56ページ目   雑記

コメ離れの一方で

さて、先週に農水省は2023年度の主食用米の需要量(23年7月~24年6月)が過去最低を更新するとの見通しを公表しているが、翌日の日経紙商品面でも「コメ離れ、需給均衡遠く」と題しコメ離れが止まらない旨が出ていた。確かにパンや麺類といった食の多様化により、日本のコメの消費量はかれこれ60年近く減り続けているというデータがある。

ただ上記の需要量見通しはそれとして、米穀機構の調査では2022年の一人当たり精米消費量は5ヵ月連続で前年を上回っているというデータもある。今月アタマにも当欄ではコメに触れていたが、小麦高騰や円安で値上げの影響を実感し主食をコメにスイッチするなどコメに着目する向きが増えて来ている証左だろうか。

コメといえばもう一つ、世界では日本食マーケットの拡大を背景にコメの引き合いも拡大傾向にありコメの輸出量も増加傾向にあるという。農産物といえば今年のアタマに輸出が悲願の政府目標1兆円を超えた旨を書いた事があったが、足元の急激な円安で日本のコメは世界から更に安価に映っておりこれを商機として活かせるかどうかが注目される。


31、32年前の光景

政府・日銀が約24年ぶりに大規模な円買い介入に踏み切ったのが先月の22日だが、周知の通りそこから再度ズルズルと反落しこの大規模介入からちょうど1ヵ月後の先週22日未明、1ドル152円手前にあった円が約2時間ほどの間に一気に144円台にまで急騰し政府が事実上市場介入に踏み切った動きを見せた。

今回は9月の大規模介入時と違い政府は介入の事実を公表していないが、本日の午前中も取引の薄い時間帯に再度150円目前まで戻した水準から一気に145円台にまで円高方向に急騰する動きが見られた。これまで日銀の介入で突っ込んだところは悉く絶好のドルの買い場になっているが、日銀が金融緩和を継続する一方で政府の大規模円買い介入実施という奇異な構図が変らぬうちはこうした動きもまだ続きそうか。

さて、上記の通りドル円相場は32年ぶりに1ドル150円の大台を割ってきたが、ほぼ同じく31年ぶりの水準を示現したのが先週発表された9月の消費者物価指数。輸入物価上昇の主因は資源高から今や円安に切り替わっており、価格転嫁が進まずに厳しい内需型の中小企業勢を中心に収益が圧迫されている。

思えば32年前、世はイタメシブームとなりこの時にティラミスが爆発的に流行っていたのを思い出す。そして31年前といえば今のZ世代はもはや知らないジュリアナ東京がウォーターフロント地区に華々しくオープンしたのも思い出すが、円相場や経済指標は同水準とはいえ名目賃金の上昇率一つとっても今とは比べ物にならず当時を思い出すに今の寒々しい現状がより浮き彫りになるとつくづく。


2年ぶりの経済効果

さて、全国旅行支援がスタートし初の先週末は各地の宿泊施設が多くの利用客で賑わった模様。今月はこれと並行して様々な支援策がスタートしており全国旅行支援と日を同じくして静岡県ではプレミアム付食事券の販売を開始、翌12日には大阪府がプレミアム食事券の第一期受付を開始している。

そして本日からは東京都の全国旅行支援「ただいま東京プラス」がいよいよスタートとなるが、更に26日から約2年ぶりにプレミアム付き食事券の販売も開始される。また翌27日からは新潟県もプレミアム付食事券の一般販売を廃止するなど全国旅行支援にGoToイートキャンペーンも加わる事で各業界の期待は大きく、先に書いたように大和総研では波及効果と合せ約8300億円の経済効果が見込めるとの試算もある。

前回のGoToシリーズはそれぞれ感染拡大を助長しているとの批判も浴びて事実上頓挫してしまったような格好になってしまっただけに今回のキャンペーンに臨む思いも一入だが、制度終了時に見込まれるであろう駆け込み需要や反動減を見据えソフトランディングさせる措置などその対応なども今後の課題となってこようか。


iDeCoも変更?

さて、政府は公的年金に上乗せ出来るイデコ・iDeCo(個人型確定拠出型年金)の加入対象年齢を現在の64歳以下から、69歳以下まで拡大する方向で検討に入った旨が本日は報じられている。投資から貯蓄への道筋作りということで先にNISAの恒久化が報じられていたが、「資産倍増プラン」の柱に位置付けるという。

今年の4月から公的年金の受け取り時期が最大で75歳まで先送り出来るようになったが、その翌月5月から上記の通りこのイデコ・iDeCoも元々の60歳までの加入年齢が65歳までに拡大され、今月からは企業型確定拠出年金に加入している人でも原則イデコ・iDeCoに加入出来るようになっているなど各所でハードルは下がりつつあった。

今回は加入年齢について更なる一段の拡大というものだが、そもそもが少子高齢化で公的年金の給付水準が先細りする事が予測される背景があり、ならば国民年金の加入期間も延ばして然るべきとも思うがその辺は兎も角、平均寿命も延び老齢年金の受給開始年齢を過ぎても働く向きが過半を占めつつある現状下でのポジティブな幅の広がりは期待出来るだろうか。


依存体質

本日の日経紙金融経済面には全銀協が115行を対象に仕組み債等に絡む実態調査を開始した旨が出ていたが、デリバティブを駆使し国債や社債より高い利回りが出るよう設計した金融商品の所謂この仕組み債、既に三井住友銀行は販売を停止し楽天証券も先月末で全ての仕組み債の取り扱いを停止、更に今月から横浜銀行や京都銀行など6地銀・グループも仕組み債の個人販売を全面的に停止している。

この背景には先に金融庁が2022事務年度の重点施策をまとめた金融行政方針を発表しているが、ここで仕組み債が名指しされ販売する金融機関にその販売状況をヒアリングする旨の明記があった点などがあるようだ。証券子会社などを持つ地銀グループの販売構成を調べると実に約4分の1にあたる23%が仕組み債であったという。

仕組み債といえば10年以上も前からリーマン・ショック等の相場急変が起こる度に有名私大や地方自治体の損失などその都度問題が表面化してきた商品で、その変動の激しさ故に関西の某地方自治体など相場急変による値洗い損の拡大で訴訟を起こしたものの、アベノミクスの波で値洗いが一気に改善し訴訟が取り下げられたというヤレヤレな話もあったのを思い出す。

いずれにしろ直近では野村や大和など大手証券まで足並みが揃った感のあるこの度の動きで、喉元過ぎればでこうした金融商品に依存してきた向きには死活問題というところも出て来よう。ただ金融庁としても「貯蓄から投資」が喧伝されるなか、こうした流れが削がれるような金融商品の問題はマズイというのは想像に難くなくそういった意味でも今回の本気度が窺える。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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