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普及への距離感

さて先週はインフレ懸念が売りを誘い日米共に株価が大きく突っ込みを見せたが、株式と共に大きく値を崩したモノにビットコインはじめとした暗号資産もあった。この辺の背景の一つには2月にビットコインを15億ドル購入し翌月には米でEV等の自社製品についてビットコインンによる決済を受け入れ始めたものの、先週に一転してこのサービスを停止表明したところが大きい。

当初年内には米国外にも拡大すると意欲を見せていた話題のサービス導入発表からわずか3ヵ月での方針一転の背景には環境に大きな負荷をかけてはいけないとの理由があったようだが、今朝はテスラの売却否定発言で漸く下げ止まったビットコイン相場も発言直後には約10%ほど下落しテスラ本体も約3%下落し4日続落となっていた。

またマスク氏といえばわずか1ヵ月の間に800%の暴騰を演じた同じ暗号資産のドージコン支援も有名なところだが、こちらも米人気バラエティー番組内で詐欺とを発言したのを受けて同番組放映時間後に3割以上もの暴落を演じている。斯様な急変動を目の当たりにすると、他企業も挙って決済手段としての参入を計画しているもののその普及にはやはり疑問を感じざるを得ないのが正直なところか。

ボラティリティに対する仕組みの構築や関連手数料コスト、盗難リスクの問題等々課題は多いが、SECなどは予てより暗号資産市場へ監視を強めている。また直近では米司法省とIRSが暗号資産交換業者で世界最大規模のバイナンスHDに対してマネロンや脱税などの疑いで情報収集しているとの報も入ってきており先ずはこの辺の動向を注視しておきたい。


ダイハード4.0の現実化

今週は周知の通り米国最大の石油パイプライン運営コロニアル・パイプラインがハッカー集団らと思われるサイバー攻撃に遭いパイプラインの稼働停止にまで至ったとの報が世間を騒がせていたが、先の水道浄水施設のハッカー攻撃と併せ2007年に公開されヒットしたハッカー集団が金融機関やインフラを狙うという筋書きの映画「ダイハード4.0」が瞬時に思い出された。

14年前の娯楽映画がまさか本当に現実のものになってしまうとは当時は想像もしなかったが、これに限らず本邦企業も先月から今月にかけてだけでもゼネコン大手の鹿島、センサー機器大手のキーエンス、また直近では印刷機大手の小森コーポレーションなど続々とハッカー集団によるサイバー攻撃に遭い金銭の支払いを要求されるなどの被害に遭っている。

本日政府はサイバー攻撃を念頭にサイバー分野の防御力を強化するのが柱の次期サイバーセキュリティー戦略の骨子をまとめ昨日発足が正式に決まったデジタル庁との連携も進める構えだが、台湾など近隣諸国と比較しても先のコロナウイルス接触確認アプリのお粗末さに見られるようにデジタル分野でも心もとないのが現状。一昨日取り上げたワクチン同様にこの分野も後進国落ちと揶揄されぬよう官民共に対策強化が喫緊の課題なのは言うまでもない。


世界経済の覇者

さてインフレ懸念から直近でこそマネーが流出している米のテック株群だが、これらのうち主力のGAFAは先月末までに発表された21年1〜3月期決算ではアルファベットの純利益が1年前の2.6倍、アップルは同2.1倍、フェイスブックも同1.9倍、アマゾンは巣ごもり消費に加えクラウドサービス事業も好調で実に3.2倍と何れの企業も破竹の勢いとなっていた。

というワケではこのGAFAが3ヵ月で稼いだ利益は実に6兆4000億円とまさに前代未聞な数字となり何かと本邦企業と比較するのもあれだが、例えば日本を代表?するトヨタ自動車の昨年の純利益が約2兆円相当として考えると実に同社の3年分の利益をたったの3ヵ月で稼いだ計算になる。

昨年はテスラの時価総額がトヨタ自動車のそれを超えたのも束の間、わずか半年足らずであっという間にこのトヨタ自動車含めた日本を代表する自動車9社をも上回った旨を書いたのを思い出すが、改めて日米の新陳代謝の違いを見せつけられると共にイノベーション力を武器にビジネス拡大を狙っていたかつてのガムシャラさがすっかり色褪せてしまった感は否めない。


株もワクチンも

本日の日経平均は値嵩系への売りなどから4営業日ぶりに急反落となっていたが、先週の日経紙夕刊・投信番付で冒頭に「日本株の上昇率は中・長期で欧米株に見劣りし、いまだ史上最高値を更新できていない。」との一文があった通りでマーケット関係者は一様に口を揃えてこの出遅れを指摘する声が多い。

機関投資家需要含め様々な要因が考えられるが、ワクチン格差や直近の中国問題を挙げる声も多い。ワクチンに関しては昨日の日経紙・インサイドアウトに新型コロナウイルスワクチン開発で日本は米中ロばかりかベトナムやインドにさえ遅れを取っている旨が書かれていたが、果たしてその接種率も惨憺たるものでこの影響がサービス業のPMIなどに色濃く表れているところ。

もう一つの中国問題といえばやはり新疆ウイグル自治区問題だが、日経平均への寄与度の高いファーストリテイリングなどの主力がこうした渦中に居るだけにこの辺が足を引っ張っているか。何れにせよワクチンにしても生産拠点にさえなれない現状を見るに後進国に成り下がったと言われても止む無し。本日の日経朝刊には宝島社の考えさせられる全面広告があったが、マーケットも政治・行政劣化の影響を受けている部分も多分にあろうか。


親超え企業価値

さてGW期間で営業日が2日のみであった先週の株式市場だが、先週末の日経紙投資情報面にて「時価総額でキリンHD超え」と題し取り上げられていた通り、協和キリンの時価総額が同社株の5割を保有する親会社のキリンHDを初めて上回るという所謂「親子逆転」現象が見られた。

2008年にキリンHDが連結子会社として以来協和キリンの下鞘が通常であったが、昨今のキリンHDはミャンマー政変による事業影響への懸念から右肩下がりが続く一方、協和キリンは骨の病気の治療薬や新薬開発への期待を背景に値位置を切り上げ先週末には年初来高値更新と対照的である。

同紙ではこの手では他にGMOインターネット・GMOペイメントゲートウェイ等も挙げられていたが、これら以外でも例えば大型TOBが成立したNTT・NTTドコモも然り、またパソナグループが株式の50%を保有する傘下のベネフィットワンなどはその時価総額がパソナの5倍超となるなど冒頭の協和キリンどころではない格差だ。

これら極端にいえば親会社の株を保有している株主は会社解散で小会社の株式を現金化すれば利益が出る勘定とも成り得るワケで、企業価値の逆転現象に対しアクティビスト含めた投資家の視線も厳しくなるにつれ下鞘な時価総額に甘んじている「親」も企業統治の観点含めその身の振り方が問われる場面が出て来る可能性も今後高くなりそうな気がする。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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