56ページ目   雑記

漸く本腰

さて先週金曜日の日経紙一面には「仕組み債販売、一斉調査」と題し、金融庁が複雑でハイリスクといわれる仕組み債の問題を十分に検証せずに顧客に販売してきた事を問題視し、地域銀行99行やグループの証券会社27社を対象に仕組み債などの金融商品の販売実態について一斉調査に乗り出した旨の記事があった。

当欄でこの仕組み債やリンク債の類に関して銀行や保険、証券などの金融の業界団体に寄せられた苦情が過去最多を記録したと取り上げたのがリーマンショック後の2009年だった。当時は「目論見書」という字も読めない一部高齢者顧客層に売りまくるなどその販売方法を巡る問題が増加と書いていたが、あれから13年以上が経過し漸く重い腰を上げたという感じか。

とりわけ冒頭の証券子会社などを持つ地銀グループなど、その販売構成を調べると実に4分の1にあたる23%が仕組み債であったという同商品への依存体質が浮き彫りになっている。背景には事業環境の厳しさ等が挙げられているが、これ以外では保険等も外貨建て一時払いなど最近の為替の急変動を考慮するに火種となりそうな商品も販売強化した経緯があり今後も動向が注目される。


あれから28年

ちょうど28年前の1995年、最大震度7を観測する阪神淡路大震災が起き6400人以上が犠牲となるなど当時としては戦後最悪の被害が出た。新型コロナウイルスの影響などで直近の2年間は各所で中止となった追悼行事の類も、今年は大きな被害を受けた地域などで犠牲者を追悼する行事が行われた模様だ。

当時テレビなどでは信じられないような惨状が放映されていたのが蘇るが、株式市場も週明けからこれを織り込むようなかっこうで1000円以上暴落、余談だがこの急落がトリガーとなってあの女王陛下の銀行とも呼ばれていた英投資銀行のベアリングス銀行がデリバティブ取引で経営破綻をするに至ったのは業界では有名な話の一つだ。

ともあれこの震災は多くの教訓を残し全国で耐震化が進められるなど防災、減災への取り組みに大きな影響を与えた。3月には東日本大震災から12年目を迎えるが、今後は震災を経験していない世代が増えるなかこの記憶や教訓などどのように次に継承してゆくのかこの辺が課題となるか。


抑え込みの限界

さて、日銀は昨年末の政策決定会合で長期金利の上限を従来の0.25%程度から0.5%程度に変更し金利上昇余地を広げるサプライズ政策を発表したが、先週末のマーケットではこの長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが上昇、一時0.545%と日銀が上限とする0.5%程度を上回った。水準としては2015年6月以来、7年7か月ぶりの高水準となる。

国債といえば当欄では昨年の6月くらいから日銀VSヘッジファンドの対立構造を書き、ジョージ・ソロス氏が英イングランド銀行にポンド売りで挑んだ一件が思い出されるとしたが、連日の指値オペなどで昨年の購入額が6年ぶりに100兆円超えるほど大量の国債買いで日銀の防戦が続き長らく劣勢が続いた海外勢も漸く報われたという感じだ。

そもそも投機筋の挙っての参戦でイールドカーブが歪み企業の起債など金融環境に悪影響を及ぼすとの理由も背景に年末の修正となったワケだが、なお足元では債権市場の歪みが解消されたとは言い難い。早々の上限突破でこれの撤廃も視野に再度の修正に動くか否かというところだが、前回の例もあるだけに明日からの金融政策決定会合が注目されるところだ。


循環実現のハードル

本日マックの前を通って思い出したが、日本マクドナルドは先週に原材料費や物流費の上昇、円安等の影響で16日から約8割の商品の店頭価格を10~150円値上げすると発表している。かつてコカ・コーラを買うと無料引換券が付いていた時期もあったハンバーガーなど110円だったものが去年3月に130円、去年9月には150円へ、そして今回の170円へとこの1年で約60%近く上がった事になる。

マックに限らずこの1月も食品・日用品等で値上がりは続く。今月出荷分から日清製粉ウェルナはパスタソース製品、パン粉製品等を約3~25%値上げ、はごろもフーズも同缶詰など計65品目を値上げ、ピエトロもドレッシングを最大で7.1%値上げし、王子ネピアなどはトイレットロールを20%以上値上げする。

帝国データバンク調査では2022年末までに決定した23年中の飲食料品における値上げ品目数は4月までの予定を含め累計7390品目に上るといい、ペースとしては去年の1.5倍以上で再値上げや3度目の値上げも目立つ。この1月単月の値上げは580品目というが、来月は22年以降で2番目に多い規模となる4000超の品目で値上げが控えるという。

生鮮食品を含む消費者物価の総合指数は年末で前年比3.8%の上昇で31年10ヵ月ぶりの高さになったというが、一方で同じ3.8%という数値ながら減少となったのは厚労省が今月に発表した22年11月の1人あたり実質賃金。この実質賃金は既に最低の水準に沈んでおり、これに政府側はインフレ率を超える賃上げを要請しているが一部大手以外の中小には縁遠い話で物価上昇の影響を賃上げで吸収する循環の実現は容易ではないか。


年始の風物詩

さて今週から2023年の初売り商戦が本格的に始まったが、3年ぶりに行動制限のない新年を迎え初日の都内大手百貨店では開店前から多くの客が並ぶ光景が見られ入店客数は前年比で約20%ほど増加した模様。また売り上げも公表されている主要店では松屋銀座の前年比50%増をはじめ新宿高島屋が同約40%増、新宿京王百貨店で同約20%増、西武池袋本店で約10%増といずれも伸びた模様。

何処も物価高のなかでお得感を謳ったセールや福袋が好調だった模様だが、この福袋もここ数年のコロナ禍での巣ごもりに焦点を合わせたモノから今年は円安や物価上昇に抵抗すべく食品など家計応援的なモノへ焦点を合わせたモノへ変化し必需品への意識が高まっていることが表れている。

ところで初売りと並ぶ年初の風物詩、マグロの初競りも豊洲市場で本日行われた。今年は大間で水揚げされた212キロのクロマグロが、去年の1688万円から2000万円近く高い3604万円で競り落とされた。2019年の過去最高額から見れば約3億円も安い値段とはいえ、昨年からは約2.1倍でコロナ禍以降では最高額の競り落としとなる。

共同で競り落としたのは一昨年、昨年に続いて3年連続で銀座おのでらと仲卸のやま幸であったが、お祭り視点としてはやはり好勝負を繰り広げてきたマグロ初セリの代名詞的存在であったすしざんまいの喜代村の戦線離脱は寂しい気もするのは否めないところ。これまたコロナ禍を機に変わってしまった光景の一つといえるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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