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逡巡と駆け込み

さて、金融庁の金融審議会は今月中に東証の市場改革を巡る提言を纏める方針となっているが、当欄でも今年の春先に「肥大化に歯止め」として触れた通り東証1・2部・新興市場の4市場体制を3市場体制に再編、TOPIX(東証株価指数)も銘柄を絞り込む事などが盛り込まれる可能性がある。

この再編話が出始めてからの1年間で他市場から東証一部に移行する企業がその前の1年間と比較し3割急減している旨の記事も過日の日経紙にて見掛けだが、背景には改革後の上場基準が不透明な事も影響している模様だ。一方でこれに適わずともプライム市場で上場維持が叶うとの思惑で駆け込みを目論む動きもあるという。

プライム市場創設について前回も一寸触れておりどういった結論になるのか注目だが、上記の通りTOPIXなどにも着手となればそれこそこれを信奉してきた公的年金のスタンスにも変化が現れるや否や、日銀も日経平均型を減らしてまでTOPIX型を増額し買い進めてきたETFの去就にも今後は関心が向かおうか。


改正と投資誘致

昨日の日経紙社説には「ガバナンスの実効性上げる会社法改正に」と題し、情報開示の負担等の課題は残るものの政府が株主総会を形式ではなくより対話の場にする見直しや、株主一人が株主総会で提起できる議案数を10に制限するなどの会社法改正案を閣議決定した旨が書かれていた。

ココには過去に野村ホールディングスに対し社名を野菜ホールディングスに変える等の提案が大量に出された旨が出ていたが、これ以外にも取締役の社内呼称はクリスタル役?とするとか、オフィスの便器は全て和式とする等々100項目にわたる一般的理解を超える株主提案が為されていた記憶がある。

今回の改正案でもまだ米などと比較するに緩いとする意見がある一方、日弁連などは提案権の不当制約等でまた意見を異にするようだが、概ねガバナンスの潮流に合せるような改正案となった事で改めて自社のそれを再考する機会となり、投資家にもこの強化をアピールし海外からの投資を呼び込める狙いが叶うかどうか今後も注目したい。


アナウンス効果の先

本日の日経紙マーケット面には「くすむ自社株買い効果」と題し、東証一部上場銘柄を対象に自社株買い発表後の株価騰落率の累計値を集計した野村證券の調査で15年から18年は発表から120営業日後に市場全体よりも6%高となった一方で、今年は4%高にとどまり単にアナウンスだけでは買われにくくなるなどその効果が薄れている旨が載っていた。

これまでコーポレートガバナンス・コード導入で持ち合い株の最後の炙り出しが促進されてきている旨を書いて来たが、それを機に自社株買いも連鎖的に起き今年4月から9月の自社株取得枠の設定は前年同期比9割増の5兆円超となり、上期の設定枠は年度全体の5割弱という事から想定するに今年は10兆円突破の可能性が高い旨も昨日の日経紙に出ていた。

というワケで今年度のそれは実に日銀によるETF買い入れ目標をも上回る見込みというが、今年2月に当欄で自社株買いに触れた時のベンチマーク指数を上回ってきた勢いも冒頭の通りやや陰りが出始めたという感か。バリュー株が少なくない当該企業の特性から最近の地合いに左右された部分もあろうが、今月以降も発表が相次ぐ自社株買いはその手法等がより吟味される事となろうか。


IPO揺り戻し

さて、先週末の日経紙マーケット面には「IPO懐疑 国内でも」と題し、国内で期待された大型案件の上場が延期になったり公開価格が当初想定よりも下がったりする例が相次ぐなどIPO(新規株式公開)が相場の牽引役から不安材料になりつつあるなど転換点を迎えている旨が載っていた。

公開価格が当初想定よりも下がったといえば、先月マザーズに上場した大阪大学発のバイオベンチャー、ステムリムが記憶に新しいところ。今年最大級のIPOと鳴り物入りでの登場であったが、その公募・売り出し価格は当初想定の2,370〜3,730円から仮条件引き下げを経て最終的には仮条件下限の1,000円まで下がる結果となった。

果たしてというか同社の初値はこの公開価格をも下回り先週にはザラバで700円台を付け年初来安値を更新している。会社側も調達額予定が大きく変わっただろうが、一連の経緯で一部投資家からの同セクターへの実態にそぐわない公募価格決定のやり方へ疑問府が付く。IPO後半戦も酣だがこれまでの揺り戻しの中で企業価値評価尺度に向けられる目も厳しくなってくるのは想像に難くないか。


PTSでマル信

本日の日経紙金融経済面には「株売買 東証集中に風穴」と題しこれまで東証を通してしか売買出来なかった信用取引を、SBIジャパンネクスト証券とチャイエックス・ジャパンの運営するPTS(私設取引システム)に対し金融庁がこの取り扱いを先月末に認可した旨が書かれていた。

PTSのマル信に関しては当欄ではちょうど3年前に東証が閉まっている早朝や夜間も私設取引所などで信用取引が出来るようにする規制緩和に乗り出す旨を取り上げた事があったが、夜間などの時間帯は叶わなかったものの東証と同時間の取引が認められるに至った事でネット証券も挙って取次開始の運びとなる。

マル信といえば前回触れた際も書いたが個人投資家の約7割がこれを利用しているとされており、ネット証券はSOR(スマート・オーダー・ルーティング)サービスを提供する事から競争原理が働き、これら活性化の度合いによってはPTSのネックとなっていたリクイディティーの問題にも繋がってくるだけに今後が注目される。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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