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ななつ星上場

本日は先のLINEに次ぐ売出価格4,160億円という大型IPO案件でもある、九州旅客鉄道がはれて上場の運びとなった。差し引き2,000万株以上の買い気配から始まり、注目の初値は9時半過ぎに公開価格2,600円を19.2%上回る3,100円となり、ほぼこれを高値としてあと若干ダレる展開で引けた。

当欄では7月のLINE上場時に年内のIPOで個人に身近な企業で注目を集めそうな物としてこのJR九州を挙げていたが、この日の売買代金は2,736億円と東証一部全体の約13%を占めただけあって、騰勢を誇っていた直近のIPO銘柄群は換金売りの余波か値を崩すモノが散見されマザーズ指数も4日続落となっていた。

国鉄分割民営化では不採算路線を持つお荷物的な存在でIPOはほかのJR3社に随分と遅れをとってしまった感があるが、こうした上場の瞬間を見るにやはり感慨深いものがある。運輸というカテゴリーで見るより同社は不動産ポストといった見方をした方がよいと思うが、いずれにせよ上記JR3社よろしく長期的に株価が育つのか否か今後が注目されよう。


また一つ市場から

先週の当欄では「さが美」や「雪国まいたけ」とそれらに絡む投資ファンドを一寸取り上げていたが、週末に入ってきたニュースには東証一部上場のアデランスが現経営陣と投資ファンドのインテグラルと組みMBO(経営陣による買収)に踏み切るとの発表があった。

TOBは本日から来月末まで実施されるがそのTOB価格が1株あたり620円と週末の終値480円から29%高の水準という事もあって、週明けのマーケットで株価はTOB価格に鞘寄せする形でストップ高に張り付き、引け後には比例配分狙いから成り行き3,000万株以上の買い物を残している。

さて、アデランスといえばかつてユシロ化学やソトー、ブルドックソース等々でもひと悶着あった米スティール・パートナーズとの対立で09年の委任状争奪戦が記憶に新しいが、同じくMBO提案の経緯がある当のスティール・パートナーズも結局14年までに現物渡し含めたイグジットを完了し撤退している。

そんな経緯を経て株価が今後の経営の足枷にならぬが為のMBOだが、東証一部市場に上場する企業数が年内にも初めて2,000社の大台を超える可能性が高まっているとの観測の裏でこうして冒頭の雪国まいたけ同様に東証一部からまたひとつ銘柄が消えることになる。


フィンテックとかTOBとか

本日の日経紙一面には「通貨と同じ位置づけに」と題して、財務省と金融庁がビットコイン等の仮想通貨を買う時にかかる消費税を2017年春をメドになくす調整に入り、仮想通貨をモノやサービスだけでなく支払い手段として明確に位置づけるという旨が書かれていた。

この報道によって本日の冴えない日経平均の中でもロックオンの急伸を始めとして、セレスやGMOメディア等の仮想通貨・フィンテック関連銘柄が再度動意づく展開となっていたが、5月の仮想通貨取引所を登録制とする改正資金決済法が成立しメガバンクも活路を模索し始めている動きのなか利用者増加へ一段と弾みがついてくるか注目。

一方でズルズルと本日も続落し値下がりランキングに入ってきたモノにさが美があったが、これは争奪戦の結果が結局当初のアスパラントグループに落ち着いた事によるもの。二度のTOB価格引き上げも最後は「拒否理由に同意できないが、しかたがない」とニューホライズンもあっけない幕引きであったが今回も内輪の論理優先だったのかどうか気になるところ。


低倍率恒常化

連休明けの日経平均は原油先物上昇を好感し約1ヵ月ぶりに17,000円大台を回復、ショートしている向きは一寸分が悪くなってきたが、先週末の日経紙マーケット面では「貸借倍率4年ぶり低水準」と題し7日時点の貸借倍率が1.04倍と約4年ぶりの低水準となった旨が出ていた。周知の通り貸借倍率はマル信を利用する個人の心理の動向を示す指標の一つであるが、こうした低下傾向がこのところ恒常的になってきている。

ところでこうした低倍率といえば、先の権利付き売買日最終に逆日歩の付く銘柄は646銘柄と2009年47月2日の652銘柄以来およそ7年6ヶ月ぶりの高水準となったが、いまだにやる向きがあるマル信のクロス商いで権利落ち後をしのぐ動きから貸し株が不足したと思われるが、これを跨いで月替り後もなお高水準なのは3月期末の時に見られた光景と同様でもある。

こうした傾向の背景には米大統領選挙や利上げを巡る思惑など外部要因が絡み相場の先行きに対する不透明感が色濃く表れているというのがあるが、もう一つ日銀によるETF買いによって相場が高止まりし個別もなかなかケツ入れの機会を逸しているという内部要因も指摘されており、今後日歩の変化等見ながら一旦解れる場面があるのか否か注目してゆきたい。


CG導入後のTOB合戦

さて、今週はシルバーウィークからほぼ往って来いと冴えない株式市場であったが、そんな中を気を吐いていたのはやはり旧ユニー系の呉服屋「さが美」だっただろうか。週明けから二日連続でストップ高を演じ、わずか三営業日でその株価は2倍に化けるなど破竹の勢いであった。

この背景には周知の通り来月に投資ファンドのアスパラングループの傘下入りで合意していたところを、別の投資ファンドであるニューホライズンキャピタルがアスパラントのTOBを上回る価格の他、貸出債権買い取りや第三者割当増資にも幅を持たせた買収申し入れをした事に因るもの。

過去こんなケースで株価が乱高下した例では、かつてジャスダックに上場していた「幻冬舎」のMBOにおけるイザベルリミテッドの登場や、かつて東証一部に上場していた「アコーディア・ゴルフ」のTOBにおけるPGMホールディングスの登場等々の記憶があるが、結果的には何れも不発に終わっている。

ただこれらの騒動から時を経て昨年にはコーポレートガバナンスコード適用が始動しており、買収事案もより開かれた場になる事への期待も大きいのは個人もファンドも一緒である。そういった意味では今回のさが美の案件も駆け込み感が強いとはいえ、その行方が今後の参考として注目されるところになるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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