年は現時点で1394社と前年の2.7倍にのぼる旨も過日の日経紙夕刊一面で取り上げられていた。

ただでさえ新型コロナウイルスによる企業業績への打撃によりこれまで提供してきた株主優待を休止や中止するなど決めた企業が5月末迄に約10社に上る旨も以前に書いたが、総会の招集通知に「当日のご来場はお控えいただきますよう強くお願い申しげます」とか、「お土産のご用意はございません」などそれも赤文字で書かれているのもこれだけを見るとおどろおどろしいものだ。

しかし斯様な株主優待休止からお土産取り止めまでこれら目当ての個人投資家にとってはまさに受難の年となった格好だが、ここ数年持ち合い解消促進の後の受け皿として個人の存在というものもクローズアップされてきた経緯があるだけに各社共に今後はコロナ後を見据えた工夫も求められるところか。


新規導入か廃止か

今月に入って23000円台超まで回復した日経平均だが低PBRモノは依然として多い。この辺に絡んでは先週末の日経紙投資情報面にてM&A助言レコフ調べの買収防衛策を新たに導入する企業がPBRの低い企業などを中心に5月末時点で7社と前年を上回り、15年にコーポレート・ガバナンス・コードが採用されて以降で最多となった旨の記事があった。

買収防衛策といえば最近では東芝機械がアクティビスト対策で昨年廃止した買収防衛策を改めて復活させた事例が記憶に新しいが、世の趨勢としては経営者の保身に繋がるなどとして総会での反対票も増加するなど批判が強く、導入済み企業は15年比で4割減となるなど近年では廃止が相次いでいるのが現状だ。

先に政府による安保上重要な日本企業への出資規制強化など為されているが、それがこの
コロナ禍のあおりを受けた春先の株価急落などから他にも技術力を持つ企業を標的とした買収や出資の動きが警戒される。確かにPBRが極めて低いまま放置されている企業側も問題だが、コロナ禍でガバナンスと対企業影響力行使との天秤が改めて注目される。


幻の増資

さて先週末の日経紙総合面には「破綻ハーツ、増資頓挫」と題し、先月に破綻したレンタカー大手のハーツが投機熱で上昇した株価をテコに米中堅のジェフリーズ証券を主幹事として増資を計画しようとしたものの、SEC側がこれを問題視した事でこの増資計画が中止となった旨の記事があった。

国内でも先週は破綻して東証での最終売買を終値4円で終えたレナウンが利鞘狙いのイナゴ?の群がりから売買代金を約5倍に膨らませていたが、このハーツも上記のSEC委員長が同社に言及した当日も売買停止前に急騰を演じ、受け皿となった新興ネット証券のロビンフッド等では同社ホルダーが破綻から2週間で10万人以上増えたという。

かつて国内でも持ち帰り寿司の京樽が破綻後に急騰しついには破綻前の株価をも抜いた珍事があったが、もっと近年のところではスカイマークも最終売買日が14円と驚きの二桁終値、JALやライブドアも然りで常識で考えれば無価値になるモノへ時に驚きの商いが集まるケースがある。冒頭の増資が仮に叶えば歴史に残るファイナンスとなっただろうが、こんなところにも緩和マネーの膨張を背景にした珍事が及んでおりまた別の幻も今後出て来ようか。


色褪せないテーマ

本日の日経平均は新型コロナウイルスの感染者数が東京で5月5日以来の高水準となった事や、時間外取引のNYダウ先物が下落した事もあって後場から下げ幅を広げ大幅に3日続落となったが、ファーストリテイリングや東エレクなど値嵩群が値下がりに寄与する一方で値上がりの方は1位の塩野義や2位のアステラス薬などコロナ関連が寄与していた。

コロナ関連といえば上記の通り日経平均が800円近く下落するなかでやはり目立っていたのは約20%の値上がりを演じたナノキャリアか。つい2ヵ月前の100円台が先週末の年初来高値まで約4.4倍に化けしている。同じくマザーズのアンジェスもまたコロナ関連で先駆したがこちらも2月安値から約6倍に大化けている。

他にもこれまで数度取り上げたコロナワクチン開発の黒子タカラバイオは先週にストップ高も交え7年ぶりの高値で年初来高値を更新、その商いもナノキャリアと共に発行済み株式数に迫る破竹の勢いだ。仮に今後世界規模で感染拡大となっても経済的損失や財政負担を考慮するに再度のロックダウンは現実的に疑問符が付くだけにこのテーマでまだ暫く回転の効く展開が続くか。


時価総額下剋上

先週の日経紙投資情報面には「伊藤忠時価総額 初の商社トップ」と題し、伊藤忠商事の時価総額が2日に終値ベースで三菱商事を上回り初の商社トップとなった旨が書いてあった。背景には資源価格の急落で資源色の濃い三菱の先行き不透明感の強まるなか、生活関連ビジネスに強い伊藤忠が相対的に選好されたというもの。

ところで東証マザーズ指数が2018年12月以来、約1年半ぶりに1000ポイント大台を回復した旨を当欄では先に取り上げていたが、上記の逆転劇に先駆けこの東証マザーズ指数の時価総額も初めて東証2部を上回っている。こちらもまた伝統的な製造業の多い2部の先行き不透明感の強まるなか、新生活様式に対応した成長力が評価されるマザーズが選好された格好の表れだ。

しかしこの両ポスト、昨年末も当欄で「逆行と大義名分」と題し1部への移行に必要な監査法人の適正意見が付いた有報が2部は5年分など50年前から変っていない点など新興市場と比較するに旧態依然の様を書いたが、このコロナ禍の影響を受けた上場廃止基準等含め来る市場改革を見据えても新旧交代感が改めて意識されるところか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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