209ページ目   雑記

統治の意義

さて、今年も多くの企業から定時株主総会案内やら議決権行使書が届く時期になったが、この株主総会も来週以降本格化してくる。株主総会といえば今年からは特に資産運用会社が議案賛否を個別開示し、その提案に厳しく臨むものとみられコーポレートガバナンスの質向上が一段と問われる。

資産運用会社といえばおおかた金融大手のグループという事になるが、これまで系列の投資先企業の議案賛否に対し今すっかり流行りになった所謂「忖度」があるのではとの疑念が付き纏っていたものだが、上記の個別開示でこの辺の透明性はグンと高まるということになる。

個別では予てより多くに議論されてきたものに複数の社外取締役選任があるがこれまで容認してきた基準を厳格化したり、また買収防衛策などにも反対意見が増えるなどこれまで以上に厳密に精査する姿勢が。6月以降の総会分については11月末迄に個別開示する必要があるが、いずれにしても株主と企業の対話がどう変貌し高水準な統治を目指す契機となるのか注目される。


どうなる出口

本日の日経平均は1ドル109円台前半まで進んだ円高・ドル安を嫌気し売りが先行して寄り付いたが下値では日銀によるETF購入への期待が相場の支えとなりプラス圏に浮上して引けた。斯様に下値では日銀ETF購入思惑が台頭するのが最近では定着し、この辺も下方硬直性に一役買っている。

事実、一昨日の日経紙には日銀によるETF買い入れ拡大が加速している旨が載っており、今年の3月末時点でその保有額は1年前と比べ1.8倍の15兆9,303億円に達している模様だ。拡大した買い入れ枠でこれを継続すればあと2年ほどで保有額は30兆円に達するという試算だが、依然として歪な株価形成そして「出口」を巡っての否定的な意見も喧しい。

今月あたまの日経産業紙のコラムでもETF購入など即刻止めるべきと書いてあったが、そのかわりに運用に自信のある一任勘定会社や投信会社を公募し競争運用させ2年目以降は累積成績で運用資金配分額に差を付けるというアイデアを提案していた。実現性は兎も角も成る程一理ある意見だが、米のようなイグジットに持ってゆけるかどうかまさに道中なだけに未知数である。


密輸多様化

昨日の「GOLDNEWS」には在香港日本国総領事館が金の密輸に係る注意喚起を発出した旨が出ていたが、相変わらず金密輸のニュースが絶えない。今月に入って直ぐには韓国から金塊計30キロを密輸入し関税・消費税法違反容疑で韓国籍の主婦らが愛知県警に逮捕され、その前日には佐賀の漁港で金塊とみられる260キロの陸揚げで8人が関税法違反容疑で逮捕されている。

これまで金塊密輸事件といえば大抵が空輸モノで、この辺は昨年6月までの1年間で摘発された金塊密輸事件294件のうち約98%にあたる287件が航空機を使っていた事で裏付けられるが、この佐賀の事件のように海路を使ったケースは少なく記憶に新しいところでは昨年末にクルーズ船で15キロを密輸しようとした石垣港の事件、あとは一昨年のフェリーで20キロを密輸しようとした下関の事件くらいか。

それは兎も角もこれらいずれも密輸量は15〜20キロ程度だが、直近のモノは260キロとこれまでの10倍以上と桁違いの規模であり、また共に冒頭に挙げた主婦の件にしてもちょっとした小銭稼ぎの軽い動機と、当欄で前回取り上げた「売り子」の如くの風潮で犯罪意識希薄化の台頭も懸念されるところである。


池坊2017

さて、今週初めまで開催されていた「池坊展」を今年も観て来た。「花の力」をテーマに約500点の作品の数々は昨年同様にいずれも斬新であったが、今年はなんといっても映画「花戦さ」の公開記念という事で、映画で描かれた様々な生け花のシーンなど実際に撮影で使われたものが展示されるというから見逃せない。

今回は経済界の華道人として上場企業役員の作品等も展示されていたが、いつもながら華督クラスはシンプルな花材構成なものの立体的な竹にクレマチスのアレンジや、アンスリウムにエンゼルヘアーを羽織らせたもの、また松にエキゾチックなストレチア、鴨立沢にカラー等々和物に絡ませるその縦横無尽なセンスと技には本当に毎回脱帽である。

そして今回の目玉、花戦さの世界展であるが果たしてそれらの数々は当に溜息もの、そしてやはり織田信長の所望で岐阜城大座敷に活けられたという見事な昇竜松を主体にした雄大な大砂物は圧巻であった。昔は「読んでから見るか、見てから読むか」というコピーがあったが、見る前に観る事の出来た貴重な体験であった。


司法とSESC

昨日の日経紙夕刊には「処分取り消し訴訟増加」と題してインサイダー取引等で行政処分を受けた個人や企業が処分取り消しを求めて裁判に訴えるケースが増えている旨が書かれていた。

インサイダー取引での金融庁の課徴金納付命令取り消しといえば記憶に新しいのが、昨年の東電のファイナンス情報を野村の担当者から得たのを基に空売りを行ったとの疑いがかけられた金融コンサルの女性の一件か。司法の場での初の取り消しケースとなったが、この一件で懲戒解雇された野村の社員もまた東京地裁は解雇無効の判決を出している。

課徴金は少額であったもののこれ以降も事実認定に異論を唱える向きが多数出てきており、証券取引等監視委員会はこうした動きに対応する為に昨年末に「訟務室」を設置したようだが、確かにデータ一辺倒に対抗すべく海千山千の投資家ほど意欲的に訴訟に臨むのは想像に難くなくこうした輩と対等に渡り合えるマンパワーの確保こそ今後は課題になって来るであろうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2024

11

1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30