74ページ目   雑記

直接アプローチの是非

さて、資源エネルギー庁が発表した7日時点のレギュラーガソリン価格は、1リットル174.6円と前週から1.8円上昇しこれで上昇は9週間連続となった。斯様なガソリン価格の高騰抑制の為に、政府は石油元売り各社に支給する補助金上限をこれまでの5円から25円に引き上げる事とし本日から1リットルあたり17.7円支給する。

ちなみにこれには一般予備費3,600億円強を活用する模様で高騰が続いた場合は追加策も準備する方針というが、果たしてというか前回当欄でも挙げた「トリガー条項」の凍結解除は見送られた。アプローチの構図からすれば今回のような間接アプローチより減税という直接アプローチの方が即効性があるのは明らかだが、やはり税収や法改正の壁があるという事だったか。

このトリガー条項に関しては自民幹事長は自民、公明の両党で相談するとしているが、WTIの急騰など見るに今後もガソリン価格が上昇し続けるのは火を見るより明らかで補助金上限の到達は早晩訪れよう。ともあれ政府としては更なるエネルギーの価格上昇に対し家計や企業に対する更なる対策を考える必要が出て来ているが、このウクライナ情勢を鑑み痛みを共有するという面からも我々は各々が耐えなければならない時期という覚悟も必要か。


ミモザ

昨日は世界中の女性の権利を守り、女性の活躍を支援する為の行動を呼びかけるべく1977年に国連によって制定された「国際女性デー」であった。毎年恒例となった日経トレンディーによる2022年のヒット予測BEST30の10位には女性が抱える課題をテクノロジーで解決する商品やサービスなどフェムテックギアが入るなど近年は日本でもそうした活動が浸透してきた感がある。

昨年は女性の国内就業者数が前年より12万人増加し3000万人に迫る勢いと、女性の社会進出も進み女性役員数も漸く増加傾向にはある。政府としても2020年代の出来るだけ早い時期で指導的地位に占める女性の割合を3割にする事を目指しているところだが、それでもなお現況は日本企業の女性役員比率は1割程度にとどまり欧米などと比較するにその澪と感は否めない。

この辺は各国の男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数でいまだに先進国では最低レベルに位置しているあたりにも表れているが、ESGが喧しい現代において仕事への価値観も多様化しており、そんな人材をどうマネジメントするかという観点の無い企業はその経営に大きなリスクをもたらす可能性もあるだけに女性役員の登用など多様性の活かし方は喫緊の課題か。


経済と倫理

さて、2度にわたる停戦交渉も虚しくとうとうロシアは欧州最大の原発まで攻撃する前代未聞の行動に出たが、こうした事を背景に各国の主力大手企業が続々とロシアから離れる動きが加速している。ロシアといえば先ず石油だが、これに絡んでは英BPをはじめシェルもロシア極東で展開しているサハリン2から撤退、また米エクソンもサハリン1からの撤退方針を決めている。

自動車業界も米GMがロシアに輸出停止したのをはじめ、ドイツからはダイムラートラックにBMWやフォルクスワーゲン、英はロールス・ロイスにアストンマーティンやジャガーもロシア事業を停止と続いている。また航空業界も米ボーイングや欧州エアバスがロシアでのサービスを停止、末端消費では米アップルがアイフォーンはじめとした製品の販売停止にナイキやH&M、英バーバリーやイケアも続々とこれに続く。

更にはエンタメからは米ディズニーやワーナーメディア、ソニーピクチャーもロシアで劇場映画の公開を中止し、米ゲーム大手のEAはサッカーなどを題材としたゲームからロシア代表とクラブチームを除外すると発表、金融では米マスターカードやビザにアメックスも決済ネットワークからロシアの複数銀行を排除するなどロシア国民にとっても生活水準の劇的な変化の波が迫る。

サハリン1やサハリン2など言わずもがな巨大プロジェクトであり、またハリウッドにとってもロシアは極めて重要な市場であったが、人権問題で各企業が踏み絵を迫られた中国ビジネスを彷彿させる今回はこの時より待ったなしの状況と言え、いずれも利益優先よりも倫理を優先し事業撤退を英断している。上記のサハリン2には本邦勢も三菱商事や三井物産が出資しているが、エシカル経済の観点から他の進出企業含め今後の在り方が問われる事になるか。


制裁と返り血

さて、一寸前まで個人的な海外送金をする際には送金依頼書に必ずSWIFTナンバーを記入していたものだが、周知の通り欧米はこの国際的な資金決済網であるSWIFTからロシアの大手行排除を実行する事とし日本もこれに追随する方針を示している。SWIFTから排除されるとなると世界で殆どの金融取引が出来なくなることで輸出入が滞りその事業展開能力が損なわれる事になる。

このSWIFT排除、冒頭の送金依頼書にも北朝鮮・イラン関連規制に該当しないかを問うチェック項目があったが、かつてこのイランと北朝鮮に発動された経緯がある。常軌を逸したかのようにも見えるロシア大統領は核戦力を含む核抑止部隊を高度の警戒態勢に置くよう軍司令部に命じた事が報じられていたが、さしずめ金融の世界で核爆弾にも相当するのがこのSWIFT排除か。

これに加えて制裁はロシア中銀にまで及んだ事で外貨準備を使った通貨の買い支えが出来なくなり、通貨防衛の為に出来るのは利上げくらいという事で急遽その政策金利をクリミア併合時の17%を上回る20%にまで引き上げている。しかし国家や通貨そのものの信認が失われつつあり、中銀が斯様に強烈な利上げを行っても通貨価値の維持やインフレ抑制の効果は期待できないだろうか。

いずれにせよこの金融制裁がロシア経済を悪化させるのは想像に難くないが、上記の通りの金融核爆弾を行使した” 返り血”もまた避けられない。ただでさえ昨年から原油や小麦共に上げ続けていたところへ世界輸出の約3割を占める大国への制裁措置は火に油で、直近のWTI先物は約13年半ぶりの高値示現、小麦先物も14年ぶりの高値となっており遠く離れた地に居る我々も今後は更なる身構えが必要になるか。


コロナ禍の疲弊

さて、一昨日は新宿のハイアットリージェンシー東京が身売りを検討しているとの報が入って来た。ロビーの巨大なクリスタルシァンデリアやガラス張りのエレベーターなどが象徴するようにバブルと共に開業し我々の世代ではホテルセンチュリーハイアットと言う方が馴染みがあるが、施設の老朽化やコロナ禍があだとなって小田急電鉄が保有資産の見直しに動く模様だ。

バブル期に欠かせない存在であったホテルといえばこのハイアット以外にも赤坂プリンスホテルや六本木プリンスホテルがあったがいずれも今はその姿を消し、生まれ変わったホテルの一部も直近ではシンガポールの政府系ファンドへ売却する方針を西武側が表明している通り、ここ数年に及ぶコロナ禍で鉄道業界の疲弊の深さがが窺えるというもの。

しかし昨年営業を終了してしまったホテルグランドパレスや上記の赤坂プリンスホテルなど幾つもの名物メニューがありそれらがもう味わえなくなってしまう寂しさがあったものだが、ココも擁するレストランは幸福ならぬ”口福”がコンセプトであったが既に1年前から大半のレストランを閉めていた。つくづくバブル期に馴染のあった施設の身売り話の浮上はやはり感慨深いもの。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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