338ページ目   雑記

商習慣の壁

先週の日経紙一面には13日から「M&Aに賭ける」としてここ最近のM&A事情が載っていた。確かに恒常的な円高の影響もあって一寸したM&Aブームにもなっているが、週末の方の項にはこうした機運の中では外国勢の日本企業売りもまた誘発とも書いてあった。

斯様に環境で思わぬ出物が出て来るのはオークションと同様だが、この辺は株式市場で最近話題になったのが米投資ファンドのサーベラスが筆頭株主になっている「あおぞら銀行」か。相手として噂されているのが「ANZ(オーストラリア・ニュージーランド銀行)」で、その株価も思惑で一寸前には乱高下した経緯がある。もう一つこれも同紙に載っていたが、8月末に日本事業を撤退すると発表した英小売最大手「テスコ」等。

当時は鳴り物入りで登場したものだったが本国流経営方針が合わずに8年で撤退、また同じスーパー業界からこの手のパターンで撤退していったのが仏大手の「カルフール」がある。これもまた卸しを飛ばし直接仕入れを目論んだものの、上手くゆかずに撤退していったパターンだ。そうそう、本日も週末に続いてオリンパスが外国人社長の解任騒動で暴落しているが、これも相容れなかった部分があるのだろうか?

また上記のあおぞら銀の話とて今迄外銀が日本で大成功を収めた例が無く、こう考えると日本固有の商習慣とどう付き合うかが非常にキーとなってくるが、これは何も企業に限ったことでなく、例えば商品先物の新規上場商品なども或る面同じだなとフト思ったりもする。


続く夜間の伸び

さて、約一ヶ月ほど前に株式先物やFXの夜間取引について当欄では「グローバル化の波」としてこれらが急増している旨を書いたばかりだが、先週末の日経紙一面でも「個人マネー夜に動く」として、株式先物やFXなど揃って個人マネーの夜間シフトが鮮明になっている旨が載っていた。

今月に入って大証が発表した平成23年度上期の売買状況によれば、デリバティブ取引高が22年度上期に継いで過去2番目の多さであったが、日中取引に対する夜間取引比率は過去最高の37.9%になった模様。この辺は先月も書いたが、当時比較した8月の過去最高水準が更新されていることになる。

同紙では「欧米金融市場の不安定な展開が続き、翌朝の東京市場が開く前に一国も早く売買したいという個人投資家が増えているためだ。」と夜間の活況要因を挙げていたが、この辺はどうだろう?知人のトレーダーの多くは結局日中取引を見てもその値動きが二桁程度、恣意的な板の中で個人が戦うにはトレード妙味が薄いとしている。イニシアチブを執れる参加者が不在で、日本市場が自力でトレンドを形成することはないのが日中の実情であるとすれば、活況な夜間取引はその裏を見せられているようでもある。


今年の日本伝統工芸展

さて、東京では今週初めに終了となったが毎年恒例の「日本伝統工芸展」を過日観てきた。今年で58回目になるこの展も、毎回作者が得意の技巧で少しずつ変化を持たせながらもシリーズで出してくるからお気に入りが居る向きには次の作品が待ち遠しいというものだ。

さて今回の展では個人的に惹かれたのが、漆芸の世界で有名な鳥毛清氏の沈金飾箱「緑風」。氏といえば確か知人にある絵本を見せてもらった際にその原画が氏の沈金作品だった覚えがあるが、これら全て動物のモチーフだっただけに今回の作品で「イトトンボ」が描かれ静謐な和の空間が展開されていたのは新鮮であった。特徴的であったのは通常は沈金加工するのが文様の部分なのをこれは背景部分に沈金を施すという反転というか逆転のデザインに仕上げておりこれが実に溜息が出るほど美しい。

象嵌なども逸品揃いであったが、この他にも原清氏の鉄釉草花文扇壺は上記の「緑風」と併せてエミール・ガレの世界を彷彿させ、また薮内江美氏の乾漆蒟醤箱「樹雨」はこれまたドーム兄弟の木立文を連想させるが、おそらくは西洋の彼らもこうしたジャポニズムへの熱い情景で幾多もの後世に残る名作を手掛けたに違いない。

昨年見た柴田是真の漆の数々も感動的であったが、今やこの蒔絵など世界に君臨するトップブランドが挙って取り入れ始めており、急速にライフスタイルが変化する中でもこうした世界に誇れる技術が絶えることなく伝承され続けているのは本当に素晴らしいことである。


今度はLME

今週は貴金属の暴落というか乱高下が凄かったが、非鉄もまた先週末のたった2日間で銅先物価格など約13%の暴落を演じるなど総じてメタル系が波乱の様相である。さてこのメタルといえば、先週末には約130年の歴史を持ちメタルの取引高では世界最大の規模を誇るLME(ロンドン金属取引所)が、海外の複数の取引所から買収の申し出があり身売りを検討していることを明らかにしていた。

買収を申し出ているのはCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)やSGX(シンガポール取引所)等とみられ買収額は10億ポンド規模ともいわれているが、今年2月のドイツ取引所とNYSEユーロネクストの経営統合に向けた協議開始以来の一寸した縁談である。このSGXなど先のオーストラリア証券取引所買収案が豪政府の拒否で破談になったばかりであり、本件に関しては「報道や憶測についてはコメントしない」と慎重な姿勢が窺える。

斯様にオーストラリア証取も現状では白紙になってしまったが、今年はLSE(ロンドン証取)による加TMXグループ買収計画もまた白紙になっている。こうした国際的な取引所統合はやはりそう簡単には纏まらないものの、水面下では粛々と進行という感じか。

しかし、こうしてみるとくだらない既得権益に固執している国内勢の面々はなんともという感じだが、そうこうしているうちにも週明けの大量保有報告書では大証株式をドイツ銀グループが5.12%取得していることが明らかになり、また翌日の記者会見で東証社長は「スケジュール感は別にない」として特定の期限内合意にはこだわらない考えを表明している。この大量保有報告については一般ディーリングの用という模様だが、こんな内輪で縁談がゴタついている間に他が手土産を携え虎視眈眈と狙っている可能性もゼロとはいえないかもしれない。


今年の食風景

さて相場の方は今ひとつ暗いままの感もあるが、東証は先週から情報提供スペース「アローズ」にある大型スクリーンの株価表示画面を全面画面に戻し漸く元の明るさが戻ったが、これは電力使用制限の前倒し解除を受け当初は10月だった全面表示を繰り上げたもの。

東証はこれで15%の節電義務水準を超える約25%の前年同期比電力使用量削減となった模様だが、東証に限らず今夏は節電義務から至るところでその風景が変わっていた。こんな世相の反映といえば、風に秋を感じる今日この頃になって改めて今夏は食の世界でも「冷たさ」の打ち出しに知恵を絞った商品が続出した感じがする。

これらザッと挙げても冷たいカレー、冷たいラーメン、冷たいパンにドーナツ、冷たいおでん、果てはカツ丼やたこ焼き、お好み焼きといった粉ものまで「冷やし」が登場する始末。しかしどうなのだろう?実際に試食はしていないが、動物性油脂が連想される食べ物は冷やしと聞いただけでどうしても不味そうというイメージが先に立って手が出ないものだ。

ところで思うに、これらの中でも冷たくなっても冷たいなりに美味しく食べられる物といえば世界の中でも日本食くらいではないだろうか?まだ世界中の料理を食べるに至らず今迄の経験からだが、事実多くの外国人は冷たくても美味しい日本のお弁当等を賞賛する声が圧倒的。そう考えると和食はなんとも計算し尽くされた完成形の食事だなとフト思った次第。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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