スイス・ショック
さて、先週末に起こった寝耳に水の出来事と言えばやはりスイス中央銀行が打ち出した無制限の為替介入政策の終了決定だろうか。突如の決定に当のスイスフランは対ユーロで約3割近くも急騰したが、想定外の決定からの急変動が他へも余波を広げた。
スイスフランの急騰に伴い先ず株価指数のSIMは前日比で約8.7%とここ25年で最も大きな下落となり、個別では腕時計世界最大手のスウォッチグループが前日比16%の急落、他リシュモン等も同様に急落となり、本邦株式市場も対ユーロの円相場が昨年ハロウィーンに日銀が追加金融緩和策を決定する前の水準まで上昇した事で、週末は欧州関連株が軒並み売られ、コモディティでは金がリスク資産代替で4ヶ月ぶりの高値まで買われた。
マーケットはそんな感じだが決定直後に直ぐに話題に上がったのはやはりFX関係、もともとスイスフランのような低金利通貨はキャリーでショートの対象になり易い素地を持っていたところへ、中央銀行のお墨付き?介入政策が為されていた事で個人投資家にとっては上限は限られるという安心感につながっていたからこれで一瞬のうちにパンクしたショート勢が続出となった。
これですぐさま思い出したのが、あの東日本大震災の時にクズ同然のプレミアムが大化けしたオプション事件だろうか。セルボラでほったらかしにしていた向きが一晩で一斉にパンクし、また業者もその顧客勘定損失をカバーし切れず破綻懸念が彼方此方で起こったが、今回も業者の中には破綻したところや金融支援を仰ぐところが出てきている。
それでも業者の中には昨年秋頃にカウンターパーティーよりスイス中銀が介入中断または放棄の可能性があるという事からの必要証拠金引き上げ要請を告知していたところもあった模様だが、改めて国家による為替介入には限界がある事を実感させられた事例だ。昨今は業者も投資家も以前にも増して想定外に備えたリスク管理の必要性を切に感じる。