135ページ目   雑記

資源関連の憂鬱

先週末の日経紙マーケット面では「原油、下値不安なお」と題し、先のOPECプラスで世界供給の1割相当の減産を5〜6月に実施する旨を決定したものの実効性そのものを疑う声に加え、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う現物需要の落ち込みで在庫も急増し底入れが見通せない旨が出ていた。

週明け本日の午前中の電子取引においてもWTIは納会を明日に控えた当限が投機筋等の手仕舞い売りを浴び、一時1バレル14ドル台と1999年3月以来ほぼ21年ぶりの安値まで沈むに至り前週末からの下げ幅は2割に達している。期近からズルズルと下げを先導しコンタンゴが解消されない鞘を見るに典型な動きとなっている。

斯様な状況が続くと特に業績への影響が懸念されるのが石油元売りや石油開発という事になるが、大手元売りの想定レートは1バレル55〜60ドルとなっているだけに今月の日経紙・私の履歴書の出光興産など含め対前年実績で半分近くの減益予想となり、また商社の想定レートも更に高い事で各社の苦悩は想像に難くはないが更なる減産が先か株価の灰汁抜けが先か今後も目の離せない展開が続く。


決算事情彼是

さて例年であれば今月下旬から主力大手の決算発表も本格化というところだが、今年の場合はこちらも他と同様に新型コロナウイルスの感染拡大の影響で国内はもとより更に外出制限が厳しくなっている海外での移動制限などによって監査法人による棚卸資産等の確認作業に支障が出ている関係で発表延期企業が続々と出て来ている。

決算延期となると次に影響が出るのは総会という事になるが、諸々の延期でこの株主総会の日程までズレ込むという事になると更に配当など投資家の権利にも影響を及ぼしかねない事態となるだけに、既に東証では配当基準日が事業年度末から変更となる可能性があることの注意喚起を行っている。

しかしさすがに全ての決算処理をリモート対応で賄うのは無理があるとはいえ、冒頭の棚卸資産等の確認作業など12日付け日経紙社説にてドローンを使った在庫確認、証拠書類の電子的代用など代替策云々とも書かれていた通り、テレワークやオンライン学習にオンライン診療然りでこれまでの日常風景が一変し新たな風景への変遷の期が訪れているようにも思える。


国費でマスク?

一昨日の日経紙総合面には「医療用防護服が品薄」と題し、日本でマスクと共に化学防護服の品薄感が強まっている旨が書いてあったが、防護服といえば医療崩壊が著しいイタリアではジョルジオ・アルマーニが使い捨て防護服の製造に着手、またグッチやプラダもマスク生産を始めている等ファッション界が動いているが、高級車勢もフェラーリが人工呼吸器を、またランボルギーニもサージカルマスクの生産を開始している。

さてマスクといえば先月末の閣僚会議で首相が突然マスクを付け始めた違和感から翌日には全世帯に2枚ずつ布マスクを配布すると表明。休業補償や給付金から減税云々が焦眉の急となっているこの期に巨額を割いてのマスク配布に世間では賛否両論喧しいが、米に先駆けて感染が始まっていた日本はその後に感染が始まった米に比べ経済対策から何からスピード感が著しく劣るように見える。

今週は悲鳴にも似た緊急事態宣言要請が各界から出ていた間にも感染者が瞬く間に急増、漸く重い腰を上げ緊急事態宣言を発令するに至ったが、「スピード重視」、「躊躇なく決断」云々繰り返していた割に牛歩感は否めず、経済対策にしても過去最大を謳う割に現金給付一つ取っても国民の約80%がもらえないハードルの高さで規模ありきの遣っ付け感が否めない。

400億円超もの国費を投じ家族全員にも行き渡らない鳴り物入りの布マスクが我々の自宅に届く前に、既にドイツでは5000ユーロの緊急助成金が簡単なオンライン申請からたった2日で振り込まれているのを見るに、都合の悪い文書等々ものすごい勢いで破棄・改ざんで闇に葬る事が出来る機動力を持っているのにこんな危機的場面でそうした力を出さないところが実にやるせない思いだ。


災い転じて

さて一昨日に政府は受診歴の無い初診者患者にもスマホ等でのオンライン診療を求めるなどオンライン診療の要件を緩和する方針を固めたが、この辺は本日の日経紙大機小機でも「オンライン化 流れ止めるな」と題し、今回のような有事になって漸く規制が緩和されその対策として活用すべく生きて来る旨が書かれていた。

同じくコロナウイルス対策としてのオンラインといえば、企業のテレワーク導入の動きだろうが、働き方改革の機運が熟していたところに上手く乗れたという感じだ。また長期になった春休みから入学式や始業式を過ぎなお登校出来ない異例ともいえる休校長期化でオンライン学習も彼方此方で急速に脚光を浴び始めてきた感がある。

本邦のこうした動きとは少し毛色が違うが、他に新型コロナウイルスの影響で中国では紙幣を滅菌消毒し密封措置を取るなどしているほか、主力の中国製割り箸や安価のプラスチック製品類など今月あたりから在庫が品薄になるとの観測も一部出ているが前者はキャッシュレス化促進の観点から、また後者もサスナビリティが叫ばれる昨今これを切っ掛けに使い捨て文化を見直す良い機会になる可能性もあるとの解釈も出来るか。


欧米との温度差

先週2日の日経紙朝刊の一面には「テルモ、人工心肺増産」と題し新型コロナウイルスの感染拡大で人工心肺装置の需要が高まるなか、国内最大手のテルモが生産量を現在の倍以上に増やし今後数カ月以内の間に国内の治療施設に100台超の人工心肺装置を供給できるようにする旨が出ていた。

漸く国内もという感じだが、この手では米国はテスラが人工呼吸器をNY工場で生産し世界の病院に向け送料も負担で無償配布する事を発表、GEとフォードモーターも協力し生産開始するほか、英国でもダイソンが人工呼吸器をわずか10日で開発し5000ユニットを製造して英国内外のパンデミックに対する取り組みに寄付する意向を示しているあたり、本業とは別に公共財を製造する社会的使命を担うという観点でやはり欧米は抜きん出ている感が強い。

斯様に上記の通り大手に加え新興企業や異業種企業も巻き込んで動員し増産を急ぐなど産業界が総力戦の構えを見せているが、一方で国内大手企業群の消極的姿勢は否めない。こんな状況下だけに積み上がって来た約460兆円ともいわれる内部留保をがっちり守り抜きたい気持ちも解らないでもないが、かつて松下幸之助氏が言った「企業は社会の公器」という言葉がこんな時にこそ思い出されるもの。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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