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基本的株主権利

さて、先週末の日経紙は三井住友信託銀行とみずほ信託銀行が東芝の株主総会を巡りその事務処理が適切でなかった事で、シンガポールの一部海外ファンドの意見が反映されない事態が起きていた件に端を発した議決権の誤集計が国内の上場企業の実に3割強にあたる計1346社にものぼると発表した旨の記事が一面を飾っていた。

この一件、当該ファンド分を含む無効扱いとなった行使書は議決権ベースで1.3%という事など含め7月までに開催された総会において決議に影響した事例は見つかっていないとしているものの、コーポレートガバナンス導入を背景に近年ではアクティビストの質も存在もその影響が大きくなり賛否が僅差で分かれるケースも増えてきているだけに看過出来ない一件だろう。

最も基本的な株主の権利を損ないかねない斯様な不適切処理は20年間続いてきたというが、こんな慣習が続けられたのもいまだ旧態依然の郵送形式が主流という背景があるのも主因で、旧態依然といえば他にも株主総会が集中してしまうというこれまた欧米に比べて特異な形態という背景もあるか。

現に電子的議決権行使は欧米などでは9割以上になっているのに対し、本邦ではそれが10%台にとどまっているなどこういったところこそデジタル化が焦眉の急ではないか。また今回は扱う側が謝罪に追い込まれた格好だが、大株主の一部は委託側である企業のガバナンスにこそ問題があるとその姿勢に疑問を呈する意見もあり各所で応分の説明責任が問われる事になるか。


HYIPの甘い罠

さて、先週話題になったニュースの中に磁気ネックレスなどの預託商法を展開し高齢者ら延べ約1万人から計約2100億円を違法に集めたジャパンライフの旧経営陣らが今更ながら詐欺容疑で逮捕された件があったが、同社といえば「桜を見る会」に絡みいろいろと物議を醸し出しその名を知った向きも多いか。

この辺は世代でもまた違うと思うが、磁気商品よりも同社の売り上げがピークを記録した今のミドル世代が学生だった頃は健康布団を主力としたマルチ商法が全盛であった。同時期には豊田商事事件も世間を賑せていたのも記憶に新しいが、思えばこの時期はバブルの走りの頃で世の中がギラギラしていたのも鮮明に思い出される。

販売預託商法の類では当欄でも過去安愚楽牧場など取り上げた事があったが、他にケフィアやMRIも然りでHYIPの甘い匂いに吸い寄せられネットワークビジネスと共にこれらは何時の時代でも廃れることが無い。冒頭のジャパンライフもそうだったが、著名人の利用や怪しさのハードルを取り払う程度の長期運営を続けている等々の部分もあるだけに幅広い層の金融リテラシーの一層の向上が急務の課題だろうか。


新政権関連物色

さて菅新政権の目玉政策が相次いで動き出しているが早速の総務相との会談では携帯電話料金の具体的結論を出すよう指示、会談後に値下げ幅が1割程度では改革にならないと総務相が国際水準目標を謳った事で先週末は独占状態とされている大手三社のソフトバンクにKDDI、NTTドコモに至っては年初来安値を更新していた。

NTTグループでも一方でNTTデータは、同じく同氏が注力してゆくと思われるデジタル庁設置創設で受注増加思惑からその株価は先週末約7ヵ月ぶりの高値を付け、その2次受け開発を手掛ける鈴与シンワートは本日で3日連続ストップ高の離れ業で暴騰。他にも官公庁関連でキャリアリンクも本日年初来高値を更新し、新興勢からはクラウド管理サービスを手掛けるHENNGEも本日はストップ高で年初来高値を更新とどれも破竹の勢いを呈している。

斯様にマーケットの方も先の地銀に続いて其々が反応しウィズコロナから菅政策銘柄へとテーマが変わってきており、新政権のトップダウンに対し自身に関わって来る民間も或る意味戦々恐々といった部分もあるが、何れにせよ衆院解散のタイミング如何でまたこの辺の構図も変わってくるかどうか引き続き注目したい。


世紀の破談?

さて、先の日曜日には米エヌビディアが英半導体設計アームを最大400億ドルで買収する事が明らかになったが大型買収といえばもう一つ、当欄でも昨年末に取り上げていた仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンによる米宝飾大手ティファニーの買収が撤回されたとの件も巷で話題になっていた。

その背景として米政府がフランス製品に関税を課す方針を示した事を受けた仏外相から買収合意の履行先送りを要請され断念せざるを得なかったとの事だが、新型コロナウイルスが猛威を振う直前の最悪なタイミングでの基本合意だっただけに果たしてのコロナ禍で販売が急落するなか斯様な好材料?は千載一遇の撤回チャンスだったのは想像に難くないか。

この縁談で資金力や販促力の強化を目論んでいたティファニー側は当然の如く猛反発の様相を呈しているが、コロナのパンデミックが高級品業界に如何ほどの影響力を及ぼしているかが露呈されたケースといえよう。とはいえ高級品業界の一角はそれとしてもマクロではこれまで停滞していたM&Aは急速に復調しているという。

この辺は一昨日の日経紙夕刊でも調査会社ディールロジックが出したところによる7〜8月の世界のM&A総額が2ヵ月連続で前年実績を上回った旨が出ていたが、先に当欄でも書いたコロナ禍で世界の上場企業の稼ぎ頭が激変しドラスティックな下剋上が起きている状況下において斯様な手段で成長を見出す流れは今後も続こうか。


路線継承

さて、周知の通り衆参両院は本日の本会議で菅自民党総裁を第99代首相に選出、自民・公明両党による連立内閣を発足させた。組閣に関しては安倍政権時の閣僚の再任や横滑りが目立つ布陣で目新しさに欠ける感は否めないものの、概ね金融政策も日銀の緩和路線など安倍路線を引き継ぐ格好となろうか。

日銀の金融緩和政策といえば本日の日経紙にも「日銀市場安定策 危機モード一服」と題し、日銀によるETF購入額が3月をピークにし先月はコロナ前の昨年11月以来の低水準であった旨が出ていたが、株式市場の不安定さは続くとみて当面は年12兆円に倍増したETF購入額の上限を据え置くとみられるという。

斯様なETF買いが奏功して日経平均も今月に入ってからコロナ前水準を回復となったがこうしたオペレーションも功罪相半ば、持ち合い解消が謳われる中で予てより年内にはGPIFを上回り日本最大の株主となる見通しといわれていたが春先の一段の爆買いで推して知るべし、今後具体的な数字が出る度にコーポレートガバナンスの観点絡めまた俎上に載せられるのは想像に難くないか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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