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総裁選相場

過去最多の9人で争うという異例のケースで注目された自民党総裁選であったが、周知のように自民党は先週末に石破氏を第28代総裁に選んだ。これで来月1日の召集の臨時国会で102代目の首相に就任する運びとなったが、異例といえばマーケットも総選挙を睨んでの一喜一憂で為替や株式も夜間取引に跨って急騰急落の乱高下を演じることとなった。

週末の場中では金融緩和に前向きな高市経済安全保障相が勝利する可能性が高まった事で、同氏の金融緩和を想定した円安・ドル高が進み企業業績改善期待から日経平均は2日連続の大幅高を演じていたものだが、第一回投票首位から一転し引け後に金融所得課税強化案や法人税引き上げのイメージがある石破氏の選出を受けドル円相場は146円台から142円台まで急騰、また日経平均も900円超の高値引けから夜間先物では2000円以上の急落で倍返しの憂き目に遭っている。

週明けの日経平均も先物に寄せる形で1910.01円安となったが、斯様に先物オプション市場などは先月から続く乱高下で大きく取れるチャンスが近年稀に見る多さとなっている。週末夜間の動きでは上記の日経平均の約3000円の振れ幅の動きに合わせコールは期待の剝げ落ちから軒並み4分の1に暴落、反面プットは息を吹き返しディープアウトのものまで幅広く反応し約2~4倍の大化けとわずか数時間で大逆転劇を演じた。

さて、新内閣の発足後はマーケットの焦点が衆院解散時期に移るが、本日の会見で早くも石破氏は来月27日に解散総選挙を行いたいとの考えを表明している。ところで解散といえば2000年以降の解散は8回、うち日経平均は全勝しTOPIXも7回が上昇、解散前日大引から投開票直前の大引までの平均上昇率はそれぞれ5.2%、4.1%となっている事で先月も当欄で“解散は買い”というアノマリーがあると書いたが、さて今回はどうなるか海外勢の動向含め注目しておきたい。


没入型増殖

7月からベルサール新宿ではイマーシブミュージアムTOKYO vol.3が開催されているが、3年目となる今年のテーマは印象派と浮世絵で、モネやゴッホなどの印象派、ポスト印象派と西洋絵画に影響を与えた浮世絵がシンクロした世界を先端技術で表現している。さて、印象派といえば今月29日まで日本橋三井ホールではフランス印象派の世界を冒険する没入型展覧会の「モネ&フレンズ・アライブ」が開催されている。

ところでこの没入型形態、どこか既視感を覚えたがそれもそのはず3月に当欄でも取り上げた没入型展覧会の「ゴッホ・アライブ東京展」を手掛けたグランデ・エクスペリエンセズがプロデュースしたもので、クロード・モネやルノワール、エドガー・ドガからポスト印象派のポール・セザンヌ等々教科書に出てくるような著名画家の作品がサウンドや香りなど五感に訴える仕掛け?で印象派の世界に没入できるというもの。

こうした没入型形態に関しては春先にも「イマーシブ・フォート東京」など取り上げたが、上記のようなゴッホはじめ5月まで開催されていたサルバドール・ダリなどアート系もチームラボの登場以降は急速に増加してきた感もある。ちなみにこのチームラボプラネッツTOKYOの昨年の来場者は250万人を超え世界で最も来館者が多い美術館としてギネス世界記録に認定されている。

上記のイマーシブ・フォート東京はUSJや西武遊園地に続く大成功となると他の大型テーマパーク等でも戦略含めいろいろな意味で一つの試金石となりそうだが、アート系は既に“没入型”が一つのトレンドとして定着してきている感もある。イマーシブ関連の市場は年々拡大傾向にあり、その市場規模は2022年度の比較で2027年には1.5倍規模になるとの予測が出ているだけに今後も五感を刺激する新たな企画展の登場に期待したいところ。


ジパングを夢見て

本日の日経紙グローバル面には「NY金先物、最高値更新」と題し、米利下げの継続期待が金先物の投資妙味を高めたことなどを背景に金の国際指標となるNY先物が1トロイオンス2660ドルまで上昇し最高値を更新した旨が出ていた。直近ではイスラエル軍によるレバノンのヒズボラを標的にした大規模空爆も行われており地政学リスクの高まりも意識されている。

これまで複合的な要因で金利が付かないハンデを背負いながらも高値を更新してきただけに実際に利下げ継続となると更に追い風となるのは想像に難くないが、昨今の金高騰を背景にしてか国内でも7月には北海道でかつて栄えた静狩金山周辺で豪州のキンギンエクスポレーションの子会社であるジャペックスが金鉱脈を見つけようと採掘調査計画が持ち上がっている旨が報じられている。

国内の金鉱山といえば今では現役で稼働しているのが菱刈鉱山くらいでジパングの面影も無いが、余談だがかつてジャスダック市場に金鉱山事業を謳ったジパングなる企業が上場していたのを思い出す。外資系証券を渡り歩いた人物が代表を務めていたものの裏口上場の疑義の中で消えていった。それはさておきこの豪州系企業、黄金の国ジパングでめでたく有望な金鉱脈を見つけることが叶うのかどうかその行方を見ておきたい。


民営化から20年

先週金曜に東証は東京メトロ(東京地下鉄)の上場を承認し、翌日の日経紙にも「東京地下鉄株式会社」の新規上場に伴う株式売り出しの全面広告が出ていた。来月にプライム市場上場予定ということで、2018年のソフトバンク以来約6年ぶりの大型上場となるが、実に民営化から20年を経て満を持しての上場という感じか。

現在は国が僅かに50%を上回るものの東京都とほぼ半分ずつの株主構成となっているが、双方同率の売却で売り出しの想定価格は1株1100円、来月8日からブックビルディングとなり正式な売り出し価格は15日に決定する。抜群の認知度を誇る同社に投資家の需要がどの程度積み上がるかだが、需要を喚起するために早くも同社は株主優待の導入を発表している。

鉄道系の優待は最近ではけっこうお得なモノも多くなってきているが、同社が発表したものを見てみると利用者も多い駅ナカ蕎麦のトッピング無料券などユニークなモノに加えゴルフ練習場や地下鉄博物館無料招待から定番の優待乗車券などラインナップしており、ほぼ毎日利用する向きにとってはそこそこ魅力的に映るモノとなっている。

その辺は兎も角も近年では総会でもお土産を廃止する企業が続出し、株主優待もまた東証再編による株主数規定緩和や株主平等性の観点から実際に特典を受け難い外人投資家などの批判を受け一頃は減少傾向にあったものだが、新NISAの導入でここへきてまたぞろ優待創設の動きも出てきている。分割の動きもそうだが、政策保有株の売却加速等も背景に改めて個人の存在が再認識されはじめているということか。


世界が求めるコンテンツ

周知のように米テレビ業界で最高の栄誉とされる第76回エミー賞の授賞式が日本時間16日に米ロサンゼルスで開かれ、日本の戦国時代を舞台に徳川家康をモデルにした武将の戦いを描いたドラマ「SHOGUN 将軍」がエミー賞では史上最多の計18冠に輝いた。土壌としてアジアでは韓国ドラマが先行して躍進していた事や、多様なコンテンツを求める流れという背景も後押ししたとみられる。

多彩なコンテンツを求めるといえば、最近では6月に米大手投資ファンドのブラックストーンが東証プライム市場に上場している業界首位級漫画配信サイトの「インフォコム」を買収しているが、買収絡みでは今月に入って別の米投資ファンド米フォートレス・インベストメント・グループが東証スタンダード市場に上場している「常磐興産」を買収することが明らかになるなどエンタメの価値を外資が次々と狙う。

ところで過日放映されたテレ東のWBSにて自民党総裁選に立候補した全員にどういった成長戦略を描くのかという質問で、候補の一人の林官房長官はシンプルに「コンテンツ」の文字を掲げる一点張りでコンテンツは日本の基幹産業といってもいいと言っていたのが印象的だったが、政府は上記のプライム上場のインフォコムが米投資ファンドに買収された6月に、アニメや漫画といったコンテンツを海外に売り込む「クールジャパン戦略」を5年ぶりに改定している。

今回の快挙で漸くというか“正しい日本の表現”というものが叶った格好ともいえるが、同時に日本の映像業界に与える影響も大きく上記の戦略にも追い風となって来るのは間違いないところ。外資に次々と買収されるのも複雑な感があるものの、家電や自動車に続く日本のお家芸として33年に約4倍の20兆円に引き上げる目標を目指し今後どうセールスしてゆくのか政府共に舵取りが問われる。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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