114ページ目   雑記

基本的株主権利

さて、先週末の日経紙は三井住友信託銀行とみずほ信託銀行が東芝の株主総会を巡りその事務処理が適切でなかった事で、シンガポールの一部海外ファンドの意見が反映されない事態が起きていた件に端を発した議決権の誤集計が国内の上場企業の実に3割強にあたる計1346社にものぼると発表した旨の記事が一面を飾っていた。

この一件、当該ファンド分を含む無効扱いとなった行使書は議決権ベースで1.3%という事など含め7月までに開催された総会において決議に影響した事例は見つかっていないとしているものの、コーポレートガバナンス導入を背景に近年ではアクティビストの質も存在もその影響が大きくなり賛否が僅差で分かれるケースも増えてきているだけに看過出来ない一件だろう。

最も基本的な株主の権利を損ないかねない斯様な不適切処理は20年間続いてきたというが、こんな慣習が続けられたのもいまだ旧態依然の郵送形式が主流という背景があるのも主因で、旧態依然といえば他にも株主総会が集中してしまうというこれまた欧米に比べて特異な形態という背景もあるか。

現に電子的議決権行使は欧米などでは9割以上になっているのに対し、本邦ではそれが10%台にとどまっているなどこういったところこそデジタル化が焦眉の急ではないか。また今回は扱う側が謝罪に追い込まれた格好だが、大株主の一部は委託側である企業のガバナンスにこそ問題があるとその姿勢に疑問を呈する意見もあり各所で応分の説明責任が問われる事になるか。


HYIPの甘い罠

さて、先週話題になったニュースの中に磁気ネックレスなどの預託商法を展開し高齢者ら延べ約1万人から計約2100億円を違法に集めたジャパンライフの旧経営陣らが今更ながら詐欺容疑で逮捕された件があったが、同社といえば「桜を見る会」に絡みいろいろと物議を醸し出しその名を知った向きも多いか。

この辺は世代でもまた違うと思うが、磁気商品よりも同社の売り上げがピークを記録した今のミドル世代が学生だった頃は健康布団を主力としたマルチ商法が全盛であった。同時期には豊田商事事件も世間を賑せていたのも記憶に新しいが、思えばこの時期はバブルの走りの頃で世の中がギラギラしていたのも鮮明に思い出される。

販売預託商法の類では当欄でも過去安愚楽牧場など取り上げた事があったが、他にケフィアやMRIも然りでHYIPの甘い匂いに吸い寄せられネットワークビジネスと共にこれらは何時の時代でも廃れることが無い。冒頭のジャパンライフもそうだったが、著名人の利用や怪しさのハードルを取り払う程度の長期運営を続けている等々の部分もあるだけに幅広い層の金融リテラシーの一層の向上が急務の課題だろうか。


世紀の破談?

さて、先の日曜日には米エヌビディアが英半導体設計アームを最大400億ドルで買収する事が明らかになったが大型買収といえばもう一つ、当欄でも昨年末に取り上げていた仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンによる米宝飾大手ティファニーの買収が撤回されたとの件も巷で話題になっていた。

その背景として米政府がフランス製品に関税を課す方針を示した事を受けた仏外相から買収合意の履行先送りを要請され断念せざるを得なかったとの事だが、新型コロナウイルスが猛威を振う直前の最悪なタイミングでの基本合意だっただけに果たしてのコロナ禍で販売が急落するなか斯様な好材料?は千載一遇の撤回チャンスだったのは想像に難くないか。

この縁談で資金力や販促力の強化を目論んでいたティファニー側は当然の如く猛反発の様相を呈しているが、コロナのパンデミックが高級品業界に如何ほどの影響力を及ぼしているかが露呈されたケースといえよう。とはいえ高級品業界の一角はそれとしてもマクロではこれまで停滞していたM&Aは急速に復調しているという。

この辺は一昨日の日経紙夕刊でも調査会社ディールロジックが出したところによる7〜8月の世界のM&A総額が2ヵ月連続で前年実績を上回った旨が出ていたが、先に当欄でも書いたコロナ禍で世界の上場企業の稼ぎ頭が激変しドラスティックな下剋上が起きている状況下において斯様な手段で成長を見出す流れは今後も続こうか。


伝統かハラスメントか

さて最近ではテレビのバラエティー番組などでも宝塚音楽学校を目指す受験生の密着モノなどよく見かけるようになったが、直近ではこの音楽学校の生徒間で長らく続いて来た挨拶の仕方などの自主的な慣習について世間の流れにこれら不文律はそぐわないとして見直しや廃止に踏み切った旨が報じられている。

確かに宝塚といえば以前にテレビで見た際には先輩への受け答えの際に笑顔禁止など表情が決められていたり、廊下は壁に沿って直角に曲がる、遠方に見える先輩へは大きな声で挨拶、果ては先輩が乗車しているかもしれないということで阪急電車に毎回お辞儀をしなければいけない等々数え上げればその自主ルール?は挙げればキリが無い。

まあこうした超名門校の場合こうした慣習も長年かけて良き伝統扱いとされるのもわからないワケではないが、近年問題となっているブラック校則などもその内容を見るに今の時代にそぐわないものばかりではないか?これに耐え社会へ出てもこれまた現代では疑問符な慣習が脈々と受け継がれている会社が多い。自分達が受けたルールは下の世代へ受け継ぐべきとする矯正教育もそろそろ社会がそれを許さない時代になってきた感がある。


地場色回帰?

さて、一昨日は次期新首相候補の最右翼に菅氏濃厚との見方から株式市場での地銀株物色の旨を書いたが、初動ではこれらの陰に隠れ同じく菅氏連想という事でふるさと納税関連株としてチェンジも物色された経緯がありこれまた一日天下で終わることなく本日も同株は二日連続で上場来高値を更新してきている。

ところでふるさと納税といえば先に総務省とのバトルで泉佐野市が逆転勝訴を勝ち取った背景から制度から除外されていた4市町が先月までに制度に復帰している。先に当欄でこれを取り上げた際には今後は地場産業など襟を正した勝負で臨むか否かこの辺が注目されようとも書いたが、当の泉佐野市の復帰後の返戻品は特産品の泉州タオルを全面的に推した内容となっていた。

勝訴とはいえ併せて社会通念上の節度を欠いたとの苦言も呈されただけに、他に泉佐野市と共に除外から復帰の運びとなった昨年2月に当欄で取り上げた静岡県小川町なども特産品や民宿といった地場に根差した返戻品を用意、また他の除外された向きも一様に地場産品など地域色を前面に押し出したモノでの構成が目立つ。

現在泉佐野市は病院財政支援のクウドファンディングや熊本豪雨災害支援の代理寄付受付なども開始しているが、ほとぼりが冷めたらまたぞろ熾烈なゼロサムゲームが始まるのかそれともこのままクラウドファンディング等も含め一層知恵を絞って地場産業の開発に努める原点回帰の動きになってゆくのか今後も注目される。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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