64ページ目   雑記

低金利前提の崩壊

さて、先週アタマに取り上げた通り政府は次期日銀総裁に経済学者の植田氏を起用する人事案を国会に提出している。10年にわたり異次元緩和を頑なに続けてきただけに各所のランディングも容易で無いのは想像に難くないが、いまや経済活動自体も低金利を前提としたものが定着してしまっているだけに今後予測される金利上昇局面で各所ではいろいろと影響も出てこようか。

地銀など長引く低金利環境から本業の預金利ざやで稼ぐ銀行のビジネスモデルが通用しにくくなるなか、債券など市場運用に注力し営業部隊は手数料の高い「仕組み債」の販売に傾斜してきた。日銀が年末に長期金利変動許容幅を拡大した事で個人は住宅ローンの固定金利で負担増になるとか懸念されているが、他にもネット銀行などが提供する定期より高金利が売りの「仕組み預金」などは不利になり易いなど様々な金融商品にも影響が及ぶ可能性もある。

またこの長期金利上昇で地銀が保有する国債等の含み損は昨年9月末から年末までで倍増し、仕組み債の方はもう言わずもがな政府や金融業界一丸となって投資家保護へ舵を切る動きが顕著になってきた。保有債の含み損は拡大するわ営業収益の主力だった仕組み債も今後はこれまでのような販売は出来なくなるわとまさに泣きっ面に蜂といった感じだが、メガバンク勢の株価が軒並み復活している姿と併せ悲哀こもごもの光景である。


冷食の商機

さて、現在幕張メッセでは食品流通業界の最新トレンドが集結した展示会「スーパーマーケット・トレードショー2023」が開催されている。食品ロスを減らせるという世界初のバイキング方式の総菜量り売り装置など関心を集めていたが、この食品ロスという観点では保存性含め今後も不可欠な存在になるとの可能性も秘めている事から冷凍食品勢に注目する向きも多かった。

このトレードショーでも出来立てのフワフワ食感を実現したパンケーキやカレーパンなど従来冷食加工が難しかったモノの冷凍食品が注目を浴びていたが、コロナ禍での外食機会減から中食需要で冷凍食品の開発が進み、並行して冷凍技術の飛躍的向上もあって従来では冷食加工が難しかった鮨に至るまで店で食べるのと遜色ないほどにまでその完成度が高くなってきている。

そういった事もあって昨年末に発表されたその年の世相を反映した食を指す「今年の一皿」には(冷食グルメ)が選定されていたのも記憶に新しいところだ。数字上でも冷凍食品出荷額は過去最高を更新し今年も市場の堅調な伸びが予想されている事もあって、昨年は大手スーパーや大手百貨店なども冷凍食品専門店や大規模な冷食コーナーを設ける動きが目立った。

保存性・フードロス削減などSDGsの観点に加え近年流行りのタイパの項目まで満たしている冷凍食品は社会変化に対応する柔軟性も高く、ある意味コロナ禍の副産物で拡大したこのマーケットもコロナ禍前の日常が戻るであろう今後も定着してゆく可能性が非常に高いだけに伸びしろ大きく外せない商機となる可能性が高いか。


高止まりの企業物価指数

週明けは日銀人事に触れたが、日銀といえば先週に1月の企業間で取引されるモノの価格動向を示す企業物価指数を発表している。原油価格の値下がりや円安が一服した事などで12月の10.5%からは低下したものの、前年同月比で9.5%上昇と1年11か月連続で前の年を上回り高水準の伸びが続いている。

今回対象となった515品目のうち、88%にあたる456品目で値上がりしており企業の間で
原材料費の上昇分を販売価格に転嫁する動きが続いている。企業間の価格転嫁は中小企業などの今後の賃上げにつながりそうだとの期待も大きいが、昨年秋の発注企業側との価格交渉の実施状況結果では全く交渉が出来ていないが13.9%、全く価格転嫁が出来ていないが20.2%となっており未だに価格交渉さえ出来ていない実態が明らかになっている。

足元では春闘が本格化しているが、昨年末の商工中金調査では23年の中小の賃上げ率は21年実績よりは増加しているものの22年実績比でほぼ横ばいの旨が日曜日の日経紙にあった。価格転嫁の進捗など業績への懸念が賃上げ率の伸び悩みの背景となっている実態だがこれが進まない事には賃上げも遅々として進まないワケで、今後価格転嫁と併せどれだけの賃上げが為されるかこの辺が焦点となってくる。


世につれ・・・

本日はコロナ禍で迎える4回目のバレンタインデー。今年は原材料高の高騰で価格が上昇傾向にある事などで自分へのご褒美がトレンドとかだが、これに先駆けて開催されるサロンドュショコラほか大規模なイベントを見るに自分へのご褒美は既に近年定着してきておりテレワークの普及やらで義理チョコなど贈る相手の構図等も変わっている気がする。

義理チョコといえば数年前だったかゴディバの「義理チョコはもうやめよう」と題した新聞の全面広告が記憶に新しいが、コロナ禍のテレワーク普及で義理チョコの減少傾向は止まらず百貨店系の意識調査では義理チョコは全体のわずか3%と過去最低になった模様。また某調査会社では女性の8割が義理チョコをあげたくないと思っているという調査結果もある。

一方で男性側も義理チョコはもらっても嬉しくないという回答が6割超となった模様でいずれ消滅の道を歩むか。そもそも義理チョコやらそれに対するホワイトデーやらの日本独自のイベントはそういったモノ自体が存在しない欧米人らの目には奇異に映っていたワケだが、企業がチョコを売る為のマーケティング戦略の成果として長年定着したイベントも時代の流れに合わせ変ってくるか。

ちなみに当欄ではもう14年前のバレンタインデーに「奇異なる日本のValentine’s Day」と題し、「〜そもそも欧州等でバレンタインデーといえばお互いに思い思いの品を交換したりするのが普通で寧ろこの日本独特の習慣は以前からかなり奇異に見られていたのが事実。さて、次第にこの辺も国際標準の道を歩むのであろうか?」と書いていたが、多様化顕著な今こそ日本が漸く標準化へ向かうチャンスの時なのかもしれない。


次期総裁の重責

先週末の日経紙一面を飾っていたのは「日銀総裁に植田氏」の見出しで、政府は4月に退任する日銀の黒田総裁の後任に経済学者で元日銀審議委員の植田氏を起用する人事を固めた旨の記事であった。日銀総裁の人事に関しては先週も書いた通り、現副総裁の雨宮氏の名前が挙がっていたが同氏は就任を固辞したとみられる。

事前の民間エコノミストの予想でも雨宮氏と違って同氏の名前は挙がっていなかった事でサプライズ人事だったが、誰がなったとしても異次元緩和が生んだ副産物の諸々の処理が待ち受けている。金利を抑え込むために大量の国債買いを行った結果、今や日銀は発行残高の半分以上を保有する異常事態になっているし、大量買いといえばETFもまた然りで購入を続けた結果今やその保有額は40兆円に迫る勢いだ。

国債に関しては既にYCCによる歪で企業に起債などへの悪影響が懸念されているが、YCCの限界を見込み空売りした投資家が決済日までに国債調達が出来ずフェイルが急増しているのも直近で話題になっている。またETFにしても粛々とした継続購入で既に日銀は上場企業の約4割で上位10位以内に入る大株主となっており、自己資本の数倍に相当する株の変動リスクを自らのバランスシートに抱えるなど弊害を挙げればキリがない。

コーポレート・ガバナンスの重要性が彼方此方で謳われるなか、この空洞化さえ招きかねない問題があるこうしたオペはほかの主要中銀は手掛けない特異な政策だったのは言うまでもない。これまでこれらのイグジットに関しては様々な憶測が飛び交ってきたが、はたして10年にわたって続けた異次元緩和をどう降りてゆくのか次期総裁の重責は計り知れないといえる。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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