10ページ目   雑記

宴席の賑わい今は昔

本日の日経紙投資情報面の一目均衡には「白酒バブル崩壊と中国経済」と題し中国を代表する高級白酒である茅台酒の流通価格が暴落している旨が出ていた。このブランドを擁する貴州茅台酒は昨年の今頃は日本で時価総額トップのトヨタ自動車をも凌ぐ時価総額を誇っていたものだが、今やその時価総額も認証不正問題の余波で高値から20%ほど下落の憂き目に遭ったそのトヨタ自動車よりも下に位置する。

先に発表された4-6月期GDP成長率は予想を大幅に下回っていたが、同社に限らず中国人の旅行需要失速が響いたマカオでカジノを運営する金沙中国や、宝飾大手の周大福珠宝集団もまた時価総額を減少させている。また欧州ラグジュアリーブランドの類を見ても、例えば最近アウトレットからの撤退が目立つグッチなど最大市場の中国で低迷したことが響き4半期連続で減収の憂き目に遭っており、高級ブランドコングロマリットの中でも低迷が目立つケリングの明日の決算発表が注目される。

しかし冒頭の貴州茅台酒もROE約30%を誇り海外の機関投資家にも注目され底堅い需要とブランド力で業界最大手として不変の地位を保ち、一時期は擁する商品の持つ希少性と換金性から金と同じ価値を持つとさえ一部でいわれていたものだがすっかりその輝きも色褪せている。斯様に不動産不況をきっかけに一気に逆回転が起きているが、はたして再度ブルーチップに返り咲く日は来るのか否か今後も注意深く見ておきたい。


ブルースクリーン

周知のように先週末に世界を襲ったのは米MSのOS「ウィンドウズ」を巡る大規模なシステム障害であった。成田や羽田では欠航や航空券の予約・購入が利用出来ない障害が報じられていたが、ドイツ、オランダ、スペインやインドなど海外の空港でも運行に多大な影響が出ていた。他にもロンドン証取運営の英LSEGでは企業開示情報等の配信が停止、オーストラリアでは一部銀行で送金が出来なくなどその影響は世界中で広範囲に及んだ。

今回の障害は大手向けセキュリティーサービスを提供する米クラウドストライクのソフトの不具合が原因だったようだが、システムを守るセキュリティーソフトそのものが障害を引き起こすという何とも皮肉な事態になった。これまで効率化を求め挙って大手への集中化も加速してきたワケだがこれらの裏側に潜むリスクが改めて顕在化、現代のIT基盤の脆弱性が露呈した格好になったか。

ところでシステム障害といえばローカルな話になるが、システム障害による冷蔵品の出荷停止を巡り春から全国規模で出荷停止の憂き目に遭っていた江崎グリコのプッチンプリンが来月から出荷が順次再開される模様だ。ただ、他製品含め全面再開の時期については依然見通しは立っていないというが、今後AI等含めた最新技術への切り替えも予測されるなかグリコのような上場企業は兎も角、体力の無い中小企業などコスト面含めデジタル化の波に乗れない向きにとってまたこの辺は頭の痛い問題になるのは想像に難くないか。


真贋如何に

さて、今週は国内の美術館で所蔵されている絵画が贋作の疑いがあるということが相次いで判明したニュースに興味をそそられた。徳島県立近代美術館が所蔵するフランスのキュビズム画家ジャン・メッツァンジェの「自転車乗り」と、高知県立美術館が所蔵するドイツの画家ハインリヒ・カンペンドンクの「少女と白鳥」がそれで、月末より開催予定であった所蔵作品展等が急遽取りやめになっている。

これで久し振りに思い出したのが3年前だったか世間を騒がせた日本画の巨匠、東山魁夷や平山郁夫らの絵画を基にした版画の贋作事件だろうか。大阪府の画商の依頼で関西の工房経営者が作成しその流通量は800枚にものぼるともされ、オークションなどで売買されたほか一部大手百貨店が販売してしまった版画の買い戻しを進めるなど大問題になった経緯がある。

それはさておき冒頭の両作品共に、ドイツの天才贋作師といわれるヴォルフガング・ベルトラッキ氏の作品と疑われている。巧妙なのは実物が存在する作品を偽造せず、ターゲットになるのは大戦中に消息不明となったタイトルのみ判明しているような作品の類といい、模倣した贋作を消息不明の絵画を発見したと自作自演で発信する手口と、その絵のみならず詐欺の技術においてもまた卓越した才能を持っている。

その腕は著名画家50人分の画風を完璧にマスターしているといい、斯様な手法でこれまで300点を超える贋作を描き約80億円以上を手に入れたと言われている。しかしこれだけの腕を持ち切れる頭脳を持っているなら真っ当な道を歩んでも必ずや成功したと思われるが、凄腕の地面師よろしくかくも緻密に舞台が造られると対応もまだ限界があるか。放射性炭素年代測定など科学的解析も日進月歩だが、両者の鼬ごっこはまだまだ続きそうな感がある。


新紙幣と経済効果

今週いつものクリニックに行った際の会計で早くも新紙幣が交ざっていたが、周知のように今月から20年ぶりとなる新紙幣の流通が始まった。流通初日の全国の新紙幣対応の割合はATMなど金融系機器で9割以上、鉄道・バスの券売機で8~9割、一方で食券の自動販売機は5割、飲料自販機は2~3割程度での対応であったが、いずれにせよ新紙幣発行によるATMや自販機の入れ替え等でその経済効果は約1兆6千億円と試算されている。

初日から各金融機関には列を作っている人々がTV等で報じられ、中にはレアモノの記番号狙いで高額両替する向きも居たようだがこれらがそう簡単に一般の手にホイホイ渡るとも思えない。それでも流通初日からヤフオクでは出品禁止のハズのプレミアでも何でもない新紙幣がズラリと並んでいたからなんとも商魂たくましい向きが多いものとつくづく。

其れは兎も角も、ネットワーク社会でキャッシュレスの動きが加速する条件が整った中での新札発行というのはおそらく今までで初めての事か。飲食店等にあってはこれを機に券売機を新しく買い替えるのであればもうキャッシュレスの導入にした方がよいかという動きも広がっており、意外にキャッシュレス化の比率が上がって来るというのが経済効果で見えるのではとの指摘も一部にある。

経産省によれば、日本のキャッシュレス化は2023年度で普及率が39.3%、アジア圏では近隣の韓国が93.6%、中国も83.0%というなかにあって政府の目標である80%の目標には遠く及んでいないのが現状。これらの国に限らずインバウンド客はキャッシュレスに圧倒的に馴染みがあり、キャッシュレス決済は人手不足緩和など含め現場の生産性も上がるなどメリットも大きいだけに今後どの程度構図が変わって来るのかこの辺に注目しておきたい。


異例の都知事選

さて、周知のように東京都知事選では現職の小池百合子氏が都政の刷新を訴えた新人候補を振り切って3選を決める事となった。当初は参議院議員を辞して立憲民主党から出馬した蓮舫氏との一騎打ちになるとされていたが、蓋を開けてみれば小池氏の圧勝に続いたのは若年層中心に支持政党を持たない無党派層の受け皿となった石丸氏が浮上していた。

また同じ日に行われた東京都議会議員の補欠選挙では自民党候補が相次いで敗れたが、政治とカネ問題への不信感が如実に表れたかたちで自民への逆風はますます強まってきている証左か。ところで今回の都議選は史上最多の56人の候補者乱立という異例のものになったが、法の網を潜り抜け大量に候補者を擁立して掲示板が売買されたりモラルを欠く選挙公報や政見放送などの弊害も齎された。

SNSがバズった事などもあり曲がりなりにも投票率は上がったが、こうした結果子どもの通学路に品を欠くポスターが堂々と掲げられこれを媒体として収益を稼ごうとする魂胆がミエミエなモノも出現するなど公選法が想定していなかった事態も物議を醸し出している。供託金含め公職選挙法を見直す意見も当然出始めたが、これがはたして健全で成熟したデモクラシーの姿なのかどうか再考の余地は大きい。

いずれにせよ今回の都知事選では刷新より継続が選ばれることとなったワケだが、東京都知事の重要課題の一つに以前にも書いた東京の国際金融都市構想がある。ちなみに最新の国際金融センターランキングでは日本は19位とアジア圏でも下位に甘んじており、地位向上に向け各所の育成など成長戦略のブラッシュアップが必要になるだけにどういった舵取りをしてゆくのかこの辺り含め今後も注目してゆきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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