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消えるか慣習

本日の日経紙投資情報面の一目均衡の頁では「持ち合い株が姿を消す日」と題し、資本効率の改善が求められるなか企業統治や資本効率の足枷とされる持ち合い株が姿を消す日は来るのかとの問題提議があったが、この項目に関しては東証プライム市場上場企業のうち7割がコーポレートガバナンス報告書で削減方針を示すなど近年は企業側の意識も高くなってきている。

そういえば今年届いた株主総会の招集通知では自己株式消却や株式分割に関するお知らせのほか、政策保有株についても言及する企業が何社かあったなと。株主総会といえば本日はトヨタ自動車の株主総会が開催されていたが、既に昨年から系列各社の相互持合いが見直されているほか、大手損保4社も政策株ゼロ方針を打ち出し三菱UFJと三井住友のメガバンク2行も同社の政策保有株売却観測報道がなされている。

こうした実際の動きもあり政策株の削減は年間4兆円程度ありこの10年で持ち合い比率は3.6ポイント低下したというが、適正化水準までこのペースで10年以上かかるといわれていたモノも、上記のメガ企業勢の相互解消などが促進される動きもあって適正化の道のりも半分程度に短縮するとの見方も一部に出ている。

複数の外資系証券試算では全ての政策保有株が自社株取得や消却で解消された場合では日本企業のROEが現状の9%から10%に改善するとの試算もあるが、この辺の自社株取得や消却も現状履行されてるのは未だ半分程度との見方もあるだけに今後も持ち合い解消のその先が注目されようか。


依然低ランクだが・・

さて、毎年恒例の世界経済フォーラムによる男女平等の実現度合いを数値にした2024年の「ジェンダーギャップ指数」が先週に発表されているが、今年の日本の順位は調査対象146カ国中で118位であった。前年は125位と過去最低を記録していたが辛うじて今年は7位ほど浮上したかっこうになる。

項目別にザッと見てみると、総合で評価を押し上げた政治分野の順位が前年の138位から113位に浮上しているものの、一昨年に1位であったものの昨年に47位へと大きく後退した教育が更に順位を下げての72位、また健康が58位、そして経済が前年の123位からほぼ横ばいの120位という結果になっていた。

ちなみにSDNSが毎年公表しているSDGsの達成度を評価したランキングの評価も日本は低くSDGs17の目標のうち5番目のジェンダー平等評価点の低さが目立つ。女性管理職比率の低さが言われて久しいが、それでも今年に入ってJAL社長に初の女性が就任し、金融では副頭取ポストに三井住友銀行で初の女性が就任するなど徐々に変化の芽は出てきている感はある。

折しも株主総会シーズンだが、この辺に絡んでは今月総会を開く日経500構成銘柄企業では女性取締役を2~3名以上選任する予定の企業割合は前年からそれぞれ増加している。それでも米S&P500や英FTSE350指数構成銘柄で女性取締役の居ない企業は無く、いずれも取締役総数の3割を女性が占めているのが世界標準だ。今や組織成長に欠かせない多様性は企業統治の必須条件で、投資家の目も女性登用の遅れに対し厳しさを増してきているだけにこの項目の浮上スピードが問われている。


相場連動事件

本日の日経紙商品面には「金属高騰で換金活況」と題し、金属価格高騰でのリサイクル活況は換金を狙った窃盗など負の影響も生んでいる旨の記事があった。直近では先の日曜日に相模原市の太陽光発電施設から銅線ケーブルの盗難事件が報じられているが、先月は茨城のデイサービス市施設でエアコン室外機の盗難が相次ぎ、足利市でも神社本殿の屋根材の銅板約270枚が盗難に遭うなど、特に毎度ターゲットになる北関東でそれが目立つ。

エアコン室外機の窃盗事件は外気を冷却する部分に使用されている銅狙いだが、この手の窃盗事件はコロナ禍の2020年の255件から一昨年には819件と3倍以上に急増、全体でも銅盗難事件は昨年の1万件そこそこから今年は16000件超えと急増している。もう数年前から相場に比例した盗難事件と書いているが、銅製品盗難が目立ちはじめた2021年の銅価格はトン当たり約87万円であった。

それが昨年に北関東で銅製の二宮金次郎像が盗難に遭った件を取り上げた時にはトン当たり約123万円と約4割以上も値位置を切り上げ、盗難事件が急増してきた先月の相場ではトン当たり約175万円と過去最高を更新してきており、上記の2021年からはちょうど2倍に化けている。直近では下落している国際相場も先月は一時11000ドル超とこちらも過去最高値を更新する場面があった。

脱炭素社会が叫ばれて久しいが、その通電特性からエンジン車比で4倍もの銅が使われる電気自動車はじめこれに関わる太陽光や風力等どれを取っても大量の銅が使用されるワケで斯様な社会の実現は銅無しではあり得ない構図と言っても過言ではないだろう。これに乗じての投機マネーが入る場面も近年は増えてきており、相場を睨んだ更なる盗難対策の強化も急務だろうか。


宇宙ビジネスの裾野

さて、米フロリダ州から先週に打ち上げられたボーイング社の新型宇宙船「スターライナー」は日本時間の7日未明、ISS(国際宇宙ステーション)に到着しドッキングに成功した。また、イーロンマスク氏率いる米宇宙開発企業のスペースXは大型宇宙船「スターシップ」の4回目の打ち上げ試験で機体を地球に帰還させることに初めて成功するなど宇宙開発が日進月歩である。

ところで先週は宇宙ゴミの除去など宇宙のロードサービスを目指す宇宙ベンチャー企業、アストロスケールHDが東証グロース市場に上場している。注目の初値は公開価格を50%ほど上回る好調な滑り出しとなったが、宇宙関連のスタートアップといえば近いところで昨年11月には小型衛星開発のQPS研究所が、またその前には月面着陸を目指すアイスペースが相次いでIPOしている。

前にも書いたが、宇宙ビジネスの市場規模は2040年代には現在の約3倍の150兆円になるとの試算がある。宇宙産業のすそ野は広くロケット衛星の打ち上げや人工衛星の開発などはもとより、それらのデータを使った利活用の分野も非常に伸びているなどで日本では100社超が月面ビジネスに関心を寄せているとされ、企業も宇宙ビジネス室なる新部署を設ける動きも一部ある。

いずれにせよ宇宙は最後のフロンティアともいえるが、今の宇宙ビジネスの規模は宇宙予算一つとっても日本は米の十分の一程度という。そういった事を背景に政府は宇宙分野の技術開発などを支援する「宇宙戦略基金」の設置を先に決定しているが、人材の育成も含めてそのリソースをいかに活用してゆくのかこの辺が今後の課題になってゆくだろうか。


利上げの是非?

内閣府が1-3月期のGDP改定値を発表しているが、5月速報値のマイナス2.0からマイナス1.8に上方修正された。企業の設備投資が最新の統計を反映し速報値のマイナス0.8%からマイナス0.4%に上方修正されたことが全体を押し上げたことが要因だが、一方でGDPの半分以上を占める個人消費は変わらずで4四半期連続のマイナス継続でリーマンショック以来最長となっている。

また街角景気を表す5月の景気ウォッチャー調査の結果も公表されているが、前月比1.7ポイント下がり3か月連続で悪化した。企業動向も悪化しているが、それ以上に特に個人消費を映す家計動向で小売りがマイナス1.4、飲食がマイナス3.7と振るわない。景気の先行きを判断する指数も3か月連続で低下し、こちらも家計動向がマイナス3ポイントと大幅な悪化を見せ総じて物価高の影響が大きく消費が活発化してゆくイメージが湧かないところ。

スタグフレーションの警戒感も出始めているが、個人消費が低迷している主因は金融緩和と円安による実質賃金の前年割れ。そういった事で今後を見てゆくうえで金融政策の行方がキーとなるが、消費が弱いなかでの金利引き上げは景気減速に繋がるという意見もあれば、一方で利上げをしない事でそれが輸入インフレを通じ消費の低迷を招いているという意見もある。いずれも成程感があるが目先はそれらを念頭に今週の日銀金融政策決定会合に注目としたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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