52ページ目   株式

利便性向上の功罪

さて、昨日の日経紙には株式の取引において個人投資家でも1つの大口注文を自動で幾つかに分割して出したり、指値の気配値が出るまでは注文を出さず気配が出たら即時に発注できるようにするなど、アルゴリズム取引の一種で売買注文が効率的に成立し易くするなどプロの機関投資家並みの注文方法を利用できる仕組みの導入が相次いでいる旨が書かれていた。

思えば黎明期のホームトレードなど出た時は自身で注文が出来る事自体が衝撃であったが、板にしても先ず電話して担当営業マンに見てもらうか店頭に置いてあるクイックでくらいしか見られなかったモノが、ネット証券の台頭で目の前に並ぶという夢のような状況になり手数料も信じ難いほど安くなった事も上記のようなモノが出て来るともう昔のような錯覚に陥る。

一方でリアルタイムに板状況を確認出来るフル板の引け成り情報などを悪用し株価を操作して鞘抜きしていた輩が、証券取引等監視委員会から金商法違反の偽計取引にあたるとして、課徴金納付命令を出すよう金融庁に勧告されていた旨を週明けの日経紙で見掛けた。飛躍的な利便性向上のバイプロ?でこうした輩も排出されるようになったが、懲りない面々は日々次の悪知恵磨きに余念が無くいたちごっこの構図は変らない。


今年最大のIPO

本日の日経紙一面を飾っていたのは「ソフトバンク投資会社に」と題し、ソフトバンクグループが昨日東証からIPOの承認を受けた旨の記事であった。12月10日に正式価格を決め19日に東証に上場のはこびとなる予定だが、その証券コードはかつての日本テレコムの(9434)と懐かしい。

今年8月には当欄でも新たなベンチャーファンドと題し、「〜ソフトバンクグループも投資会社としての色合いが一段と濃くなってきた感もある。」と書いていたが、果たして今回の上場で携帯子会社の経営を独立させると同時に、本体としてはやはり投資会社としての性格を強めてくることになるか。

さて、親子上場という長年の日本の特異な慣行にあってその上場後もグループが6割強の株式を保有する筆頭株主に君臨する訳でいろいろと東証もジレンマがあっただろうが、JPXの自主規制法人が上場承認した背景にはソフトバンクの経営の独立性は担保されているとの判断があったのだろう。何れにせよ逆風下の成熟市場で、今後投資と配当のバランスなどどう図ってゆくのかが注目される。


サイダーと純投資

週明け本日の日経平均は先週末の米株式の急反落を受け寄り直後は売られたものの、あと円安や上海総合指数の反発を支えに切り返す展開となった。個別では決算を手掛かりにストップ高するもの、大幅続落となるものなどあったがミネベアによるTOB価格にサヤ寄せしたユーシンは当然ながら上限での往来相場となっていた。

ところで同社株に関しては、先週末の日経紙投資情報面にて「ユーシン株 不自然な動き」と題し、TOB実施を発表する引け後より前の前場から一気に動意付いたのが不自然視されJPX傘下の自主規制法人が同社株に買いを入れた証券会社から顧客データを取り寄せるなど具体的な調査に着手、不正が疑われる場合には証券取引等監視委員会への報告などを視野に入れている旨が載っていた。

前回は富裕層に対して国税庁などが次々と包囲網を張ってきている旨を取り上げたが、証券市場における確信犯的な売買も昨今は次々と暴かれてしまう確率が高くなってきた。何故か漏れる情報を基にインサイダー売買がヤリ放題だった古き良き?時代は今は昔、ここ数年で割に合わない違法行為の一つになってきている。

ところで同社といえば旧村上ファンド系のエフィッシモ・キャピタル・マネージメントが、2ヵ月ほど前に保有比率を5.00%から6.03%に買い増した変更報告書を提出しており、かつての立飛企業MBOに乗じた売り抜け成功を思い出したが、今回も業績急降下やトップ辞任という想定外の障害があったもののまたまた上手くイグジットを決めたなという感じである。


二頭の脅威

本日の日経紙マーケット面には「クジラ再浮上の思惑」と題して、ここ久しく話題に上らなかったクジラことGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の株買い観測が先月の株価急落を経て以降先週あたりから出回っている旨の記事が載っていた。

GPIFといえば9月に今年度の運用方針の変更を決定、厚生年金基金の代行返上や解散の加速を背景に短期資産が増加しておりこの辺のシフト思惑というところもあろうが、両者共にそのイグジットに関しては毎度憶測を呼び現況でも大企業の大株主となっている現状に関して間接的利益相反やらモラルハザードに絡んだ議論が毎度喧しい。

週明けの当欄では日銀のETF買いを書いたが、大規模な金融緩和策とポジティブな運用姿勢の結果としてGPIFとの両者で上記の通り多くの大企業の大株主に名を連ねる構図が起きている。コーポレートガバナンスコードの導入で持ち合い解消機運が昨今は盛り上がりつつあるが、反面こういったところが大株主に躍り出てくる様はやはり外から見るに特異に映るのは否めないか。


並存解消機運

昨日の日経紙には「上場区分見直し着手」と題して、JPX(日本取引所グループ)傘下の東京証券取引所が一昨日に上場市場の在り方を検討する有識者懇談会を設置すると発表した旨が載っていた。東証と大証が現物株市場を統合して5年が経過、現在の4つの市場の再編を検討するなど投資家が使い易い新たな市場区分を模索するという。

2部市場と二つの新興市場の区別も解り難いとの指摘もあるようで、個人的には東証にぶら下がるマザーズ、そしてジャスダックはカラー的に2部寄りのような気もするが、この新興市場については当欄では年明けに「新興統合」と題してジャスダックとマザーズの両者を統合する方向で検討に入った旨を取り上げている。

仮に新興市場だけを統合した場合約1000社、その時価総額は約16兆円規模になるが、カバーされていないような知名度の低い銘柄も日の目を浴びるような機会を得て企業側、海外投資家相互のメリットが期待出来る。上記の通り棲み分けの明確化の色が薄れ、近年では海外勢や機関投資家の資金が流入してきている現状から一層その機運が到来したというところか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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