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根強い短期嗜好

さて昨日は貴金属系ETFなどコモディティモノが中長期目線で人気がある旨を書いたが、株式モノとでは一寸事情を異にすると思ったのが一昨日の日経紙市場点描にあった日本株運用のETF大手ウィダムツリー・ジャパンを提供しているナスダック上場の大手ウィダムツリーが、3年前に都内に構えた拠点を来月末までに手じまうというスピード撤退の記事か。

理由としては長期保有を促したい同社の戦略に対し、国内ではレバレッジ型など長期投資には不向きとされるETFに人気が集まるなど同社の戦略と相いれない事が背景にあったようだ。この辺に関し当欄では2年前の今頃に「本来ETFは長期向けなものの、レバ系への傾斜が鮮明な日本は投資家の短期嗜好が顕著に表れているか。」と書いていたが、果たしてという感じだ。

ETFといえばこれまで200銘柄以上が上場しているにもかかわらずレバレッジ型の一部を除けば売買高が極端に少なかった事で、リクイディティーを高めるために先月から東証ではマーケットメイク制度が導入されたばかり。見切り千両で撤退する外資と進行中の改革、何れも粛々と為されているがNISA等とも併せ今後どう啓蒙してゆくのかにも懸かっている。


ビールも虫も

さて例年この時期には所謂シーズンストックとしてビールやアイスクリーム、家電など猛暑なると需要が拡大するとの思惑から関連モノの株価上昇が風物詩なのだが、先週末の日経紙には「夏銘柄 下落の異変」と題し今年は災害レベルの猛暑が続いた為に夏商戦への恩恵が薄まりこれらの銘柄が逆に軟調を強いられている旨が出ていた。

本日のマーケットでも大幅に4日続落という悪地合いの要因もあるものの、清涼飲料ポストからはコカ・コーラBJHが年初来安値を更新、またエアコン関連ポストではビックカメラも年初来安値を更新となっている。代表格のビール株もアサヒやキリンHDの主力が6月末比で10%以上の値下がりの憂き目に遭うなど今年は確かに一寸異例の光景だ。

これらビール株は気温が35度を超えると消費が伸びなくなるという事だが、同紙では他にアイスから氷菓への需要移行から乳業ポスト、外出の手控え警戒感から東京都競馬等も弱いとしている。また一覧には防虫関連もあげられていたが、これらはビール消費ではないが35度を超えると蚊は飛ばなくなり死亡率上昇で減少するというというデータがあるらしい。

これらフマキラーやアースなど先喰いした分、猛暑になってからの失望売りも五月雨的に出ているが書き入れ時の思惑外れで各社も穏やかでない。今年はペットの熱中症まで注意喚起が出て近年はセミが鳴く時間帯まで変化しているというが、シーズンストックの異変は今後の消費構造の変化を物語っているようだ。


株式給付信託

さて、昨日の日経紙には「自社株報酬 導入600社超」と題し、株式給付信託を導入した上場企業が6月末までに延べ約630社に上りコーポレートガバナンス・コードが適用された3年前に比べて4倍以上に増えるなど、信託を使った自社株報酬制度を役員や従業員向けに導入する企業が増えている旨が書かれていた。

コーポレートガバナンス・コード導入以降に企業の安定株主論で何時も出て来るのが株式持ち合いの問題だが、これが遅々として進まない現状が問題になっているなか従業員向けなども安定株主作りと自社株の活用術で福利厚生目的等とも併せ導入する企業が増加している。

かつて取引員でもこの手の自社株報酬を実施していたところもあったものの破綻してしまったという笑えない例もあったが、それは兎も角も企業は給与等増加額の10%を法人税額から控除でき付与した株式の時価相当額も含まれる事になっているが、18年度改正ではこの控除枠が15%に拡大することになり企業側のメリットも拡大する事で今後普及が加速してくるかどうかこの辺も注目される。


SIXPAD上場

昨日の日経紙にはあの「SIXPAD」で有名なMTGの全面広告がひときわ目立っていたが、この日はマザーズ市場にはれて同社が上場のはこびとなった。注目の初値は公開価格5,800円に対してこれを12.6%上回る7,050円で初値形成となり、引けは7,350円で初日の取引を終えた。

この上場に先駆けて代官山にシックスパッドステーションなる電気刺激型ボディースーツを用いた進化形ジムも展開させているが、同社は先月に上場したフリマアプリのメルカリに次ぐ大型案件となる。今年のIPO資金調達額は前半段階で既に前年同期の2.5倍に膨らんでいるが、これで更に上乗せされる形となる。

マザーズ市場の時価総額ランキングもこれまでミクシィが長らく首位を独占しサイバーダインが続くという構図であったが、先月のメルカリと昨日のMTGのIPOでこの構図も変った。立て続けの大型上場を機にマザーズ市場が活況を取り戻すかどうかだが、以前より本邦勢のユニコーンは世界規模で見劣りするといわれこの手が育つ土壌を培ってゆく工夫が今後も焦点となってこようか。


メルカリ上場

さて、今週のマーケットでビックイベントといえばやはりフリーマーケットアプリで国内最大手メルカリのマザーズ上場だっただろうか。上場当日の大手紙には大きな全面広告が出ていたが注目の初値は公開価格を66.7%上回る5,000円で形成、その後一時ストップ高まで買われた後は5,300円と陽線を立てて引けた。

過去この手の知名度が抜群なIPOといえばLINEが思い浮かび同じ上場延期組でも前者は成長ピークを過ぎてからのIPOであったが、こちらは未だ成長途上の分だけLINEを凌駕していると言ってもよく、足元の赤字を跳ね退け日経平均が400円以上も急落する中ストップ高まで買われたのも説明が付くとの意見も多かった。

その圧倒的な知名度を誇るユニコーンであっただけに国内の応募倍率は50倍超ともいわれたが、公開価格決定と共に投資家需要から海外向け公募株数を増加させたが注目すべきはこちらも20倍超となったという事。上場後の株価は続落模様となっているものの、時価総額1兆円が先ずはターゲットゾーンとの見方も一部に出ている。

IPOといえば本日はログリーが公開価格の約2.倍で初値を付けたが、IPOインデックスも目下のところ12年ぶりの高値圏にある。個人は初値売りの小遣い稼ぎが多い一方、対して海外勢は中長期の投資スタンスを取るケースが多いだけに上記の通り海外勢の注目を惹き付けたユニコーン企業のIPOは日本市場の重要な試金石となり今後もその動向から目を離せない。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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