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VIXショック

さて、今週は世界同時株安と波乱の週であった。週明けのNYダウは1日の下げ幅としては過去最大を記録し、それを受けた日経平均は週明けの大幅続落に続き一時1,600円強の暴落となりこの一連の動きで日米の株式時価総額は先月末に比べて約300兆円が吹き飛んだ計算となる。

こんな相場になるとやはり破壊的な威力を発揮するのが毎度ながらオプション市場で当限のディープアウト20,500円のプットが先週末にたった1円だったものが火曜日はザラバ220円まで暴騰、キリのいい20,000円ドタでも週明け592円の大幅続落でも期日まで数日と限り無い可能性の無さを反映し1円だったものが翌日にはザラバ155円まで暴騰するなど仮想通貨バブルどころではない大化けを演じた。

ところで今回暴落を演出した背景にはVIX指数の存在が言われているが、上記のセルボラが予想外に裏目に出たオプション取引同様にVIX絡みのETFやETNでも目論み外れのヘッジファンドや大手金融機関が一気に損失を被った模様だ。日経紙夕刊ではクレディ・スイス発行のインバースVIX短期ETNが前日の高値118ドルから一気に7ドル前後まで急落し期限前償還の憂き目に遭った旨が載っていた。

期限前償還といえば東京市場でもVIXと逆の値動きをする「NEXT NOTES S&P500 VIXインバースETN」が、先月の11日には40,150円の高値を付けていたが昨日の終値は1,146円と実に97%安と対象指数が既定値幅を超える下落となった事で早期償還されることが決定し朝方から取引停止措置が取られたが、適温相場に浸る平和イメージの商品も時に牙を剥く事を今さらながら改めて思い知らされたような週であった。


イナゴ化

本日の日経平均は米株の大幅続伸や好決算にも無反応で小幅ながら4日続落となったが、個別ではベルパークやオリジナル設計が売上高や営業利益の上振れを囃して後場から突如急騰、ベルパークは実質的に上場来高値を更新、オリジナル設計はストップ高に張り付いたまま引けることとなった。

両者は引けまで堅調持続となったものの、先週末の市場では後場から医療用データ管理システムのファインデックスがキャノンメディカルシステムズと業務提携の報道が出て突如突飛高するも、そのわずか数分後には急騰した約60円幅が往って来いと軽いイナゴタワー形成となったが同様の動きは前週に有機EL関連で突飛高したケミプロ化成にも見られた。

同株が動意付いた翌日の日経紙デジタルトレンドにはちょうど「株価動揺「イナゴ」の塔」と題し派手に急騰急落を演じた麻生フォームクリート株その他の銘柄が挙げられていたが、ネットの劇的な普及や即時発令型?に変貌してしまった規制も相俟って銘柄に絡む投資家層も変わり、かつての福助、兼松日産や日本カーボン等々に見られた空売りを限界まで誘って踏み上げという構図は思えばもうセピア色の風景と化している。


重要提案行為

昨日の日経紙総合面には「物言う株主、再び攻勢」と題して、企業の経営に影響を及ぼす狙いがある「重要提案行為」を目的にアクティビストが株を大量保有するケースが相次ぎ、昨年はその数が103件と08年以来9年ぶりの高水準となるなど世界的なカネ余りや株高で資金力を増し日本株市場への攻勢を再度強めている旨が書いてあった。

上記のカネ余りの背景の他にも15年から導入されたコーポレートガバナンス・コードも活動の追い風となっている模様だが、この辺が窺えるのがやはり昨年の黒田電気の株主総会において旧村上ファンド系の投資ファンドである大株主のレノが提案した人事案が8年ぶりに承認された出来事が記憶に新しいところ。

先にTOBの話で取り上げたアサツーDKや日立国際電気も、アクティビストである英シルチェスター・インターナショナル・インベスターズやエリオット・マネジメントがそれぞれ絡み買収価格の低さを指摘していたが、目下のところジャスダック市場の東栄リーファラインも上記の旧村上ファンド系の大株主がTOB価格の低さを指摘し一先ずMBOが不成立となっている。

確かにPBRが1倍を切る現状ではMBOに応じる株も集まりようが無いが、異端扱いされていたかつてはそんな検討に値する提案さえ賛成票を投じるのが躊躇されていたものがコード導入によって壁が崩れた功績は大きい。キャピタルゲイン効果も無視出来ないモノもあり今年もアクティビストの動向は益々注目されるところ。


新興統合

本日の日経平均は史上最高値を更新し続けている米株高を背景に年初来高値を更新し、ザラバながら24,000円の大台に乗り1991年11月以来、約26年2か月ぶりの水準となった。その裏で今週はジャスダック市場もまた一昨日まで9日続伸となり、1990年7月9日に記録した高値を上回り83年11月の算出開始以来の最高値を付けてきている。

ところでジャスダックといえば、東京証券取引所を傘下に持つJPX(日本取引所グループ)が同じく新興企業向け株式市場マザーズとで両者統合する方向で検討に入った旨が年明けに報じられている。これら両者は東証傘下になる以前はそのカラーというか棲み分けが比較的明確化していたものだが、現況ではその色も薄れてきていた感は否めない。

JPXは今年半ばから3年展望を示す中期経営計画を新たに策定するのに合わせ再編の検討を本格化、単純に時価総額の規模で比較すればジャスダックはマザーズの約倍だがこれらを統合し約1,000社、時価総額約16兆円規模の市場で世界有数の新興市場である英AIM等を見据え、日本の新興市場の位置付けを明確化させ市場の活性化を狙うと読売紙でも書かれていた。

これまで新興市場は東証一部に比べて海外投資家や上場企業の参加が未だ限定的といわれてきたが、算出以来の最高値を付けて来たジャスダック市場など最近では海外勢や機関投資家の資金が流入してきている旨を日経紙では伝えているが、統合でこうした動きを更に促す事が出来るかどうか注目される事になろう。


師走のIPOラッシュ

昨日は今年最大のIPOと注目された佐川急便を傘下に擁するSGHDがはれて上場となったが、注目の初値は公開価格1,620円に対し約17.3%高の1,900円ドタとなり、同じく一部に上場となったアパレルのマツオカコーポも公開価格を46.2%上回る3,800円で初値形成、マザーズでは不動産のグローバル・リンク・マネジメントが公開価格2,620円に対して実に約2.3倍となる6,130円で初値と何れも好スタートを切った。

また本日はマザーズにサービスのエル・ティー・エスが新規上場となったが買い気配のまま初値は持ち越し。同様に公開価格2倍以上となる気配値上限で値が付かず持ち越しとなっていた昨日ジャスダックに上場の画像処理検査装置のヴィスコ・テクノロジーズは実に公開価格の約3倍で本日初値を形成となった。

こうした事も背景に冒頭のSGHDも本日は大幅続伸となっていたが、過去1年間に上場した企業の値動きを示すQUICK IPOインデックスは11年2か月ぶりの高値水準となっている。今年の初値平均も公開価格の約2倍となっているが、いずれにせよ3年ぶりのIPOラッシュとなるこの師走、個人マネーの循環が効き一段の市場底上げに繋がるかどうか残りのIPOも注目される。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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