352ページ目   雑記

頼みのアジア勢

本日の日経紙には「奮発消費 世相映す」として、依然として厳しい個人消費を取り巻く環境下で貴金属や美術品、輸入自動車など高額品の売れ行きが好調な旨が載っていた。同紙によれば日本百貨店協会が昨日発表した9月全国百貨店売上高は前年同月比2.4%減と3ヶ月連続のマイナスであったものの、美術・宝飾品・貴金属は同1.1%伸びて6月から4ヶ月連続のプラスとなった模様。

詳細で自動車では英ロールス・ロイスや独メルセデス・ベンツ等も出ていたが、他にも価格帯で更にこれらを上回る伊ランボルギーニの「アヴェンタドール」も多数の予約で納車まで1年半待ち、英マクラーレン・オートモーティブでも3,000万円近い新型がロールス・ロイス並みの60台近く入っている旨を他紙でも見かけた。

この手は先立つ物がないと手も出ないワケだが、アッパーミドルクラスを見込んで百貨店各社は宝飾品等の販売を強化、外商も強化しより高級な商品を求める消費者に応えるとしているが、自粛反動というスポット的な国内より根強い期待はやはり一時のバブル期にある中国勢あたりが視野に入っているとの見方もある。

この中国、月初から株式市場が一週間もの間休場となった国慶節では、期間中の小売、飲食業の売上高が前年同期比で17.5%増になったと発表されている。伸び率は鈍化した模様だが全面的に売れ行きが良く、特に金価格下落で値下げされた宝飾品が売れたという。欧米ブランド株式は直近でキツイ調整に見舞われたが、日本の百貨店と共に目先の年末商戦で彼らに対する期待は依然大きい。


商習慣の壁

先週の日経紙一面には13日から「M&Aに賭ける」としてここ最近のM&A事情が載っていた。確かに恒常的な円高の影響もあって一寸したM&Aブームにもなっているが、週末の方の項にはこうした機運の中では外国勢の日本企業売りもまた誘発とも書いてあった。

斯様に環境で思わぬ出物が出て来るのはオークションと同様だが、この辺は株式市場で最近話題になったのが米投資ファンドのサーベラスが筆頭株主になっている「あおぞら銀行」か。相手として噂されているのが「ANZ(オーストラリア・ニュージーランド銀行)」で、その株価も思惑で一寸前には乱高下した経緯がある。もう一つこれも同紙に載っていたが、8月末に日本事業を撤退すると発表した英小売最大手「テスコ」等。

当時は鳴り物入りで登場したものだったが本国流経営方針が合わずに8年で撤退、また同じスーパー業界からこの手のパターンで撤退していったのが仏大手の「カルフール」がある。これもまた卸しを飛ばし直接仕入れを目論んだものの、上手くゆかずに撤退していったパターンだ。そうそう、本日も週末に続いてオリンパスが外国人社長の解任騒動で暴落しているが、これも相容れなかった部分があるのだろうか?

また上記のあおぞら銀の話とて今迄外銀が日本で大成功を収めた例が無く、こう考えると日本固有の商習慣とどう付き合うかが非常にキーとなってくるが、これは何も企業に限ったことでなく、例えば商品先物の新規上場商品なども或る面同じだなとフト思ったりもする。


続く夜間の伸び

さて、約一ヶ月ほど前に株式先物やFXの夜間取引について当欄では「グローバル化の波」としてこれらが急増している旨を書いたばかりだが、先週末の日経紙一面でも「個人マネー夜に動く」として、株式先物やFXなど揃って個人マネーの夜間シフトが鮮明になっている旨が載っていた。

今月に入って大証が発表した平成23年度上期の売買状況によれば、デリバティブ取引高が22年度上期に継いで過去2番目の多さであったが、日中取引に対する夜間取引比率は過去最高の37.9%になった模様。この辺は先月も書いたが、当時比較した8月の過去最高水準が更新されていることになる。

同紙では「欧米金融市場の不安定な展開が続き、翌朝の東京市場が開く前に一国も早く売買したいという個人投資家が増えているためだ。」と夜間の活況要因を挙げていたが、この辺はどうだろう?知人のトレーダーの多くは結局日中取引を見てもその値動きが二桁程度、恣意的な板の中で個人が戦うにはトレード妙味が薄いとしている。イニシアチブを執れる参加者が不在で、日本市場が自力でトレンドを形成することはないのが日中の実情であるとすれば、活況な夜間取引はその裏を見せられているようでもある。


今年の日本伝統工芸展

さて、東京では今週初めに終了となったが毎年恒例の「日本伝統工芸展」を過日観てきた。今年で58回目になるこの展も、毎回作者が得意の技巧で少しずつ変化を持たせながらもシリーズで出してくるからお気に入りが居る向きには次の作品が待ち遠しいというものだ。

さて今回の展では個人的に惹かれたのが、漆芸の世界で有名な鳥毛清氏の沈金飾箱「緑風」。氏といえば確か知人にある絵本を見せてもらった際にその原画が氏の沈金作品だった覚えがあるが、これら全て動物のモチーフだっただけに今回の作品で「イトトンボ」が描かれ静謐な和の空間が展開されていたのは新鮮であった。特徴的であったのは通常は沈金加工するのが文様の部分なのをこれは背景部分に沈金を施すという反転というか逆転のデザインに仕上げておりこれが実に溜息が出るほど美しい。

象嵌なども逸品揃いであったが、この他にも原清氏の鉄釉草花文扇壺は上記の「緑風」と併せてエミール・ガレの世界を彷彿させ、また薮内江美氏の乾漆蒟醤箱「樹雨」はこれまたドーム兄弟の木立文を連想させるが、おそらくは西洋の彼らもこうしたジャポニズムへの熱い情景で幾多もの後世に残る名作を手掛けたに違いない。

昨年見た柴田是真の漆の数々も感動的であったが、今やこの蒔絵など世界に君臨するトップブランドが挙って取り入れ始めており、急速にライフスタイルが変化する中でもこうした世界に誇れる技術が絶えることなく伝承され続けているのは本当に素晴らしいことである。


今度はLME

今週は貴金属の暴落というか乱高下が凄かったが、非鉄もまた先週末のたった2日間で銅先物価格など約13%の暴落を演じるなど総じてメタル系が波乱の様相である。さてこのメタルといえば、先週末には約130年の歴史を持ちメタルの取引高では世界最大の規模を誇るLME(ロンドン金属取引所)が、海外の複数の取引所から買収の申し出があり身売りを検討していることを明らかにしていた。

買収を申し出ているのはCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)やSGX(シンガポール取引所)等とみられ買収額は10億ポンド規模ともいわれているが、今年2月のドイツ取引所とNYSEユーロネクストの経営統合に向けた協議開始以来の一寸した縁談である。このSGXなど先のオーストラリア証券取引所買収案が豪政府の拒否で破談になったばかりであり、本件に関しては「報道や憶測についてはコメントしない」と慎重な姿勢が窺える。

斯様にオーストラリア証取も現状では白紙になってしまったが、今年はLSE(ロンドン証取)による加TMXグループ買収計画もまた白紙になっている。こうした国際的な取引所統合はやはりそう簡単には纏まらないものの、水面下では粛々と進行という感じか。

しかし、こうしてみるとくだらない既得権益に固執している国内勢の面々はなんともという感じだが、そうこうしているうちにも週明けの大量保有報告書では大証株式をドイツ銀グループが5.12%取得していることが明らかになり、また翌日の記者会見で東証社長は「スケジュール感は別にない」として特定の期限内合意にはこだわらない考えを表明している。この大量保有報告については一般ディーリングの用という模様だが、こんな内輪で縁談がゴタついている間に他が手土産を携え虎視眈眈と狙っている可能性もゼロとはいえないかもしれない。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2025

7

1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31